24.ペットのギャップに撃沈しました
「なぁ花令よ、次の街までどれぐらい掛かるんだ?」
知るわけないだろう、ボケェ。
口には出さないが、堪え性が無さすぎるぞ妹よ。
国内地図を出しながら向かっているけど、街というより一番近い村まで歩い夕方に着くかもしれない。
セブールの街を言っているなら数日はかかる。
一時間以上歩きっぱなしだから、疲れたのかもしれない。
私も留美生もインドアだから、サイエスに飛ばされてレベルで補正されても体力は無い。
こまめに休憩を取ったら、もっと着くのが遅くなる。
「あと数日ってところじゃないかな? そんなに遠くないって聞いてるし」
異世界なんだから、私たちの足だと半月くらいはかかると思う。
今更何言っているんだコイツっというような眼で見れば、
「私の電動スクーターと手持ちのバイク出しな」
と言い出した。しかも、ガン飛ばしのオプション付きで。
「はいいぃ!!」
逆らったらマズ飯決定なので、敬礼して電動スクーターと原付を出した。
「最初からこっちで移動してれば良かったと思わん?」
「本当にね。気付かなかったわ」
確かにね、それに乗れば村をすっ飛ばして街に着くと思うよ。
でもね、レベリングもしないといけないんだよ!
私たち弱いんだから、レベリングしながらゆっくり行けば良いのに。
それにこの世界にはない物を使うんだから、誰かに見られたら面倒な事になるのを分かってないんだろうか?
留美生の中ではしんどさ>冒険の構図になっているので、おとなしく愛車の原付に跨った。
隠密と索敵を発動させて人が居ない道なき道を選んでセブールを目指す。
途中モンスターに出会ったが、電動スクーターと原付でひき殺した。
ドロップされたアイテムをマジックボックスに入れのは忘れない。
それを何度も繰り替えしていると、丁度バッテリ-が切れそうだと留美生からの申告があり、ついでに昼時なのでご飯にしたいと言われた。
「昼ご飯にしない?」
「分かった」
アイテムボックスから椅子とテーブル、食器などを出した。
「作り置きの弁当だして。何でも良いよ~」
早くご飯食べたいと催促され、シュウマイサラダ弁当を出してやった。私は、みんな大好きハンバーグ弁当だ!
サクラには、ジェリービーンズをお皿に乗せてやる。
留美生はガスコンロでお湯を沸かしている。私に言えば、お湯くらい出せるのに。
お湯が沸き、お茶を入れてくれる。サクラには、専用のお皿(留美生が勝手に決めた)にお水を注いてでいた
支度が終われり、食卓を囲み手を合わせて、
「「「頂きます(ぷきゅっ)」」」
の音頭と共にご飯を食べ始める。
食べている最中に留美生が、いきなり突拍子もないことを言い出した。
「蛇ちゃんズ呼ぼうよ。あの子達の世話も出来て一石二鳥だし、契約出来ているんだから脱走するってことはないと思うよ」
私は引き攣った。過去に脱走をやらかしている相手に、脱走しないはないと思う。
一度言い出したら聞かないのは分かっているので、
「食事が終わったら試してみるよ」
と言ってご飯を再開した。
私一人、自宅に戻り蛇ちゃんズを虫かごに入れてサイエスに戻った。
サイエスに戻る前に蛇ちゃんズのステータスをこっそり確認した時、念話があったのでひと安心した。
しかし、実際念話してみるとおっさん化している蛇ちゃんズに私と妹は泣いた。
大きい方が赤白と小さい方が紅白だ。
二匹に留美生のテンションが上がりっぱなしで、逆に冷静になれた気がする。
「あぁ~ん、超可愛い。流石私の子!! 紅白も赤白もどっちもラブリーでプリティーでビューティフルよぉおおおおおおおおおお!!!」
いや、お前の子やないし。どちらも私の嫁だ!
留美生が二匹を構おうと手を出すと、さっと避けた。流石蛇、素早い。
再度チャレンジしているが、またも避けられている。ざまぁ!
最後は、意地になって捕まえようとする留美生VS蛇ちゃんズの構図になった。
私はただ愛でたいだけなのに何故? という顔をしている。
何で避けられているのか全然分かってない妹に、真相を教える気はない。
避けられ続けて心が折れそうな留美生を更に谷底へ叩き込む事件が起きた。留美生自身がの提案し墓穴を掘った結果だが。
真性の阿呆である。
「意思疎通したいから念話を蛇ちゃんズも習得させてよぉ。」
メソメソといじけ始めた留美生を見かねて、蛇ちゃんズのステータスを念話OFFからONへ変更した。
<紅白ちゃん、赤白ちゃん、これからも宜しくね!>
私の挨拶に対し二匹は、
<餌もうちょい増やしてくれや。あと水なんやけど最近はミネラルなんちゃらがあんだろー? 飲んでみたいわぁ>
<おい、たぬきブス共。たまには酒出せや。てか気安く触んな。お前等の生ぬるい体温キモイねん>
紅白ちゃんのおっさん化と赤白ちゃんの暴言に対し、
<主様はぁ、ブスじゃないのぉ。お顔はぁ、特殊なだけぇ。性格はぁ、難有だけどぉ楽しぃよぉ??>
と、悪気の無いサクラのフォローになってないフォローに心を抉った。妹は、私よりダメージが大きかったようでリアルにOTZしている姿をみた。
人生って世知辛いものなんだと痛感したわ。顔が微妙、体系たぬき、性格難有と怒涛の口撃に私と留美生は大泣きした。
大泣きしている間も蛇ちゃんズとサクラの暴言は止まらず、SAN値をガリゴリと削っていった。
誰だよ、念話なんてしようって言ったの!! こんな真実知りたくなかった。
提案者の留美生は早々に戦線離脱とばかりに念話を切りやがった。
「取り合えず蛇ちゃんズの健康チェックと食事にしようよ」
私の肩を叩く留美生に軽い殺意が沸いた。
<もっと食いがいのある奴希望! あとミネラルなんちゃらって水がええわ>
紅白ちゃん、あんたこの前吐き戻したじゃん。食い意地張りすぎだろう。
<ダメ! この間、吐き戻したでしょう。暫く食事はマウスS1匹だからね! 水だけで我慢しなさい。ミネラルウォーターなんてものはありません! 普通の水だよ>
<ドケチ婆>
何でこんなに口が悪いんだ!!
<そんな性格だから嫁の貰い手がないねんで>
赤白ちゃんの毒舌に、心に深い傷を負った。
そんなの自分で自覚してるけど、他人に言われると腹が立つ。それが、可愛いペットでも。
「まずは、キレイキレイしようか~。なんか臭いし。cleaning」
ニッコリと笑みを浮かべて、二匹の蛇を鷲掴みにしcleaningをかけた。
<とにかく! それ以上暴言吐くなら飯抜きにするからね。後、脱走したら見つけられなくなるし、その辺りのモンスターに食べられるから絶対私の傍から離れちゃダメだからね>
ガツンと言えば、蛇ちゃんズは大人しくなった。
二匹がサクラ並みにチートであったのは後の戦闘で知る事となる。




