表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

不老不死④

 翌朝、始皇帝は目覚めると宦官の趙高を呼ぶと、「泰山へ行く。準備をしろ」と命じた。

 四度目となる天下巡遊だ。天下統一後、既に三度、始皇帝は皇帝の権威を誇示し、各地域の視察及び祭祀の実施を目的とした地方巡遊を行っていた。

 旅立ちの理由について、聞く必要などなかった。

 趙高は直ぐに支度を始めた。

 五年振りの地方巡遊だった。始皇帝は、末子の胡亥と左丞相の李斯を連れて、巡遊の旅に出た。

 始皇帝が寝てしまえば、話をすることができる。高毅は一行について都を出た。

 夜な夜な、始皇帝が仰臥する特別仕様の馬車に忍び込み、始皇帝に話しかけた。だが、あれ以来、始皇帝は何も答えてくれなかった。

 たまに「ああ」だとか「うん」だとか寝言を言う時があるのだが、朝になれば高毅の言ったことなど、何も覚えていない様子だった。

 平原津まで来た時、始皇帝は病を発した。筋力が低下し、歩けなくなった。嘔吐を繰り返し、呂律が回らなくなり、ついには呼吸が怪しくなった。

「陛下、私は陛下の命を受け、不老不死の術を会得した仙人を探して、各地を旅しました。今、陛下の望みをかなえることができる方士を探し出し、こうして方士のもとにお連れしようとしています。どうか、お気を確かに。今しばらくの辛抱でございます。そして、方士にお会いなされた時に、方士に私を元の体に戻すようにお命じください」

 高毅は昼夜を分かたず、始皇帝の耳元で囁き続けた。

 一度、始皇帝は目を開けた。そして、高毅の顔を見た。高毅の姿が見えているようだった。始皇帝は何か言おうと、口を動かしたが、声にならなかった。

 始皇帝は目を閉じた。

 沙丘の平台にて始皇帝は崩御した。

 始皇帝を看取った高毅は馬車の中で慟哭した。突っ伏して大声で泣いた。だが、その声が外に漏れることはなかった。

「天下は再び、動乱の世となるかもしれない。良いか。我々が咸陽に帰りつくまで、陛下が死んだことは誰にも漏らしてならない。分かったな」

 丞相の李斯の命により、その死は伏せられ、馬車は咸陽を目指して動き出した。

 高毅は一行と別れ、馬車を見送った。

(これから、どうすれば良いのか?)

 その疑問が頭の中を渦巻いていた。

 風雲は急を告げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ