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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
第一章『ありふれた異世界』

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第七話「招かれざる客/真実」

(こちらジャスミン…聞こえてる?)


(こちらトパーズ あぁ バッチリだ)


(飛行もちゃんと出来てるみたいね)


(死ぬほど練習したからなぁ そのせいで滅茶苦茶怪我したぜ エメラルドにでも回復してもらおうかな〜)


(そんな事エメラルドちゃんを見つけてから考えなさいよ)


(チッ 分かったよ… このままずっと南に行けば着くんだな? 一旦切るぞ)


(気をつけてね)




『お昼のワイドショー! 今日はゲストにこの方々お呼びしています!』


一階のリビングでエメルと一緒のソファーに座りテレビを見る。


「この世界の有名人なんて分かんね〜」


「元プロボクシングチャンピオン!引退後の異例の復帰を果たしたヴァイワ・グアイスさんと今話題の人気アイドル ミネイシャ・キャンバルさんにお越しいただいています!」


壊斗は飲んでいた水が器官に入り、むせ返る。


「大丈夫カイト!?」


「ごほッげほッ ────あ〜苦しかった…いやそれより グアイス復帰したのかよ!」


『ある男に出会いましてね 思い出したんですよ 戦うことの楽しさを それでボクシングの復帰を決意しました 』


『はい ありがとうございました! 続いてミネイシャさ…』


『えい!』


ミネイシャと呼ばれたアイドルはグアイスの鼻っ柱を殴りつける。


まさかの出来事にグアイスは避ける事を忘れていたみたいだ。


『ごめんなさい! 私やっちゃいけない所でやっちゃいけない事をしちゃう癖があるの!』


『何モタモタしてんだ!早くカメラ止めろ!』


何者かの声で映像が別の物に差し替わった。


「何なんだあの女…グアイスもなんで避けないんだよ」


この後どうなったのかが凄く気になる。


テレビのチャンネルを変えようとした時、外から物凄い轟音が聞こえた。


急いで外を確認しに行くと、そこには黄色い髪に緑色の目をした男の姿があった。


一体何しに来た?まさか王国の隊士に場所がバレたのか?どうやって場所が分かったんだ。


「よぉ 罪人と失敗作(エメラルド)


一体何の事を言ってるんだこいつ… 罪人?俺の事か? それに失敗作って...


「…ッ…トパー…ズ…?」


エメルの顔つきが一気に怯えたものへと変貌する。


「なぁエメラルド こんな所で何してるんだよ 早く帰ってこい 父さんが待ってるぞ」


父さん? エメルは確か貧乏だったって言ってたよな。こんな貴族みたいな格好した奴が"兄"なのか?


焦る気持ちを押し殺し、冷静に尋ねる。


「お前は一体何者だ? 何故此処が分かった? 何が目的だ?」


「いきなりそんな質問攻めにすんなよ まぁ 軽く自己紹介だ オレはトパーズ・ジュエラード ダイヤモンド王国 ダイヤモンド護衛隊"上位"所属 以上!」


やっぱり護衛隊か。ふざけんな。何でこんなすぐに居場所がバレんだ。


「お前… うちの隊員ボコしたらしいな …ふーん 見た目は弱っちそうなのに 何処にそんな力隠しているんだ? …能力者じゃ無いだろうし あ、口が滑った 気にすんな」


話し終えた途端、耳障りな音と同時に魔法陣のようなものが手の平から出現し、空中に現れる。その魔法陣を通過して黄色い盾が姿を現した。


見た目はギザギザしていて守る事よりも攻撃に特化したデザインをしていた。


「国の決まりと王の命令により… これから貴様に処罰を下す …悪く思うなよ」


トパーズと名乗る男がそう口走った。


次の瞬間、トパーズは盾を構え、空を切る程の速さで突進を仕掛けて来た。


「──ッ!」


幾ら力と守りが強くなった所で、反射神経が良くなった訳では無く、避ける事は不可能だった。


然しだ。トパーズの突進は無意味に終わった。盾が壊斗の体に触れた瞬間、ベクトルが変更された様にトパーズは反対方向に吹き飛ばされた。突進の威力が、そのままトパーズへ反射されたみたいに。


「うぐッ! いってぇ! 《弾む盾(バウンドシールド)》!」


体勢を崩し、数十メートル先まで吹き飛ばされたトパーズが取った行動は、盾を柔らかく弾む素材に変更し、自分の吹き飛ぶ方向を予測し、空中に盾を設置することで体を跳ね返らせ奇襲を仕掛ける。といった行動であった。


空中で体制を立て直し、その弾んだ力で壊斗の元へ再び奇襲する。跳ね返る力を利用した為、速度は吹き飛ばされた時の倍になっていた。


「《斬撃盾(スラッシュシールド)》ッ!!!」


トパーズがそう唱えると、盾が無数に分裂していき、一つ一つが壊斗を襲った。


壊斗はすぐに手前で腕をクロスさせ、腕だけにダメージが集中するように…では無く、咄嗟にトパーズの攻撃を両腕で防ごうとした。だけれど、トパーズが放った斬撃は、そんな事じゃ防ぎようが無かった。


斬撃は何発も壊斗の腕に直撃した。しかし壊斗は何の痛みも感じなかった。腕を確認してみると、傷一つ付いていなかった。


斬撃を全て弾き返しされ、トパーズは元に戻った盾に押し返された。少し飛ばされたが、素早く地面に着地した。


「随分と頑丈だな……本当に頑丈だな」


トパーズは二度驚いた。


「今の俺じゃ正攻法なら太刀打ち出来ねぇかもなァ」


「お前、いきなり何なんだ!」


「罪人に貸す耳はねぇよ」


トパーズはまた壊斗の方へ駆け出し、突進を仕掛けようとした。だが、さっきのものより二度目の方が速さが増している。


だが壊斗はその隙を見逃さなかった。目で確認するのが困難な程の速さではあったものの、数十メートル先から壊斗の元へ向かってくるまでに十数秒という時間がかかった。壊斗がデコピンの構えるのに十分な時間であった。


「こんなのはどうだァ?」


トパーズは二度目の突進で盾の素材を布に変更し、壊斗を包み込む作戦に変えたのだ。そうすれば吹き飛ばされずに済み、楽に捕まえることが出来る。


デコピンのタイミングがピッタリ合ったのは狙った訳じゃ無く、ただの奇跡だった。幾ら準備をしていたと言っても、常人が出せるスピードでは無い相手に対して普通の人間が対応しタイミングを合わせてデコピンをする事は不可能だからだ。


突進される一歩前。盾で包み込まれる一歩手前で運良く伸ばした手から発せられたデコピンが盾に当たる。盾は一瞬にして粉々に砕け散り、光と共に姿を消した。


「嘘…だろ…」


トパーズはデコピンによる風圧で物凄く後方に飛ばされた。支えになってくれる盾はもう無い。


だがしかし、盾は優秀であった。壊れはしたが壊斗の本気デコピンを防ぎきったのだ。


トパーズは森の木々に支えられ、外傷を最小限に抑えることが出来た。


「エメルー!こいつ回復させてやってくれー!」


予め遠くに避難させておいたエメルを呼ぶ。壊斗はトパーズがもう抵抗してこないことを確信していた。


トパーズは吹き飛ばされた瞬間に「オレの負けだ」と小さく呟いたのを聞いていたからである。


這いつくばって壊斗らの元へ向かってきたトパーズに、エメルは嫌そうではあったがしっかりと回復してあげていた。


トパーズはむくっと起き上がる。


「マジかよ… お前クッソ強ぇじゃねーか! おいお前!名前はなんて言うんだ!?」


「バンデント=フレイデルクス」


何故かスっと頭に浮かんだ名前を無意識に口走っていた。まるで慣れ親しんだ自分の名前のように。


「えぇ!?」


エメルには余計なことを喋らないで貰うため、ギロリと睨み、指示する。


多分伝わったようで、そこからは静かにしてくれた。


「バンデント… か… これからは()()と呼ばせて貰うぜ なんたってお前は今からオレの仲間になるんだからなぁ」


トパーズがさも当たり前かのようにそう言った。だが今は先に聞かなければならない事がある。


「悪いトパーズ 一旦その話は後にして欲しい 少し席を外してくれるか? エメルと…エメラルドと二人きりで聞きたいことがある」


「あぁ? …まぁ良いけど」




俺とエメラルドは家に入り、テーブルに腰掛ける。


俺は色々な事をエメルに聞いた。ダイヤモンド王国の城から飛び出してきたということ。そこの国の王はダイヤモンドで、実の父親だということ。トパーズとは兄妹で全員で五兄妹ということ等。だが話の真髄はそこじゃない。


「何で偽名なんか使ったんだよ エメラルド 家も貧乏とは正反対じゃないか 何で俺を騙した?」


信じていた。今、エメラルドに対する信頼は限りなく0に近い。


エメラルドは呻き声をあげ、重たげな口で語る。


「…私の本名は エメラルド・ジュエラード 能力名は回復〈リカバリー〉」


「私の能力はトパーズ達の能力とは違うんだ そのせいでパパには"失敗作"って呼ばれてる 回復なんて使えない能力だって 結構万能なんだけどなぁ この能力」


「私ね 昔からパパに殴られたり蹴られたりされてた ご飯をくれない事なんて日常茶飯事 パパは機嫌が悪い時は私を外に追い出してお家に入れてくれない だから喉が渇いた時は水溜まりの水を浄化させて飲んだりお腹が空いた時はゴミ箱を漁って食べ残しを浄化させて食べたりして過ごしてた」


「とても辛かった… 家から逃げ出したのはそれが理由 だからあの時言った事の全部が嘘じゃないんだよ? 沢山の親切な人に助けて貰いながらできるだけ遠くに でもあの日 カイトと初めて会った日 護衛隊員に見つかっちゃって 連れ戻されたらもっと酷いことをされると思って 偽名を使ったのは本当の名前を言ったら連れ戻されると思ったからなの …ごめんなさ…い」


エメルは我慢してた感情が抑ええられなくなり、泣きじゃくる。


俺は怒りが込み上げた。エメルにじゃない。ダイヤモンドとか奴にだ。実際に虐待にあっている子を見たのは初めてだった。それがどれだけエメルを傷つけたか。


奴隷として売らなかったのも金は十分あるからだろう。脅し、恐怖で縛りつけ、屈服させる為に。


だが一番腹が立ったのは自分に対してだ。俺はあの状況でエメルが王の娘だと知ったら間違いなく王の元へ送り返していた。


「辛かったな もう大丈夫 俺はエメルを見捨てないし …絶対に守る」


苦しかった筈だ。幾ら体を回復させたとしても心まで回復させることは出来ない。恐怖心、トラウマに耐えながら過ごしてきた事に敬意すら感じる。ダイヤモンド、奴が全ての元凶だ。もうどうなったって知らない 今すぐにでも殴り込みに行こうか。


「ほん…と? 私カイトの事騙してたんだよ…?」


エメルは涙ぐんだ目でそう言った。


「あぁ 約束する 第一そこまで酷い嘘って訳じゃないし」


俺は心にそう誓った。

エメルは王族なのに何故誰もエメルを敬わないのか。とツッコミが来そうですが覚えておいてください。ダイヤモンドは「四兄弟」としています。勿論兄弟でさえも。エメルの存在は亡きものとなってるのでしょう。だから一般人もエメルが王族だなんて思わない。という事です。

※追記 壊斗とトパーズの戦闘シーンを少し伸ばしました。

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