ep.56 赤いほっぺと、白いヒーロー
夜の事務所は、苺の匂いがしていた。
廊下の隅。
いちごフェアの段ボール。
白い小さな背中。
赤いほっぺ。
丸い耳。
リボン。
「春はやっぱ苺だな。人の入りが違う」
見た目は完全に“かわいい”。
でも声は、営業三回転をこなした男の声。
べにほっぺが帰ってきた。
そこに、もう一人の白。
「べにほっぺさん、お帰りなさい」
英賀田雪雄。
La♪Ra・RISE!(ララライズ)のホワイト。
背の高い白と、小さな白。
妙に並びがいい。
「ヒーロー志望、調子はどうだ?」
「……覚えていてくださったんですね」
少しだけ間。
「嬉しいです」
べにほっぺは鼻で笑う。
「現場で聞いた話は忘れない主義だ」
この二人、会話のテンポが似ている。
軽口のあとに、本音。
現場の話から、すぐ“役割”の話にいく。
「旬って分かりやすいよな」
べにほっぺが段ボールを軽く叩く。
「今は苺。でも時期が終われば別の主役」
小さく息を吐く。
「……昔、俺も旬だった。
雪雄は、俺の全盛期なんて知らないよな」
デコメ全盛期。
一世を風靡した、べにほっぺ。
今は現場営業。
でも——
「今日、小さい子が言ったんだ。
“お母さんの持ってるキーホルダーと一緒!”って」
赤いほっぺが、蛍光灯に照らされる。
雪雄の目が、少しだけ柔らかくなる。
「それは、嬉しいですね」
「親世代に覚えられてるってことだ。
旬は終わっても、記憶は残るらしい」
雪雄は静かにうなずく。
「ヒーローも、同じかもしれません」
「有名であることより、覚えてもらうこと」
「目の前の誰かに」
べにほっぺは、少しだけ雪雄を見る。
評価する目だ。
「お前、やっぱりヒーロー向きだな」
「まだ志望です」
即答。
似ている。
一人は、主役になれなかった男。
一人は、かつて主役だったうさぎ。
でも、今はどちらも現場に立ち続けている。
旬を知っている白と、旬に左右されない白。
子どもと相性がいいのも、同じ。
どちらも、目の前の相手を見る。
数字じゃない。
バズじゃない。
目の前。
妙に、しっくりくる。
並びがいいのは、色だけじゃない。
思想も、近い。
俺は、ポケットからスマホを取り出した。
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【颯太メモ】
■雪雄さん
・ヒーロー志向が本物
・旬より“継続”タイプ
・子ども受け◎
・白=守る色
・主役になれなくても折れない
■べにほっぺ
・マスコットキャラクター界のベテラン
・旬を理解している現場型
・“覚えてもらう”を大事にしている
・子どもとの距離が自然
・赤いほっぺ=記憶に残る容姿
*La♪Ra・RISE!キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




