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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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65/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 65

…許さん!…


 …許さんゾ…マリア…


 子供だからと言って、許すわけには、いかん…


 いかんのだ…


 この矢田トモコに歯向かった覚悟はできているんだろうな?…


 私は、言いたかった…


 この矢田トモコに逆らう以上、もはや、二度と、マリアとは、遊んでやらん…


 もう二度と、面倒をみてやらん…


 私は、固く心に、誓った…


 誓ったのだ…


 すると、


 「…矢田…相変わらずだな…」


 と、いう声がした…


 当然のことながら、声の主は、マイクを握った矢口のお嬢様だった…


 …相変わらずとは?…


 …一体、どういう意味だ?…


 私は、考えた…


 そして、壇上の矢口のお嬢様をジッと睨んだ…


 「…3歳の幼児でも、自分と対等に接する…決して、上から目線でも、なんでもない…対等…そこに身分の上下はない…」


 矢口のお嬢様が、意味深に言った…


 私は、すぐに、お嬢様の言葉に、どんな意味があるのか、考えた…


 が、


 わからんかった(涙)…


 すると、


 「…曲は、AKBの恋するフォーチュンクッキーだ…矢田…」


 と、お嬢様が、言った…


 …AKBのフォーチュンクッキーだと?…


 私は、考えた…


 簡単すぎる…


 実に、簡単すぎる…


 あの踊りは、初級者の踊り…


 誰でも、できる…


 一体、どうして?


 考えた…


 そして、気付いた…


 これは、この保育園の園児たちと、踊るのには、打ってつけだと、気付いたのだ…


 園児たちは、まだ、子供だから、難しいことは、できない…


 が、


 いきなり、恋するフォーチュンクッキーの踊りを踊れと言われても、困る…


 この矢田トモコとて、どんな踊りか、詳しくは、覚えていない…


 私が、そんなことを、考えていると、屈強な男たちが、大型のモニターを、台車に乗せて、運んできた…


 そして、壇上に、設置した…


 実に、思いがけない展開だった…


 まさか、こうもあっけなく、モニターを設置するとは、思わなかったのだ…


 園児たちを含めて、見守る父兄の間でも、感嘆の声が上がった…


 周囲の人間たちが、ザワザワと騒ぎ出した…


 そして、モニターの画面をつけた…


 すると、モニターに映ったのは、ファラド…


 ファラドだった…


 私は、驚いた…


 一体、なぜ、ファラドが?


 意味がわからなかった…


 そして、あのモニターが、ただのテレビではなく、パソコンにつなげていることが、わかった…


 だから、ファラドの顔が、映ったのだ…


 私は、ファラドの顔を見た…


 いや、


 私だけではない…


 周囲にいる父兄は、全員、ファラドの顔を見た…


 モニターの中ではない、実物のファラドの顔を見たのだ…


 「…いい男だ…」


 声が聞こえた…


 ただし、ファラドの声ではなかった…


 別の男の声だった…


 「…そうは、思わんか?…」


 「…ハイ…」


 やはり、別の男の声がした…


 私は、考えた…


 一体、どういうことだ?


 ファラドが、映っているにも、かかわらず、ファラドではない、人物たちの声が聞こえる…


 つまり、ファラド自身は、なにも言っていない…


 これは、一体、どういうことだ?


 考えた…


 …盗聴?…


 あるいは、


 …盗撮?…


 ふと、気付いた…


 だから、ファラド自身の声が、聞こえてこないのだ…


 「…リンダ・ヘイワース…あの女をどう思う?…」


 「…美人ですね…」


 「…そうだな…なにしろ、ハリウッドのセックス・シンボルだ…」


 「…ハイ…」


 「…実物を見てみたいものだ…」


 「…」


 「…それには、どうすればいい?…」


 「…殿下のお力ならば、簡単に会うことができるでしょ? ハリウッドに人脈もある…」


 「…それでは、つまらん…どこかのパーティーで、会うのは、誰にもできることだ…」


 「…」


 「…知恵を出せ…」


 私は、その声を聞いていて、ふと、気付いた…


 どこかで、聞いたことのある声だと、気付いたのだ…


 …あの声は、たしか?…


 成人した大人の声ではない…


 むしろ、子供…


 まるで、大人になってない、子供の声だ…


 なぜなら、甲高い…


 子供の声特有の、甲高い声だからだ…


 あの声は、たしか?…


 私が、考え込んでいると、


 「…オスマン…あの声は、オスマンの声…」


 突然、マリアが言った…


 言ったのだ…


 私は、驚いた…


 驚いたのだ…


 まさか、ここで、あのオスマンの名前が出るとは、思わなかったからだ…


 だが、たしかに、あの声は、オスマンだった…


 オスマン殿下だった…


 だから、子供たちが、驚いて、オスマンを見た…


 見たのだ…


 そして、それは、父兄たちも同じだった…


 おそらく、父兄たちは、オスマンのことを、知らなかったのかもしれない…


 が、


 子供たちが、皆、オスマンを見ているので、それに気付いたのだ…


 園児たちが、皆、オスマンを見ているからだ…


 「…な、なんだ、なにを言っている?…」


 オスマンが、声を上げた…


 「…たしかに、ボクの声に似ているが…」


 オスマンが、言った…


 「…ボクが、リンダなんとかと、会いたいというわけはない…」


 オスマンが、抗議する…


 「…子供のボクが…」


 そう言われると、納得した…


 たしかに、モニターの声は、オスマンの声に似ている…


 が、


 話の内容は、子供ではない…


 なにしろ、3歳の幼児が、リンダ・ヘイワースに会いたいと、言っているのは、おかしい…


 おかし過ぎる…


 リンダに憧れるのは、大人…


 成人男子だ…


 仮に、成人…二十歳になっていなくても、性に関心を持つ年頃の男…


 つまりは、中学生以上…


 なにしろ、相手は、ハリウッドのセックス・シンボルだ…


 色っぽい…


 色気全開の女だ…


 それに、憧れるのは、普通に考えて、ティーンエイジャーになっている必要がある…


 それを、考えれば、いかに、モニターから、流れてきた声が、オスマンに似ていても、オスマンのわけがなかった…


 3歳の子供が、リンダ・ヘイワースに、興味を持つはずが、ないからだ…


 私が、そんなことを、思っていると、


 「…やっと、わかった…」


 という声が聞こえた…


 声の主は、またも、他ならぬ、マリアだった…


 「…オスマン…アンタ、子供じゃないでしょ?…」


 …子供じゃない?…


 …一体、どういう意味だ?…


 「…いつも、上から目線で、威張ってる…まるで、パパやママみたい…大人で、上から目線でないのは、矢田ちゃんだけ…」


 マリアが言った…


 …矢田ちゃんだけ?…


 …私だけ?…


 …どうして、私だけなんだ?…


 私が、考え込んでいると、マリアが、


 「…矢田ちゃんは、子供…外見は、大人だけれども、中身は、子供…真逆に、オスマン…アンタは、外見は、子供だけれども、中身は、大人…だから、いつも、上から目線…やっと、気付いた…」


 マリアが一気にまくしたてるように、言った…


 さすが、マリア…


 私が面倒をみてきた甲斐はある…


 賢い子供だ…


 よくぞ、オスマンの中身を見抜いた…


 いや、


 外見が子供で、中身が、大人の人間なんて、そもそもいるのか?


 謎だった…


 いや、


 問題は、それだけではない…


 なぜ、この矢田トモコが、外見が大人で、中身が、子供なんだ?


 そんなバカなことは、あるまい…


 この矢田トモコは、外見も中身も大人…


 立派な大人だ…


 大人でなければ、こんな巨乳であるわけがない…


 胸が大きくなるはずがない…


 私は、思った…


 思ったのだ…


 すると、隣で、ヤン=リンダが、


 「…もしかして、あのオスマンって子供は、小人症(こびとしょう)…」


 と、声を上げた…


 いきなり、言った…


 「…小人症(こびとしょう)だと? …一体、それは、なんだ?…」


 私は、聞いた…


 ヤンに聞いたのだ…


 「…小人症(こびとしょう)…つまり、大人になれない…」


 「…大人になれないだと? …どういう意味だ?…」


 「…身長が伸びない…カラダが、大きくなれない…顔も子供のまま…だから、本当は、たとえば、お姉さんと同じ、35歳でも、見かけは、3歳のまま…」


 「…なんだと…そんなバカな?…」


 私は、言った…


 言ったのだ…


 そして、さらに、ヤン=リンダに質問しようとしたら、ヤン=リンダが、


 「…でしょ?…」


 と、ファラドに、言った…


 いや、


 聞いた…


 ファラドは、苦笑するのみだった…


 「…まあ、アナタの立場では、なにも言えないのかもしれないけれども…」


 「…なんだと、どういう意味だ?…」


 私は、ヤンに聞いた…


 が、


 ヤンは、私を無視した…


 この矢田トモコを無視した…


 「…今日の、この騒動の主役というか、首謀者は、案外、アナタじゃない…ファラド…あの坊やのわがままに付き合うのは、御免で、この騒動を仕掛けたんじゃない…」


 ヤン=リンダの問いかけに、


 「…ご想像にお任せする…」


 と、言って、ファラドは、それ以上、なにも言わなかった…


 が、


 口元は、明らかに、緩んでいた…


 だから、ヤン=リンダの指摘が、正しいことを示していた…


 いや、


 仮に、ヤン=リンダの言葉が、すべて正しくなくても、大方は正しいのだろう…


 私は、そう見た…


 私は、そう睨んだ…


 この矢田トモコ、35歳…


 ボンクラではない…


 ただの胸の大きな女ではない…


 女は、胸が大きければ、頭が悪いと、言われた時代があった…


 そういう世間の風潮があった…


 たしかに、それに当てはまる女もいるだろう…


 だが、


 それは、この矢田トモコには、当てはまらない…


 この矢田トモコを見れば、それが、間違いであることが、気付く…


 だから、胸が大きいからと言って、この矢田トモコを舐めてもらっては、困る…


 甘く見て、もらっては、困るのだ…


 私が、そんなことを、考えていると、マリアが、オスマンに、


 「…オスマン…アンタ…本当のことを、言いなさい…」


 と、言って、迫っていた…


 マリアは、子供ながら、凄い迫力だった…


 母親のバニラを彷彿させる迫力だった…


 とても、3歳の幼児には、思えない…


 私は、驚いた…


 驚いたのだ…


 なにに、驚いたかといえば、私は、マリアの姿に、母親のバニラを重ねたのだ…


 ヤンキー上がりのバニラを重ねたのだ…


 あのバカ、バニラを重ねたのだ…


 だから、マリアも、母親のバニラと同じで、バカなのか?


 とも、思ったが、今、考えたのは、そうではない…


 このマリアも、本質は、母親のバニラ同様、ヤンキーでは? と、気付いたのだ…


 3歳ながら、この迫力…


 ただ者では、なかった…


 ただ者では、なかったのだ…


 私が、驚いて、マリアを見ていると、マリアは、スタスタと、オスマンの元へ、歩いて、行った…


 それから、オスマンの前に立ち、


 「…本当のことを、言いなさい…」


 と、迫った…


 私は、急いで、オスマンを見た…


 オスマンが、どういう表情をしているか、気になったからだ…


 オスマンは、明らかに、たじろいでいた…


 いや、


 マリアの迫力に、圧倒されたといっていい…


 「…言いなさいよ…」


 マリアが、なおもオスマンに迫った…


 迫ったのだ…


 まるで、オスマンの奥さんか、なにかだった…


 夫の不倫=浮気が、発覚して、


 「…アナタ…本当のことを、言いなさい…」


 と、迫る、妻のようだった…


 わずか、3歳にも、かかわらず、マリアのこの迫力…


 オスマンが、本当は、何歳か、さっぱりわからんが、すでに、勝負があった感じだった…


 勝負が、ついた感じだった(爆笑)…


 「…これだから、お子様は、困る…」


 と、オスマンが、ため息をついた…


 「…だから、お子様は、嫌なんだ…」


 それは、オスマンが、大人で、あることを、婉曲に、認めたも、同然だった…


 間接的に、認めたも、同然だった…


 「…マリアは、いくらキレイでも、子供…子供だ…」


 オスマンが、愚痴る…


 「…だが、どこか、リンダに似ている…リンダ・ヘイワースに似ている…だから、マリアを見て、リンダも、子供時代は、きっと、こうだったんだろうな? と、思って、憧れた…好きになった…」


 オスマンが、告白した…


 私は、そんなオスマンの告白を聞いて、思い出した…


 今日、この保育園にやって来たときに、ファラドが、


 「…オスマン殿下は、いつも、こうして、マリアさんが、来るのを待っている…」


 と、言った言葉を、だ…


 つまり、マリアが、クルマで、保育園にやって来るのを、自分も、クルマの中で、待っている…


 マリアが、やって来るまで、ずっと待っている…


 それは、子供ながら、好きな女の子が、来るのを、待っていると、思ったのだ…


 そして、マリアの母のバニラ…


 あのバカ、バニラは、素顔は、リンダ…リンダ・ヘイワースと似ている…


 バニラの方が、リンダよりも、身長が、少し高いが、顔立ちが、似ている…


 要するに、バニラとリンダは、スッピンは、似ているが、メイクと、売り方が、違うだけ…


 リンダは、おとなしめ…


 バニラは、ヤンキー系で、野性的なイメージで、売っているからだ…


 だから、オスマンが、マリアを見て、リンダを思い浮かべるのは、わかる…


 マリアが、リンダの子供時代の顔と、考えても、おかしくはないからだ…


 私は、そんなことを、考えた…


 考えたのだ…


 と、


 そのときに、父兄の間から、悲鳴というか、歓声が上がった…


 私は、何事かと、思って、父兄が、見る方向を見た…


 私の細い目を、さらに細めて、見たのだ…


 と、


 そこには、深紅のドレスをまとったリンダ…


 リンダ・ヘイワースが、立っていた…


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