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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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138/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 138

「…で、どうするの?…」


 気が付くと、マリアが、言った…


 「…どうするって?…」


 リンダが、聞く。


 「…オスマンのことに、決まっているでしょ?…」


 マリアが、怒って言った…


 マリアは、明らかに、苛立っていた…


 その小さなカラダが、怒りに、燃えていた…


 私は、少しばかり、怖かった…


 なぜか、知らんが、少しばかり、マリアが、怖かったのだ…


 相変わらず、気が弱い…


 私は、思った…


 実は、この矢田も、オスマンと、同じだった…


 腕力には、昔から、自信がなかった(涙)…


 オスマンは、ホントは、30歳だが、カラダは、3歳にしか、見えん…


 この矢田は、身長159㎝と、日本人の女の平均だが、やはり、腕力には、自信がなかった…


 だから、もめ事や、争いごとは、大嫌いだった…


 大嫌いだったのだ…


 要するに、闘えば、負ける…


 腕力では、負ける…


 それが、わかっているからだった(涙)…


 「…だから、オスマンのことを、どうするの?…」


 マリアが、怒って続けた…


 そして、そのマリアを筆頭に、このセレブの保育園の女のコ全員が、腕を組んで、マリアと同じ格好で、怒っていた…


 つまりは、女のコ、全員が、怒っていたのだ…


 そして、そんな女のコたちの姿を見て、男のコたちは、皆、怯えていた…


 下を向いて、怯えているものも、いた…


 私は、そんな光景を見て、すでに、男女は、3歳で、勝負が、ついたと、思った…


 思ったのだ…


 そして、この男のコたちが、二十年後、三十年後、結婚したくないと、言っても、仕方がないと、思った…


 すでに、3歳で、女の本性を見た(笑)…


 きっと、その経験が、トラウマになり、結婚も困難になるかも、しれんと、思った(爆笑)…


 要するに、女は、怖いと、思ったのだ(爆笑)…


 女が、怖いと、思った男は、結婚に、消極的になる…


 もしや、結婚して、大変な目に遭ったりしたら、困ると、考える…


 それなら、むしろ、結婚しない方がいい…


 昨今の結婚率の低さの理由は、色々あるが、一番の理由は、結婚したいと、思わないことでは、ないか?


 私は、そう思った…


 そう、喝破(かっぱ)した…


 いわば、見抜いたのだ…


 要するに、好きでもない女と結婚したくはない…


 これは、女も、同じ…


 たいして、好きでもない、男と、結婚したくはない…


 それが、一番の理由ではないか?


 昔は、世間体があり、男女ともに、大方が、結婚していた…


 だから、いい歳になって、結婚していない人間は、おかしい…


 おおげさにいえば、普通ではないのではないか?


 そんな世間の風潮があった…


 が、


 今は、そんな世間の風潮は、皆無…


 だから、余計に、結婚しないのではないか?


 もちろん、男女共に、経済的な問題は、ある…


 例えば、男が、非正規で、働いていれば、将来は、どうするのか?


 結婚して、子供を養えるのか?


 と、大方は、考える…


 だから、結婚しない…


 だから、結婚できない…


 そんな事情も、あるだろう…


 つまり、色々だ…


 色々な問題が、重なって、結婚しない…


 結婚しない=未婚率が、上昇しているのが、本当のところだろう…


 私は、思った…


 そんなことを、考えていると、


 「…お仕置きをしてあげなきゃ、ダメね…」


 と、マリアが、告げた…


 「…お仕置きって?…」


 リンダが、絶句する…


 「…つまり、痛い目に遭わせなきゃ、ダメってことよ…」


 マリアが、続ける…


 私は、驚いた…


 まるで、マリアが、オスマンの妻か、なにかのようだった…


 マリアは、わずか、3歳だが、立派に、オスマンの妻か、なにかのようだった…


 しかも、


 しかも、だ…


 それを、マリアは、両腕を組んで、言っている…


 上から目線で、言っている…


 しかも、そんな姿のマリアを先頭に、このセレブの保育園の女のコたちが、全員、同じように、腕を組んでいた…


 つまりは、ここに、マリアを頂点とする、女の軍団が、出来上がったわけだ…


 正直、私は、ブルった…


 ブルったのだ…


 それは、ハッキリ言えば、まずは、マリアの統率力に、ビビった…


 まさか、マリアが、このセレブの保育園を仕切っているとは、思わんかった…


 これっぽっちも、思わんかったのだ…


 たしかに、マリアが、この保育園のリーダーであることは、わかっていた…


 なぜなら、前回、この保育園で、この矢田が、この保育園の園児たちと、踊ったときに、皆を、仕切っていたからだ…


 が、


 まさか、これほど、統率力が、あるとは、思わんかった…


 まさに、まさか、だ…


 まさか、マリアに、これほどの統率力があるとは、思わんかった…


 思わんかったのだ…


 そして、男のコたち…


 この保育園の女のコたちの勢いに、推されて、惨めなまでに、怯えていたというか…


 すっかり、萎縮していた…


 そして、これが、今の日本の社会の縮図に、思えた…


 男と女…


 互角に、戦えば、女が、勝つ…


 そんな現代社会の縮図に見えたのだ…


 そして、その先頭に立つ、マリアは、明らかに、いきっていた…


 鼻の穴を大きく膨らませて、いきっていた…


 私は、そんなマリアの姿を見て、唖然としたが、それ以上に、唖然としたのは、ファラドだった…


 「…まったく、兄貴も、こんな子供たちを敵に回すとは…」


 と、苦笑していた…


 「…アラブの至宝と言われた兄貴も、形無しだな…」


 その言葉に、隣のリンダも、苦笑していた…


 そして、


そして、だ…


 マリアが、


 「…さあ、行くよ…」


 と、言い出した…


 私は、


 「…どこに、行くんだ?…」


 と、マリアに聞いた…


 聞かずには、いられんかった…


 「…どこって、もちろん、オスマンのところ…」


 「…オスマンのところだと?…」


 「…そうよ…」


 マリアが鼻息荒く、告げる…


 もはや、私は、どうして、いいか、わからんかった…


 ホントは、マリアを止めねば、ならんところだったが、出来んかった…


 残念ながら、出来んかったのだ…


 「…さあ、行くよ…」


 マリアが、号令をかけた…


 すると、それを合図に、このセレブの保育園の女のコたちが、一斉に、この保育園を出て、歩き出した…


 文字通り、女の軍団…


 女児の軍団だった…


 このセレブの保育園の先生たちも、誰一人、唖然として、マリアたちを、止められんかった…


 誰一人、止められんかったのだ…


 まるで、映画だ…


 私は、思った…


 ドラマのワンシーンだ…


 が、


 さすがに、映画にも、ドラマのワンシーンにも、3歳の女のコたちが、群れをなして、保育園を出て行く、シーンはなかった…


 なかったのだ…


 私は、これが、現実か?


 もしや、夢を見ているのでは?


 と、考えた…


 現実とは、思えんからだった…


 この矢田トモコ、35歳…


 これまで、35年間、生きてきて、さまざまな光景を見てきた…


 短大を出て、15年…


 就職もせず、派遣やバイトで、これまで、食いつないで、生きてきた…


 だから、さまざまな職場を知っている…


 さまざまな人間を知っている…


 だから、例えば、言葉は、悪いが、この会社を出れば、大変なことになるゾと、思ったオジサンも、多い…


 あくまで、この会社だから、生きてこられた…


 あくまで、この会社だから、やってこられた…


 そう思ったオジサンも、多い…


 そして、これは、誰もが、思うこと…


 大抵の人間は、器用ではない…


 だから、大抵の人間は、その組織に馴染めば、他では、使い物にならない…


 これが、おおげさに言えば、日本の現実だ…


 例えば、トヨタで、部長になった人間が、日産に行けば、部長になれたかと、言うと、大分怪しい(笑)…


 昇進には、その人物と会社の水が合ったり、職場の水が合ったり…同僚が、どうだ? 上司が、どうだ? と、さまざまな環境が、複合的に、存在するからだ…


 そして、それを、クリアして、昇進する…


 偉くなる…


 そういうことだからだ…


 だから、さっぱりわからない(笑)…


 稀に、どんな組織でも、出世できる人間が、いるが、それこそ、スーパーマンだろう…


 普通は、ありえない…


 それが、現実だからだ…


 普通は、物語の中にしか、存在しない…


 そういうものだ…


 私は、そんなことを、考えながら、マリアたちの背中を、見ていた…


 颯爽(さっそう)と、このセレブの保育園を、出て行く、マリアたちの背中を、見ていた…


 唖然としながら、見ていたのだ…


 すると、


 「…止めなきゃ…」


 と、リンダが、言った…


 当たり前のことだ…


 が、


 真逆に、ファラドが、


 「…あのままで、いい…」


 と、呟いた…


 「…あのままで、いい? …どうして、あのままで、いいの?…」


 と、リンダ…


 「…兄貴の反応を見たい…」


 と、ファラド…


 「…反応って?…」


 「…要するに、兄貴が、どう対応するのか、見たいのさ…」


 ファラドが、意地悪く言う…


 そして、そう思ったのは、リンダも、同じだった…


 「…ファラド…アナタ、案外、意地が、悪いのね?…」


 「…どうして、そう思う?…」


 「…だって、マリアとオスマンのやり取りを見たいのでしょ?…」


 「…そうだ…」


 「…きっと、オスマンは、マリアにメチャクチャ、叱られるわ…」


 「…」


 「…ファラド…アナタは、それを、望んでるんでしょ?…」


 「…どうして、そう思う?…」


 「…だって、ファラド…アナタ、いつも、オスマンに頭が、上がらなかったんでしょ? …だから、オスマンが、マリアに叱られるのを、楽しみに、しているんでしょ?…」


 「…ご想像に、お任せする…」


 ファラドが笑った…


 が、


 リンダが、


 「…いずれにしろ、マリアたちを、追わなきゃ…どうなるか、わからないわ…」


 「…たしかに…」


 ファラドも、同意した…


 そして、リンダとファラドは、マリアたちの後を追った…


 そして、それは、この矢田も、同じだった…


 リンダと、ファラドの後を追った…


 なぜか、この矢田が、後追いだった…


 リンダと、ファラドの背中を見ながら、後を追った…


 この物語の主人公は、私のはず?…


 正直、わけが、わからんかった…


 主人公が、脇役の後を追う話など、あるはずもなかった…


 主人公は、常に、物語の中心で、なければ、ならんはず…


 だから、脇役の後を追うなど、ゴメン…


 ゴメンだ…


 そう思った私は、急いで、リンダと、ファラドを、追い抜いた…


 主人公のプライドだった…


 この二人を追い抜くことで、私のプライドは、満たされる…


 そう思った…


 だから、180㎝は、優に超えるファラドと、175㎝のリンダを、159㎝の矢田が、必死に走って、追い抜いた…


 結構、大変だった…


 が、


 これが、主人公のプライドだった…


 これこそが、この矢田トモコのプライドだった…


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