ep.47 節分前線、最前線。
――キャラランド本社、夕方。
廊下の奥から、どこか慌ただしい足音が聞こえてきた。
この時期、その音の正体はだいたい決まっている。
「……ぽこぺん、今日も戻り遅いな」
俺がそう呟いたタイミングで、
自動ドアが開き、赤い影が飛び込んできた。
「ただいまーーッ!」
鬼のマスコットキャラクター、ぽこぺん。
キャラランド所属マスコットの中でも、
節分はダントツで稼働率が高い“稼ぎ頭”だ。
「お疲れさま。今日もイベント?」
「当たり前だろ!
節分の日の俺は、分身の術レベルで呼ばれてんだ!」
胸を張るその姿は、いかにも先輩風。
だけど、よく見ると外気の寒さもあって身体から湯気がでている。
その湯気が、節分の日の「鬼」をうまく演出している。
(……相当、走り回ってるな)
「水、置いときますね」
声をかけたのは、那音くんだった。
相変わらずタイミングがいい。
「お、ナオト。気が利くじゃねぇか」
ぽこぺんは素直に礼を言って、
ペットボトルを一気に半分飲み干した。
その様子を、少し離れたソファからダズが見ていた。
脚を組み、いつものゆったりした姿勢で。
「……話、聞いた」
ぽこぺんが眉を上げる。
「ん?」
「スタッフから。
最初は泣いてた子も、最後は笑って帰ったって」
ダズの声は淡々としている。
まるで事実を確認するみたいに。
ぽこぺんは、一瞬だけ目を逸らしてから、照れ隠しみたいに鼻を鳴らした。
「ま、鬼だからな。最初は怖がられるのも、仕事のうちだ」
雪雄さんが、静かに続ける。
「……現場、ちゃんと回してたって聞きました。
スタッフも、後輩のマスコットも、困らせなかったって」
ぽこぺんは、少しだけ鼻を鳴らした。
「当たり前だろ。俺が立つ現場なんだからよ」
そう言って、自分の胸をぽんと叩く。
「節分は忙しい。
だからこそ、後ろがグチャっとしたら意味ねぇんだ」
その言葉を聞きながら、俺はふと気づく。
この人、ちゃんと“先輩”でいようとしてる。
先輩風は吹かす。
口も態度も、でかい。
でも――
自分が一番前に立つぶん、裏側の段取りや、後輩の立ち位置まで気にしてる。
キャラランドの稼ぎ頭。
同時に、マスコットキャラクターたちのリーダー役。
ぽこぺんは、そういう立ち方をしている。
ダズが、小さく頷いた。
「いいリーダー。
さすが、ぽこぺん先輩!」
ぽこぺんは一瞬きょとんとして、すぐに大きく笑った。
「ははっ!リーダーとかよくわかんねぇけど、悪くねぇな!」
節分。
鬼は今日も、誰かの前に立っている。
俺は、その背中を見ながら思った。
(……こういう“仕事の姿”、
ちゃんと残しておきたいな)
今日はカメラは回していない。
でも、この光景は、きっと忘れない。
*La♪Ra・RISE!キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




