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第18話 生き残った□□



私もヨナも腰を抜かすほど驚きましたよ。

まさか地上に生物が、ましてや知的生命体がいるなんてね。

ですがその話は順を追って話しましょうか。


連れ去られたあと、先に意識が戻ったのはヨナでした。

のちに知ったことなのですが、我々は半日以上寝ていたらしいです。

辺りが真っ暗なままで寝っ転がったまま、というのはまた襲われかねないと思い、すぐに立ち上がろうとしたのですが立ちくらみのような感覚に襲われて座るのもやっとでした。


暗闇に目が慣れてくると近くにほっぽり出してある我々の荷物が見えました。

ですが手を伸ばそうとすると逆に手を掴まれてしまったのです。


見ると濃い灰色といいますか、黒に近い色の毛に覆われたニュッと伸びた腕が見えたんです。

ゾッとしましたとも、見知らぬ生物に腕を掴まれるなんて。

とって喰われるかと思いましたよ。


ですが向こう側に敵意はなかったんです。

我々が転がされていたのは森の中の広場のような、1カ所だけひらけた場所でした。

まるで見世物のようで最初は何をされるのかとヒヤヒヤしていましたが、向こうはなにもしてこないんです。


こちらから様子をうかがっていると、何人か顔を出しました。

驚きましたよ。真ん丸に光る目が頭大の毛玉の中に埋め込まれているような顔だったんです。


体はヒョロヒョロとしていて、絶滅したテナガザルという猿をひきのばしたかのような感じでした。


ヨナも私も凄く怖がっていたんですが、こうもしていられないと話しかけてみたんです。

私の知っている言葉は全て話してみました。

私たちのシュタット語、隣の国のヴァルハ語、近隣国の基本の言語であった旧英語などをです。


ですが誰にも伝わりませんでした。

相手には通じなかったのです。

次に私が知っている数少ない地上語を使ってみました。

私の知るのは英語、ドイツ語系統、フランス語でした。

ブレナやリーダーならもっと知見があると思いますが私にはこれが限界でした。


それでも根気強く粘りました。

私たちには敵意はないこと、ここがどこなのか知りたいということを身振り手振りでも説明しました。

相手方もおずおずと木の陰から出てきました。

ですが近くまでは来ませんでした。

何人かがのそりと動き、スクラムを組むかのように話していました。


ですがその時に聞こえたのは動物のような唸り声でした。

天変地異が起こったあと、かつて哺乳類や鳥類が生き残ったように、なにかしらの方法でやり過ごした生き物が進化したのでしょうか。

700年というのは進化するのにはあまりにも短すぎるとは思いましたけどね。


気づくとこのテナガザル達はこちらを見て地面を叩きました。

いつの間にか湿った地面に絵を描いていたのです!

長い手でその絵を示すと、数匹が残ってあとはみんな森の奥へと消えていきました。


「ははぁ、群れのリーダーを呼んでくるのかな?」 


そう思いました。

ヨナの方は最初に口をきいてからなにも喋らずだんまりをしてました。

どうしたのかと聞いても青くなって首を横に振るばかりでなにも語りませんでした。

嗚呼、この時にこの世界の恐ろしい真実に感づくとはどんなに酷だったことでしょうか。

愚かな私はなにも気づきませんでしたがね。


しばらくすると、森のほうがザワザワしはじめました。

群れのリーダーを連れてきたのかなと待っていると果たして『ボス』が来たのです。

ひょろ長いテナガザルたちのリーダーというのは毛の色が違ったりとか、大きさが倍くらいあるとか、そんなことを考えておりましたのでやってきた人物を見て大変驚きました。

それは人間だったんです。いや、《《人間の姿をしていたんです》》。

 

ブレナと同じくらいの高身長で彼と同じく痩せ型でした。

その人物は私たちを警戒することもなくすぐ横まで近づいてきました。

私が立とうとすると手で押し留め、彼自身が私とヨナの間に座りました。

イレギュラーであろう私たちの存在に強く出るわけでもなく、穏やかな笑顔のまま我々を観察し始めたのです。


こういう極限状況においては「笑う」ということは返って恐ろしく感じましたとも。

何もできずに座っていると、相手はようやく口をあけたのです。


「あなた達はどのような用事でこの地に来られたのですか」


響くようで霞むような、表現のできない声でした。

私がまずシュタット語で喋ろうとすると、またもや手で押し留め今度は目を閉じました。

混乱していると、ええよくわかりました、と言い彼は立ち上がりました。


「地上から人がいなくなってから随分と経ちましたが、あなたがたは久々の訪問と言うことですね。案内しましょう。ですがその前に、あなたがたの安否を気にされている方々がいらっしゃるでしょうから連絡されてはいかがでしょうか」


と言い、重い通信機を片手でヒョイと持ち、こちらに渡してきました。

驚くことに機械は途端に軽くなり、元のとおりに使えるようになったのです。


こうして我々は地上に生き残っていた1人の人間と会ったわけなのです


◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇―◇



クレマンが話し終えると長い沈黙が辺りを覆った。

日が燦々と照っている自分たちがいるこの場所までジメジメと湿った森になったような感覚がした。

シャルロッテも困惑したような顔をして黙っている。

どう切り出そうか迷っているのだ。

理由はおそらくただ1つ。










今話していた"クレマン"は私たちが知っているクレマンではなかった

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