ep.52 ララライズ密着計画 公開後0時間。──最初の“いいね”
19:00。
公開ボタンを押した瞬間、指先の感覚だけがやけに鮮明になる。
俺はすぐに、配信状況を確認できる管理画面を開いた。
再生数「1」
(……そりゃ、そうか)
更新
「5」
「12」
数字は、ゆっくりと動き出す。
俺は会議室へ向かう。
「公開、完了しました」
椿社長が画面から目を上げる。
「どう?」
俺はモニターを見たまま答える。
「高評価、入りました」
猫太Pが身を乗り出す。
「もうニャ?」
「はい。最初の“いいね”です」
その言葉が、空気をわずかに軽くする。
さらに更新。
「視聴維持、今のところ安定してます。最後まで見られてます」
椿社長が小さく頷く。
「ちゃんと掴めてるってことだね」
通知が鳴る。
コメント1件。
俺はゆっくり読み上げる。
「“可愛い~”…ですね。」
猫太Pが笑う。
「素直でいいニャ」
椿社長が小さく頷く。
「難しい分析はいらないね。“いい”って思ったから書いてくれた!」
俺は画面を見つめる。
たった一言。
でも、ゼロじゃない。
誰かの指が止まって、言葉にしてくれた。
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その頃、レッスンスタジオ。
休憩中のLa♪Ra・RISE!(ララライズ)は、誰もが自然体を装っていた。
真秀はスマホを伏せたまま言う。
「……姫たち、見てるかな」
カノンくんが即答する。
「公開直後の反応が今後を左右する。つまり、今が重要」
千鶴はそわそわしている。
「コメント来てる!?来てたら俺、全部読む!」
辰煌は隠そうともしない。
「ねぇ今どうなってる!?」
俺はスタジオに顔を出した。
「皆さん、動画ですがさっそく高評価、入りましたよ!」
一斉に空気が変わる。
那音くんが少し前に出る。
「……コメントも何か入ってますか?」
「“可愛い~”って」
那音くんは静かに笑う。
「それは、うれしいですね」
ダズが軽く頷く。
「……ワタシたち、ちゃんと映えてるね」
翔太が小さく息を吸う。
「一言でも、書いてくれたってことですよね。……ぼく、それだけで十分うれしいです」
雪雄が穏やかに言う。
「ちゃんと届いていますね。僕たちの“今”」
カノンくんが続ける。
「ちゃんと最後まで見てもらえてるか?」
「はい。いい感じです」
真秀が小さく笑う。
「じゃあ、姫たち、ちゃんと見てるな」
千鶴が拳を握る。
「なんかさ、もっとがんばろってなる!」
辰煌が声を上げる。
「次、もっと強いの出そうよ!」
雪雄がまとめる。
「焦らず、ですね。積み重ねましょう」
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20分後。
再生は三桁に届く。
共有の通知が増え始める。
「広がってます。今、いくつかシェア入ってます」
俺がそう伝えた瞬間、空気が弾けた。
カノンくんが即座に言う。
「広がり始めてるね。知らない人の目にも届いてるってことだ」
真秀がニヤっとする。
「ほらな。姫たち、動き早いだろ」
千鶴が両手をぶんぶん振る。
「やば!やば!うわ、なんか本当に始まった感じする!」
辰煌が机を軽く叩く。
「よっしゃ!もっといける!絶対いける!」
ダズが笑う。
「いい流れ。このまま止まらないよ」
翔太が少しだけ声を上げる。
「……僕たちを知らない誰かにも、届いてるんですよね。」
那音が窓の外を見て、小さく息を吐く。
「……なんか、うまくいきそうな気がします」
通知が、また鳴る。
「高評価、また増えました」
「よし!」
「きた!」
「スクショ撮っとく!?」
数字は、ゆっくり。でも止まらない。
派手な爆発じゃない。
けど、確実に灯った火が、今、風を受けている。
俺は画面から目を離して、みんなを見る。
目が、同じ方向を向いている。
「……次、撮ろう」
「やろう!」
「今すぐ!」
「もっと強いの!」
誰も迷わない。
高評価が、またひとつ増えた。
そして、笑い声が、スタジオいっぱいに広がった。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




