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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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35歳のシンデレラ アラブの女神編 2

…金儲けの匂いがする…


 いい匂いがする…


 私にとっては、うな重の匂いよりも、いい匂いだった…


 シャネルの№5に匹敵する匂いだった…


 私は、それを嗅ぎ付けると、ニンマリとした…


 なにしろ、働かずとも、大金が手に入る機会を得たのだ…


 私が、それを知ると、まるで、天国にいるような気分になった…


 文字通り、夢見心地になったのだ…


 それに、気付いたのだろう…


 「…お姉さん…なんだか、嬉しそうね…」


 と、バニラが言った…


 「…そんなことは、ないさ…」


 私は、慌てて、否定した…


 私の心の内が、バレるのは、マズい…


 まだ、バレては、ならない…


 最初の内は、否定して、後で、たんまり、お礼の金をせしめてやろうと、思ったのだ…


 「…まさか、お姉さん…」


 と、バニラが続けた…


 「…なにが、まさか、だ?…」


 私は、訊いた…


 「…まさか、お姉さん…また、よからぬことを、考えてるんじゃ、ないでしょうね…」


 「…よからぬことって、なんだ?…」


 「…例えば、リンダの苦境を救って、あげて、お礼に、お金を、もらうとか…」


 「…そんなことはないさ…」


 私は、慌てて、否定した…


 バレてる!…


 私が、なにを考えているか、バレている!…


 まったく、油断も隙もない女だ!…


 私は、思った…


 だが、


 考えてみれば、このバニラ…


 バニラ・ルインスキーは、元々、油断も隙もない、したたかな女だった…


 リンダ同様、世界中の男の憧れにもかかわらず、実は、しっかりと、子持ちのお母さんだった…


 それを隠して、モデルを続けている…


 だから、考えように、よっては、実にしたたかな女だった…


 なにしろ、自分に憧れた世界中の男を騙しているわけだ…


 それに比べれば、この矢田トモコの目論見など、可愛いものだった…


 ただ、ちょっぴり、お礼に、金をもらうだけだ…


 本当に、ちょっぴり、もらうだけだ…


 大した金額ではない…


 脳裏に浮かんだのは、たった百万だった…


 このリンダや、バニラにとっては、百万なんて、数時間働ければ、得られる金額だ…


 あるいは、一時間もかかわらないかもしれない…


 だが、


 この矢田トモコにとっては、違う…


 一日8時間、汗水、働いても、時給が、千円ちょっと…


 たかだか、千円ちょっとだ…


 片や、時給、百万…


 片や、時給、千円ちょっと、だ…


 世の中、なにかが、間違っている…


 私は、思った…


 だが、


 これが、現実だった…


 世の中の現実だった…


 これを読む、読者の中にも、世の理不尽さを、知っている者も多いだろう…


 私の話が、よくわからなければ、テレビを見れば、わかる…


 テレビに映った若いタレントを見れば、男女を問わず、街中で、偶然、見かけた、素人の男女と、どれほどの違いが、あるのか? と、首をひねることがある…


 だが、


 一方は、年収が、数千万…


 素人は、年収は、若ければ、5百万にも、達しないだろう…


 それが、現実だ…


 要は、運勢が違うのだろう…


 運命が違うのだろう…


 最近は、そう思うように、なった…


 金持ちに生まれるか、否か…


 美人に生まれるか、否か…


 背が高く、生まれるか、否か…


 頭が良く、生まれるか、否か…


 それは、誰にも、わからない…


 それと、同じだ…


 運命や運勢というものが、本当にあるのか、どうかは、わからないが、私自身に限っていえば、運命が激変した…


 台湾の大企業、台北筆頭のCEО、葉敬の息子、葉尊と、結婚して、日本の大企業、クール社長夫人になった…


 ありえない展開だった…


 つい最近まで、フリーター生活をしていた私が、大企業の社長夫人だ…


 まさに、シンデレラ…


 現代のシンデレラだった…


 玉の輿に乗ったのだ…


 それを知った、マスコミは、私を、


 …35歳のシンデレラ…


 と、命名した…


 私が、35歳で、玉の輿に乗ったからだ…


 運命が、激変したからだ…


 そして、今、この、


 リンダ・ヘイワース…


 バニラ・ルインスキー…


 という、世界に名の知れた二人の美女といっしょにいる…


 まさに、ありえないことだった…


 だが、


 この美女、二人を見ていて、最初は、戸惑ったが、やはり、さっきの一般の日本人と芸能人との違いと同じだと、悟った…


 どういうことかと、言えば、二人とも、確かに、美しいが、ネットで、外国の美人を検索すれば、やはり、キレイだと、ため息をつく、美人も、それなりに、いるからだ…


 だから、ただ美人に生まれても、ダメだと、思った…


 やはり、運がある…


 いくら美人に生まれても、世間に知られるような有名人になれるのは、稀だし、ほんの一握りに過ぎない…


 運に恵まれた、ほんの一握りの人間に過ぎない…


 私は、そう思うように、なった…


 これは、おおげさに、言えば、この天下の美女二人と接して、わかった、私の結論だった…


 矢田トモコ、35歳の結論だった…


 私が、そんなことを、考えていると、


 「…お姉さん…」


 と、いきなり、リンダが、私の名前を呼んだ…


 「…なんだ?…」


 「…お姉さん…こんなところで、油を売っていて、いいの?…」


 「…どういう意味だ?…」


 「…さっき、言った、アラブの王族の接待、クールも絡んでいるのよ…」


 「…クールが?…」


 私は、驚いた…


 まさか、クールの名前が、ここで、出るとは、思わなかった…


 まさに、まさか、だ…


 「…ほら、私、リンダ・ヘイワースの日本での活動は、葉尊の父の葉敬の影響もあって、葉尊も絡んでくるというか…」


 「…」


 「…とにかく、アラブの王族が、来日して、私に会いたいとなると、必ず、クールが、一枚噛むようにしているの…」


 「…クールが?…」


 「…そう…葉敬は、商売人でしょ? …だから、私目当てに、来日すれば、自分の会社である、クールも、なにか、商売にならないか、考えているの?…」


 「…でも…そんなに、簡単に商売になるのか?…」


 「…クールは、日本の大企業でしょ? …その技術力には、定評がある…アラブは、いずれ、石油が枯渇するでしょ? …だから、その前に、手を打たないとならない…」


 「…手? …どんな手だ?…」


 「…石油に頼らないエネルギーの確保…太陽光発電なんて、最適でしょ?…」


 「…」


 「…クールは、その分野の最先端の技術力も持っている…」


 「…」


 「…でも、それだけじゃない…」


 「…どういう意味だ?…」


 「…アラブで、石油が、枯渇したら、どうやって、生活をしていくの? …無くなった後の産業の育成もある…」


 「…」


 「…そこで、例えば、クールの最先端の技術力を結集した工場があってもいい…」


 「…」


 「…とにかく、アラブもまだ、石油が無くなった後、どうするか、手探りの状態みたい…だから、いろんな選択肢を用意して、さまざまなプロジェクトを提案しているの…」


 …そうか…


 …そうだったのか?…


 私は、驚いた…


 まさか、たかだか、アラブの王族の来日に、そんな深い意図があったとは?…


 この矢田トモコ、35歳…


 まだまだだな…


 遅ればせながら、自分の未熟さを思った…


 すると、リンダが、舌を出して、


 「…なーんちゃって…今のは、これすべて、葉尊の受け売りだけれどもね…」


 「…葉尊の?…」


 「…この前、聞いたの?…」


 「…そうか…」


 私は、頷いた…


 このリンダと、葉尊は、幼馴染(おさななじみ)…


 昔から、仲がいい…


 そして、このリンダは、生粋の白人ではない…


 台湾人と、白人のハーフ…


 両親のどっちが、白人で、どっちが、台湾人か、詳しくは、知らないが、そういうことだ…


 私は、それを思い出した…


 すると、隣から、


 「…お姉さん…」


 という声がした…


 私は、声の主を振り返った…


 当たり前だが、バニラだった…


 この部屋には、私と、リンダ、そして、このバニラの3人しかいない…


 「…なんだ?…」


 「…いいの…お姉さん?…」


 「…なにが、いいんだ?…」


 「…このリンダと葉尊が、連絡を取って…」


 「…それが、どうか、したのか?…」


 「…だって、リンダよ…世界に名の知れた、ハリウッドのセックス・シンボルよ…それが、連絡を取り合って…もし、男女の関係になったら…」


 「…そんなことはないさ…」


 私は、即答した…


 「…葉尊は、そんな男じゃないさ…」


 私は、自信たっぷりに、断言した…


 「…葉尊は、決して、私を裏切るような男じゃないさ…」


 「…どうして、わかるの?…」


 「…葉尊の人間性さ…葉尊は、決して、私を裏切らない…」


 バニラは、私の言葉に、思わず、リンダを見た…


 「…なんだか、凄い自信ね…」


 「…そんなことは、ないさ…」


 私は、私の唯一の武器である、大きな胸を揺らしながら、言った…


 すると、バニラが、


 「…もしかして、お姉さん…その胸に自信を持っているの?…」


 「…悪いか?…」


 「…悪くないけど、胸ならば、リンダの方が、よっぽど、大きいわ…お姉さんは、身長159㎝だけれども、リンダは、175㎝…勝負にならないわ…」


 言われてみれば、その通り…


 その通りだった…


 私の完敗だった…


 「…お姉さん?…」


 「…なんだ?…」


 「…よく世間では、妻の知らない間に、妻の女ともだちと、その妻の夫が不倫していることが、あるって、いうよ…」


 「…」


 「…葉尊とリンダも同じかも?…」


 バニラが、私をからかった…


 だから、私は、


 「…そんなこと、あるわけないさ…」


 と、反論しようとしたが、その前に、


 「…バニラもいい加減にして!…」


 と、リンダが、怒った…


 「…せっかく、ひとが、どうして、いいか、わからないから、相談に乗ってもらおうと、思ったのに…」


 リンダが、激怒した…


 「…お姉さんは、ともかく、バニラもバニラよ…私が、葉尊と、どうにかなるわけ、ないでしょ?…」


 「…どうして、そう断言できるの?…」


 「…幼馴染(おさななじみ)だからよ…」


 「…幼馴染(おさななじみ)…どういう意味?…」


 「…恋っていうのは、見知らぬ男女だから、恋に落ちるの…昔から、知っている男と女が、恋に落ちるわけ、ないじゃない…」


 …うまいことを言う…


 私は、思った…


 さすが、ハリウッドのセックス・シンボルだ…


 この矢田トモコが、言うよりも、説得力のあることを、言う…


 「…でも、それは、恋の話でしょ?…」


 バニラが、食い下がった…


 「…私は、セックスの話をしているの…」


 「…セックスの話?…」


 「…だって、今、不倫の話をしているのよ…肉体関係の話をしているの…」


 「…どういう意味?…」


 「…恋とセックスは、別…ときめかなくても、セックスはできる…」


 「…なにが、言いたいの?…」


 「…つまり、幼馴染(おさななじみ)でも、セックスはできるってこと…」


 バニラが、言い切った…


 途端に、リンダの顔色が、変わった…


 まさに、怒髪天を衝いた、表情に、なった…


 「…帰って!…」


 大声で、言った…


 「…さっさと、この部屋から、出て行って!…」


 リンダが、激怒した…


 さすがに、このリンダの怒りは、バニラにとっても、予想外のものだったのだろう…


 「…ちょ…ちょっと、バニラ…冗談…冗談よ…」


 と、リンダに、釈明した…


 「…冗談? …そんなことは、わかってる…でも、冗談も、言っていいときと、言っちゃ、悪いときがある…」


 バニラが、血相を変えて、怒鳴った…


 「…私は、今、本当に悩んでいるの…そんなときに、こんな、ありえない冗談を言って…」


 「…」


 「…さっさと、出て行って!…」


 「…ゴメン…リンダ…」


 「…さっさと、出て行って!…」


 リンダのあまりの迫力に、バニラは、仕方なく、部屋を出た…


 とてもじゃないが、リンダに、これ以上、なにか、言える雰囲気ではなかった…


 と、私は、冷静に、言ったが、ふと、気付くと、その怒りに、満ち満ちた、リンダの青い目が、この矢田トモコを見ていることを、知った…


 文字通り、顔面蒼白になった…


 私は、これまで、これほど、怒り狂った、リンダを、見たことが、なかった…


 リンダ…リンダ・ヘイワースは、ハリウッドのセックス・シンボルとして、世界中に知られている…


 なにが、言いたいかといえば、そのカラダの大きさだ…


 身長は、すでに言ったが、175㎝ある…


 対する、私、矢田トモコは、159㎝…


 しかも、骨格が、違う…


 日本人と、白人の違いだ…


 リンダの方が、ガッチリしているのだ…


 とてもじゃないが、怒り狂ったリンダが、私、矢田トモコに、襲いかかれば、無事では、すまない…


 私、矢田トモコは、ライオンに襲われた、可哀そうなウサギよろしく、簡単に、やられるだろう…


 それどころ、本気で、怒り狂ったリンダに、殺されるかもしれないのだ…


 文字通り、命の危険すら、感じた…


 それを、瞬時に悟った私は、


 「…わ…わ・た・し・も…か…帰ることにするさ…」


 と、リンダに告げた…


 「…き…きょ…う…は、ち…か…らに、なれなくて、すまんかった…」


 と、詫びながら、部屋を出て行こうとした…


 が、


 足が、思うように、動かなかった…


 あまりの、恐怖のためだ…


 私、矢田トモコは、小心者…


 実は、結構、気が小さかった…


 いつもは、強いフリをしているだけだった…


 だから、こんな場面では、生来の気の小ささが、顔を出した…


 「…す…す・ま…ん…許してく・れ…」


 と、言いながら、部屋を出ようとしたが、あまりの恐怖に、足が絡んで、倒れた…


 自分でも、ありえない失態だった…


 これが、ジャングルなら、ライオンに襲われているところだ…


 リンダというライオンに襲われているところだ…


 …万事休す…


 私の脳裏に、そんな言葉が、浮かんだ…


 私は、とっさに、目をつぶった…


 ちょうど、歯医者で、歯を削るときに、目をつぶるようなものだ…


 あまりの恐怖に、目を開けていられなかった…


 とにかく、怖かったのだ…


 が、


 いつまで、待っても、ライオン=リンダは、襲って来なかった…


 私は、周りの状況を探るべく、うっすらと、目を開けた…


 私の細い目を開けたのだ…


 が、


 その前には、あろうことか、リンダの顔があった…


 激怒したリンダの顔があった…


 私は、慌てて、目を閉じた…


 この現実から、逃れるために、目を閉じた…


 それから、心の中で、神様に祈った…


 …た…助けてくれ…神様…


 …こ…これが、夢なら、夢から覚めさせてくれ…


 心の中で、祈った…


 が、


 あろうことか、私は、それを、口に出して、しまったらしい…


 「…夢? …一体、どこが、夢なの?…」


 リンダが、漏らした…


 「…自分に都合が悪いと、夢ならいいなんて…いつも、自分に都合がいいことばっかり、考えて…」


 リンダが、呆れた口調で言う…


 私は、恐怖に怯えながら、ゆっくりと、目を開いた…


 す、すると、


 目の前に、リンダの顔があった…


 激怒した、リンダの顔があった…


 私は、慌てて、目を閉じた…


 こんな現実は、見たくなかったからだ…


 そんな恐怖に怯える私の耳に、


 「…プッ…」


 と、吹き出す声が聞こえた…


 私が、ゆっくりと、目を開くと、リンダが、笑っていた…


 笑い転げていた…


 「…まったく、このお姉さんには、怒ることもできない…」


 リンダが、笑った…


 「…怒りたくても、怒れない…ホント、得な性格ね…」


 リンダが、さばさばした口調で、言った…


 私は、仰天した…


 つい、今の今まで、激怒していたリンダが、まるで、別人のように、怒っていない…


 これは、まるで、奇跡…


 奇跡だった…


 「…リ、リンダ…ホントに、もう怒ってないのか?…」


 確かめずには、いられなかった…


 「…ホ、ホントに…」


 私は、繰り返した…


 「…怒ってないわ…」


 リンダが、あっさりと、言った…


 「…って、いうか…お姉さんは、なにをしても怒れない…ホント、得なひと…」


 私は、なぜ、私が、得なひとなのか、さっぱり、わからなかったが、とりあえず、リンダの怒りが、収まったことで、よしとした…


 とにかく、リンダが、怒るのは、困る…


 私では、手に負えない…


 リンダが、本気で、怒れば、私に勝ち目は、1%もない…


 下手をすれば、命の危険すら、ある…


 私は、そんなことを、考えて、ホッと胸を撫で下ろしていると、目の前に、リンダが、顔を寄せた…


 じっくりと、その青い目で、私を見た…


 生来、気の弱い私は、またもブルった…


 もしや、リンダが、また怒り出すのかもと、考えたのだ…


 だから、なにも言えなかった…


 リンダのなすがままだった…


 が、


 リンダの口から、出たのは、


 「…ホント、得な性格よね…」


 と、いう、言葉だった…


 …得な性格?…


 …なんで、そんなこと?…


 「…葉尊も、そんなお姉さんに、首ったけ…例え、バニラが言ったように、私が、葉尊を誘っても、きっと、見向きもしない…」


 「…」


 「…だから、誘わない…それが、わかっているから、葉尊を誘って、断れれば、このリンダ・ヘイワースのプライドが、ズタズタになる…」


 リンダが、笑った…


 「…ホント、得なお姉さん…」


 と、言いながら、リンダが、私から、離れた…


 それから、


 「…葉尊も、ホントは、私をもっと、好きになってくれれば、ありがたいんだけど…」


 と、ポツリと漏らした…


 「…でも、ダメね…それじゃ、バニラをお母さんと、呼ばなくちゃ、ならなくなる…」


 …どうして、バニラが、お母さんなんだ?…


 考えた…


 「…あら、お姉さん…なに、難しい顔をしているの?…」


 「…」


 「…ああ、そうか、どうして、バニラが、お母さんなのか、わからないのか?…」


 私は、無言で、頷いた…


 「…だって、バニラは、葉尊の父、葉敬の愛人…子供まで、産んでる…だから、もし、二人が、結婚したら、バニラが、義理のお母さんでしょ?…」


 …そうか!…


 …それは、考えもしなかった…


 が、


 言われてみれば、その通り…


 その通りだ…


 「…でも、いくらなんでも、バニラをお母さんとは、呼べないし…」


 リンダが、苦笑した…


 「…でも、そんなことを、平然と、口に出来るのは、お姉さんの前だから…ホント、得な性格よね…」


 と、言って、リンダが、笑った…


 …得な性格…


 …得な性格…


 と、何度も繰り返して、一体、私のなにが、得な性格なんだ?


 と、言ってやりたかった…


 だが、


 言えんかった…


 再び、リンダに激怒されては、堪ったものでは、ないからだ…


 だから、私は、耐えた…


 黙って、耐えた…


 矢田トモコ、35歳…


 辛抱のときだった(涙)…



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