9/84
九人目
「久しぶりにあの服着てきてよ」
「あの服?」
「あの〜、黒のかっこいいやつ!」
「りょうかい」
新しく、趣味でもない服を買って彼とのデートを楽しむ。
久しぶりのデートは吐き気を抑えることで必死だった。彼がずっと私以外の女の話をしていたからだ。
「あの時さ、俺びっくりしたんよね!」
「そう?」
どの時だよ。どの女だよ。
「てかさ!やっぱりその服似合ってるよ!」
「ありがと」
初めて着てきたんだけどな。どの女と間違えてるんだか。
「ねぇ、気をつけてね?」
「何が?」
「もういい」
よくこんなんで浮気なんてできるな。
「そういえば、プレゼントあるんだよ!」
「何?」
「指輪!イニシャル刻んだやつ!」
「ありがとね」
指輪には知らない女のイニシャルが刻まれていた。