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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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139/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 139

私は、必死になって、ファラドと、リンダを追い抜いた…


 そうすることで、この矢田のプライドが、満たされた…


 が、


 結構、孤独だった…


 なぜなら、振り返って見た、ファラドと、リンダは、美男美女…


 お似合いのカップルだったからだ…


 そこに、この矢田トモコが、一人…


 正直、ルックスでは、負けている…


 あの二人を追い抜いたが、ルックスでは、負けていた…


 それを、思うと、少しばかり、私は、孤独になった…


 だから、今度は、立ち止まって、二人を待った…


 すると、リンダが、


 「…どうしたの? …お姉さん…そんなところで、立ち止まって…」


 と、言った…


 私は、


 「…いや、オマエたちを、追い抜いてみたが、私が、一人で、マリアたちの後を追うのも、どうかと、思ってな…」


 と、言った…


 ハッキリと、本音は、言わんかった…


 本音を言うのは、恥ずかしかったからだ…


 「…おかしな、お姉さん…」


 リンダが、笑った…


 私は、そんな、リンダを見ながら、あらためて、このリンダという女が、不思議だった…


 このリンダ・ヘイワースの行くところ、イケメンが、わんさかいる…


 ごまんといる…


 葉尊もそうだし、このファラドも、そうだ…


 が、


 このリンダは、そんなイケメンに、なびかない…


 仲がいいのは、傍から見ても、わかるが、一線は、超えてない…


 男女の関係には、なってない…


 これも、また傍目にも、わかる…


 だから、やはり、このリンダは、性同一性障害で、間違いは、ないのかも、しれん…


 私は、あらためて、思った…


 こんなイケメンが、身近にいるにも、かかわらず、手を出さんのは、おかしい…


 おかし過ぎる…


 私が、リンダほどの美貌を、持ったのならば、あっちの男、こっちの男と、手を出しただろう…


 出しまくって、いただろう…


 その結果、毎日が、忙しく、充実していたに、違いなかった…


 今日は、こっちのイケメン…


 明日は、あっちのイケメンという具合に、だ…


 が、


 リンダは、それをせん…


 やはり、頭が、おかしいのだろう…


 可哀そうな、ヤツだ…


 私は、思った…


 すると、そんなリンダを憐れむ、私の表情に、気付いた当のリンダ自身が、


 「…どうしたの? …お姉さん、変な顔をして?…」


 「…変な顔だと?…」


 「…ううん…変な顔は、言い過ぎだけど…なにか、難しい顔をして…」


 まさか、リンダ…オマエが、頭がおかしいとは、いえん…


 だから、私は、


 「…なんでもない…なんでもないさ…」


 と、言った…


 私の優しさというヤツだ…


 が、


 当のリンダは、そんな私の優しさに、露ほども、気付いて、おらんかった…


 「…変なお姉さん…」


 と、私を笑った…


 が、


 頭のおかしな女を相手にしても、仕方がない…


 私は、リンダの発言は、無視することにした…


 所詮は、男だか、女だか、わからん女だ…


 たしかに、この矢田は、ルックスでは、少しばかり、負けているかも、しれん…


 が、


 それは、あくまで、少しばかり…


 少しばかりだ…


 私は、それを、思った…


 が、


 いつまでも、そんなことを、考えていても、仕方がない…


 だから、私は、忘れることにした…


 だから、私は、そんなことを、考えるのを、止め、ファラドと、リンダと、いっしょに、マリアたちの後を追うことにした…


 私とリンダ、そして、ファラドが、マリアたちの後を追うことにしたが、思ったよりも、マリアたちの動きが速かった…


 私たち三人は、大人だが、すでに、子供に負けていたというか…


 子供が、走り出すと、思ったよりも、速い…


 まるで、ポップコーンが、弾けるように、小さなカラダが、とんでもなく速く、動き出す…


 だから、例えば、祖父母が、60代や70代になっていると、とてもではないが、孫やひ孫の面倒を見ることは、できない…


 体力が、追いつかないのだ…


 それと、同じだった…


 リンダは、29歳だが、この矢田トモコは、35歳…


 それでも、子供たちの後を追うのは、大変だった…


 大変だったのだ…


 私たち3人が、保育園の建物から、外に出ると、すでに、子供たちは、列を組んで、歩いていた…


 まるで、周囲を威圧するように、横に並んで、いた…


 いや、


 正確には、マリアを先頭にした、三角形というか…


 要するに、先頭が、マリアで、その幅を少しずつ広げて、他の女のコたちが、続いていた…


 私は、それを見て、唖然とした…


 正直、ありえん光景だった…


 ありえん光景だったのだ…


 3歳の女のコたちが、徒党を組んで、歩いてゆく…


 まるで、昔の暴走族か、なにかのようだった…


 私や、リンダ、そして、ファラドが、マリアたちの後を追って、行こうとすると、マリアが、


 「…オスマン、出て来なさい!…」


 と、大声を出した…


 「…いい、いますぐ、出て来なさい…」


 と、続けた…


 「…いい、いますぐよ…」


 マリアが、さらに、続ける…


 そして、マリアを、先頭にした女児の軍団が、セレブの保育園の校庭で、立ち止まった…


 私は、驚いたが、反面、面白くなると、思った…


 オスマンには、悪いが、面白くなると、思ったのだ…


 なにより、オスマンが、どう出るか、見物だった…


 いや、


 楽しみだった…


 が、


 反応は、なかった…


 なかったのだ…


 私は、なぜか、わからんかった…


 わからんかったのだ…


 なぜなら、オスマンは、日本の警察と、いっしょに、このセレブの保育園を、包囲しているはずだったからだ…


 が、


 誰も、出て来んかった…


 なんの、反応もなかった…


 …おかしい?…


 …これは、おかしい…


 私は、思った…


 と、


 これは、リンダも、同じだった…


 「…おかしいわね…」


 リンダが、言った…


 「…なんの反応もない…」


 「…たしかに…」


 ファラドが、相槌を打った…


 「…これは、変だ…」


 ファラドが、続ける…


 と、


 そのときだった…


 「…オスマン…私を、これ以上、怒らせるんじゃない…」


 マリアが、大声を出した…


 文字通り、大声を出したのだ…


 「いい、これで、出て来なかったら、ただじゃ、すまないわよ…」


 マリアが、続けた…


 が、


 やはりというか、反応はなかった…


 これは、一体、どういうことだ?


 私は、思った…


 どうして、反応が、ないんだ…


 しかも、


 しかも、だ…


 なんとなくだが、このセレブの保育園を、包囲しているはずの、人影がなかったというか…


 なぜか、ひとがいる、雰囲気が、なかった…


 つまりは、この保育園を囲んでいるはずの、警察も、オスマンを守る、サウジの護衛も、誰も、いなかったということだ…


 私は、悩んだ…


 悩み抜いた…


 この矢田トモコの頭脳をフル回転して、悩んだ…


 余人なら、いざ知らず、この矢田トモコだ…


 このからくりが、わからないはずが、ないからだ…


 だから、頭脳明晰な私が、頭をフル回転させていると、


 「…もう、いいんじゃない…」


 と、誰かが、いきなり、言った…


 女の声だった…


 私は、その声の主を見た…


 リンダだった…


 「…どういう意味だ?…」


 「…これ以上、ファラド…アナタのお芝居に、付き合うつもりは、ないということ…」


 リンダが、言った…


 「…お芝居?…」


 ファラドが、驚く…


 「…そうよ…お芝居…」


 「…なにが、お芝居なんだ?…」


 「…すべてよ…」


 「…すべて?…」


 「…あのオスマン…アナタの替え玉でしょ?…」


 「…替え玉? …なんのことだ?…」


 「…ファラド…ホントは、アナタが、オスマンで、外にいる、あの小人症の皇子が、ファラドだと、いうこと…」


 リンダが、意外なことを、言った…


 私は、文字通り、目が点になった…


 意味が、わからんかった…


 そもそも、どうして、リンダが、そんなふうなことを、言うのか、意味が、わからんかったのだ…


 「…リンダ…キミは、一体、どうして、そんなことを?…」


 ファラドが、当惑して、言う…


 もちろんだった…


 当たり前のことだった…


 私も、ファラドに同意…


 全面的に、同意だった…


 「…オレが、オスマンで、兄貴が、ファラドだって? …一体、なにを、根拠にそんなバカバカしいことを?…」


 「…根拠はあるわ…」


 「…どこにある?…」


 「…根拠は、このお姉さんよ…」


 …なに、私だと?…


 …どういう意味だ?…


 私は、声にこそ、出さんが、私の細い目で、リンダを睨んだ…


 睨んだのだ…


 「…どうして、このお姉さんなんだ?…」


 「…このお姉さんが、イケメン好きだからよ…」


 …なんだと?…


 私は、声にこそ出さんが、心の中で、言った…


 「…イケメン好き? …それが、一体、どうした?…」


 「…つまり、このお姉さんに近付くには、イケメンがいい…」


 「…オレが、このお姉さんに近付くには、いいって?…オレが、このお姉さんに、近付いて、なにが、得する…」


 「…クール…台北筆頭…」


 「…なにが、言いたい?…」


 「…このお姉さんに、近付いて、台北筆頭に近付く…クール、台北筆頭の製品を、アラブ世界で、宣伝する…そして、その本当の目的は、台北筆頭の買収…」


 「…」


 「…台北筆頭を買収すれば、自動的に、クールは、手に入る…クールは、台北筆頭の子会社だから…」


 「…」


 「…要するに、ファラド、いえ、オスマン、アナタは、台北筆頭や、クールの技術を狙ったということよ…」


 「…なんだと?…」


 私は、声を出した…


 声を出さずには、いられんかった…


 まさか、


 まさか、そんなことが?


 この矢田トモコが、イケメン好きだと、いうことが、世間に知られているとは?


 いや、


 そうではない…


 このイケメン好きの矢田トモコに、近付いて、クールに接触しようとするとは?


 まさか…


 そんな卑劣な…


 このイケメンのファラドが、そんな卑劣な男だったとは?


 思いもせんかった…


 考えもせんかった…


 イケメンに悪い男は、いない…


 イケメンに、悪い男は、皆無…


 それが、この私の主張だった…


 が、


 それを、あらためるときが、来たのかも、しれん…


 私は、今、そう、思った…


 そう、思ったのだ…


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