35歳のシンデレラ アラブの女神編 74
…これは、一体、どういうことだ?…
私は、思った…
さっきのファラドと葉問のバトルを、撮影するのは、わかる…
ファラドの裏切りを、サウジ本国に、知らせるためだ…
国王に、見せるためだ…
ファラドの裏切りを、撮影して、見せれば、なにより、証拠になる…
言い逃れは、できないからだ…
撮影=決定的な証拠となる…
が、
私を撮影して、どうする?
この矢田トモコを撮影して、どうする?
ふと、思った…
今、撮影しているのは、この矢田トモコが、先頭になって、園児たちと、列車ごっこをして、遊んでいる光景…
こんな光景を撮影して、どうする?
ふと、考えた…
マリアのためか?
一瞬、考えた…
オスマンは、マリアが好き…
だから、列車ごっこをしている、マリアを撮影しているのでは?
と、思った…
が、
違った…
マリアは、今、オスマンの近くにいる…
つまりは、この列車ごっこに参加していない…
さっきも、そうだが、まるで、女王様のように、列車ごっこには、加わらず、外から、見ている…
外から、指示を下している…
その方が、全体を見渡せるからだ…
なまじ、いっしょになって、参加すると、わけがわからなくなる…
一歩、引いて、全体を俯瞰して、見ると、わかることが、中に入ると、わからなくなる…
だから、一歩、引いてみる…
その行事には、参加しない…
それが、大事だ…
仕事でも、なんでも、いっしょになって、やると、外から見る視点が、欠けるせいで、わけが、わからなくなる…
あくまで、参加しないで、外から、見る視点が、大事…
そういうことだ…
私は、この電車ごっこに、加わらないマリアの姿を見ながら、そんなことを、考えた…
考えながら、
…まさかな…
とも、思った…
まさか、3歳のマリアが、そんな視点で、この電車ごっこを見ているはずが、なかった…
いや、
ふと、思い直した…
もしかしたら、あるかもしれない…
その可能性もある…
なぜなら、マリアの傍らに、オスマンが、いるからだ…
もしや、オスマンが、マリアに、
「…列車ごっこには、加わらず、ここで、見ていろ…おかしなことが、あったら、教えるんだ…」
とでも、言えば、いい…
つまり、電車ごっこに、加わらないで、おかしなことがあったら、傍から見て、修正するのが、一番だ…
と、マリアに指示したのかもしれない…
マリアは、子供ながら、賢明だから、オスマンの意図が、すぐに、飲み込めたのかもしれない…
考え過ぎかもしれないが、ふと、そう思った…
そう思いながら、なぜ、オスマンが、マリアを好きなのか、今さらながら、気付いた…
オスマンはアラブの至宝と呼ばれるほど、頭がいい…
優れている…
そして、オスマンに、限らず、頭のいい人間は、誰もが、頭のいい人間が、好き…
例外は、ない…
だから、オスマンは、マリアが好きなのだと、気付いた…
マリアは、子供ながら、利発…
頭が、いい…
だから、オスマンは、好きなのだ…
しかも、マリアは、子供ながら、美人…
母親のバニラに似て、美人だ…
だから、大げさに、言えば、非の打ち所がない…
真逆に、オスマンは、おそらく、頭の悪い人間が嫌いに、違いない…
頭のいい人間は、同じように、頭のいい人間が、好きだが、同時に、頭の悪い人間が、嫌い…
これもまた、ほぼ例外がない…
はっきり言えば、頭の悪い人間が、わけのわからないことを、言うのを、聞くのが、嫌なのだろう…
それは、この矢田にも経験がある…
昔、バイトで、知り会った女が、平凡極まりないルックスで、平凡極まりない学歴にも、かかわらず、いかに、自分が、凄いか、周囲に吹聴していた…
当然、性格も悪い(爆笑)…
だから、当然ながら、職場で、嫌われていた…
が、
本人は、気付かない…
目に見えて、嫌われていないからだ…
その女が、結婚したと、風の噂で、聞いたが、十年ぐらい経って、偶然、スーパーで、会うと、当時、結婚したと、聞いた男とは、まったくの別の男と歩いていた…
私は、その女が、どんな男と結婚したのか、詳しくは、知らない…
会ったことが、ないからだ…
が、
その女が、当時、付き合った男をケータイの待ち受け画面にして、周囲に、見せびらかしていたから、ルックスは、知っていた…
小柄な男だった…
にも、かかわらず、十年後に、会ったときは、大柄な男と、歩いていた…
しかも、傍には、幼い子供もいた…
つまりは、前夫と別れて、再婚したのだろう…
ある意味、当たり前のことだった…
性格が悪く、職場で、忌み嫌われている女と、付き合うバカな男は、普通は、いない…
どうして、付き合ったかといえば、職場が、違うからだ…
そして、その男の職場に女がいないからだ…
だから、付き合う…
それだけだ(笑)…
仮に、男も、その女と、同じ職場なら、普通は付き合わない…
まともな感覚をしていれば、付き合う男は、皆無だからだ…
会社で、忌み嫌われている女と結婚すれば、どうなるか?
想像がつくからだ…
実際、問題、その女が、再婚したであろう男は、見るからに、労働者というと、言葉は、悪いが、ガテン系だった…
いわゆる、職人というか…
普通は、ガテン系の職場に女はいない…
女がいないから、どこかで、その女と、知り会って、結婚したに違いなかった…
そして、今、数年経って、その女が、その男と結婚しているかと、問われれば、微妙…
実に、微妙だ(笑)…
嫌な人間は、誰もが、嫌…
嫌でないのは、同じように、他人から、嫌われている人間…
嫌われ者同士、気が合うのだろう…
残念ながら、それは、事実だ…
その女は、平凡極まりないルックスだったが、これは、例えば、佐々木希のような美人でも、同じ…
どんな美人でも、性格の悪い女と、いっしょに暮らすのは、勘弁してもらいたいからだ…
私は、それを思い出した…
そして、その女と、いっしょにいた男や女を思い出した…
すべからく、その女と、気があっていた人間たちは、男女を問わず、性格が、悪かった(笑)…
まさに、類は友を呼ぶ(笑)…
そして、男女を問わず、上昇志向が、強かった…
学歴が、劣れば、劣るほど、上昇志向が強かった…
これは、一体なぜ?
これは、一体どうして?
当時は、私も悩んだものだ…
そして、冷静に考えれば、自分の実力が、わからないのだと、結論づけた…
さらに、いえば、他人の実力も、わからなかった(笑)…
おおげさに、言えば、偏差値70の高校を出て、早稲田や慶応を出ても、同じ仕事をして、自分の方が、できれば、自分の方が、優れていると、心の底から、思っているひとたちだった…
そして、そんな人間たちを間近で、見れば、まともな感覚の人間は、皆、裸足で、逃げ出す(笑)…
実を言えば、私も、裸足で、逃げ出した一人だった(爆笑)…
この矢田トモコも、裸足で、逃げ出した一人だった(笑)…
そして、もし、このオスマンが、そんな人間たちを、目の当たりにすれば、どうなるか?
文字通り、我慢できないだろう…
そういうことだ(笑)…
できもしないことを、平然と、いい、結局、できない…
そういう人間たちを目の当たりにすることを、我慢できるはずがなかった…
アラブの至宝と呼ばれるほど、優れた頭脳の持ち主のオスマンには、耐えられない事態だったろう…
頭がいい人間が、頭の悪い人間を嫌いというのは、そういうことだった…
ただし、頭が、いい=学歴が高いではない…
頭が、悪い=学歴が低いではない…
今、挙げた、職場で、嫌われていた女を見て、自分も、いっしょに、共にいること自体が、頭が悪い証拠だった…
普通の頭があれば、
「…あの女といっしょにいれば、性格が、悪く思われるから…」
と、言って、逃げ出すか、傍には、近寄らないのが、当たり前だからだ(爆笑)…
それが、できないのが、頭の悪い証拠だった…
そして、そういう人間は、すべからく、プライドが、高かった…
それは、どうしてか? と、これも、当時は、悩んだものだ…
結局、わかったことは、これは、以前も書いたことが、あったが、仕事は、勉強とは、違って、結果が、わかりづらいということだった…
勉強では、例えば、同じクラスで、試験をして、英語でも、数学でも、一番や二番になれば、優れていると、考える…
が、
例えば、40人、同じ部にいても、全員が、同じ仕事をしているわけではない…
やることが、違うからだ…
例えば、隣の席に、座る、同僚と、自分のやる仕事が、まるで、違うことは、結構ある…
だから、わからない…
そして、仕事は、どんな仕事も、そうだが、末端でする仕事が、優れているのが、一番…
つまりは、手が早く、飲み込みが、速ければ、一番だ…
そして、ハッキリ言えば、頭の悪い人間は、末端で、優れていれば、自分は、優れていて、簡単に、上に上がれると、考える…
わかりやすい例で、いえば、例えば、牛丼の吉野家で、働いたとする…
すると、早稲田や慶応を出た高学歴の人間が入社しても、最初は、店舗で、働いて、その後、本社で、人事や、経営という職場で、働いて、もらいたいと、考える…
吉野家は、あくまで、牛丼屋…
牛丼を売って、商売している…
だから、どんな高学歴の人間でも、最初は、店舗スタッフを経験してもらいたいと、考えるからだ…
牛丼を売って、もらいたいと、考えるからだ…
そして、早稲田や慶応を出た、高学歴の人間でも、店舗で、働く、高卒の人間に、劣ることは、枚挙にいとまがない…
って、いうか、ありふれている(笑)…
ハッキリ言えば、別段難しい仕事ではないから、手が早く、飲み込みが早ければ、いい…
そして、早稲田や慶応を出た高学歴の人間でも、トロトロとして、うまく、仕事ができない人間がいる…
すると、自分の方が、仕事ができると思って、
「…早稲田や、慶応を出ても、使えねーな…」
と、悪口を言う…
そして、自分の方が、優れていると、心の底から、思う(笑)…
そんな光景は、ありふれているというか、何度も見た…
そして、それが、末端で、優れていると、いうことだった…
が、
そこに、頭は、関係ない…
学歴は、関係ない…
なにより、そのことでしか、他人を評価できないのが、問題なのだが、それを言っても、わからない人間は、わからない…
そして、それが、能力だということに、後年、気付いた…
学歴ではない、頭の善し悪しだと、気付いた…
また、同時に、頭の善し悪しと、仕事について、考えた…
いくら、頭が良くても、その頭の良さを生かせなければ、なんともできない…
吉野家の店舗スタッフはいい例だが、こんなことは、世間にありふれている…
例え、東大を出ても、その優れた頭脳を生かすことができなければ、社会で、成功しない…
たまたま、入社した会社や仕事が、自分に合わなければ、悲劇になる…
そして、それもまた、世間で、ありふれている…
私、矢田トモコが、さまざまな、会社で、派遣や契約社員や、バイトで、見た、それが、真実だった…
そして、それは、ハッキリ言えば、運による…
運の要素が、大きい…
たまたま、自分の入社した会社の仕事や、同僚が、自分に合っていたから、出世できた…
それが、大きい…
出世した人間は、皆、頭がいいのは、もちろんだが、正直、言って、私は、友人、知人で、出世した人間よりも、明らかに、頭のいい人間を知っていた…
が、
その頭のいい、友人、知人が、今、どうしているか、さっぱり、わからない…
普通に、考えれば、それほど、出世していないだろう…
それを、思うと、出世には、運、不運が、伴うと、思う…
いくら、頭が良くても、自分にまったく、合わない職場や、仕事をさせられて、成果が出るわけがないからだ…
だから、運の要素が大きい…
ハッキリ言えば、運があるか、ないかで、人生が、決まってしまう…
結婚もそう…
私は、たまたま、大金持ちの葉尊と結婚できたが、普通は、学生時代の友人、知人や、職場で、知り会った人間と結婚するものだ…
その中で、気の合った人間や、波長の合った人間と、結婚するものだ…
が、
たまたま、その職場では、自分と合う人間がいないことも、ある…
そうなると、悲劇…
その職場では、結婚相手が、見つからない…
そして、それもまた、よく聞く話だ…
ずっと、以前に、つかこうへいという高名な劇作家が、勉強が、一番いいと言ったことを、彼の本で、読んだ…
勉強が、一番というのは、例えば、クラスで、アイツが、一番頭がいいというのは、誰にも、わかる話だからだ…
テストの成績が、良ければ、いいからだ…
が、
会社に入れば、出世などは、さっぱりわからない…
これまで、言ったように、職場や、仕事が合うかどうかは、さっぱり、わからないからだ…
ハッキリ言えば、運に左右される…
が、
勉強は、それがない…
だから、いいと、つかこうへいは、言っていた…
私も歳を取った今、その発言に、心の底から、納得する…
若い時も、その発言は、理解できたが、実感はできなかった…
なぜなら、そんな経験は、まだしてなかったからだ…
それが、今、35歳になると、実感する…
そんな経験をしたからだった…
そして、人脈…
会社で、たまたま、巡り会った上司が、出世して、自分も引き上げてもらう…
それが、あるか、ないか?
それも、また運…
運次第だ…
だから、勉強が一番…
一番だ…
そんなことに、左右されないからだ…
私は、つくづく、思った…
そして、そんなことを、考えながら、オスマンと、マリアの二人を見た…
まさに、お似合い…
お似合いの二人だった…




