事の大前提
「お腹すいたなぁ…。」
私魔法使い、今雪原にいるの。
真っ白な雪に真っ青な魔獣の血と、真っ赤なニンゲンの血と魔導銃弾の硝煙の香り。
ここが私の仕事場である。
え?殺伐すぎ?
まぁそうなんだよぁ。
ここは北の砦、北限の最終防衛ライン。
魔獣とニンゲンのガチンコバトルフィールドである。
なんでここにいるかって?
いや、仕事だし…。
じゃあいかにして私がここに来たかを説明しようかね。
そう、あれは今日みたいな雪の降る日だった。
「さっみー。まじさみー。」
私が住んでいたのは日本の片田舎。
冬には雪が積もるし、夏は暑い。そんなところ。
その日は朝から雪が降り積もって大変なことになっていた。
たかが積雪と侮るなかれ、豪雪地帯なめるなよ?
車が出せない、家から出られない、なんてこともあるんだぜ?
これ以上降り積もるとまじで大変なので、仕方なくこたつから這い出て雪掻き向かった。
己の呼吸と雪に突き刺すスコップの音、それからたまに聞こえる遠くを走る車の音。
そして絶え間なく降り続ける雪の音。
サラサラサラと、キンと張り詰めた寒さの音だ。
でも聞きなれたはずなのに、聞きなれたそれが酷く煩わしくて、気持ち悪くて。
終いには目眩までしてきた。
なんで、特に体調も悪くなかったのに。
これはヤバいと、家に戻ろうと足を踏み出した瞬間だった。
今まで聞いたことのないくらいの耳鳴りと、酷い頭痛と吐き気。
立っていられないくらいの目眩に、私はその場で倒れた。
降り積もる雪の日に倒れるのはヤバい。
起き上がろうにも、手足が痺れて動かせない。
唯一動く眼球で回りも見渡しても誰もいない。
嘘でしょ、まじ?ここで死ぬの?
どんどんと自分に降り積もる雪を見ていると、今度は酷い眠気がきた。
寝たら死ぬ、と解っていても抗えるわけのないレベルの眠気に、私は瞼を下ろした。
で、開けたら雪の積もったこっちの世界だった。
しかも社会人だった筈の体は12歳位まで若返っていた。
ビックリしたよねー、やだ、私の肌ツヤツヤ!?て。
その後当然のように身寄りのない私は、私を一番最初に見つけてくれた老夫婦のお世話になることになった。
それから学校へ行き、卒業して、従軍、今に至るわけ。
「あー…帰るかなぁー。」
なんでこの北の砦にいるかって?
さぁ…上層部の意向だからわかんない…。
それよりもお腹空いたしかえるね。




