第二話「死んだと思ったら転生していた」
「生まれたわ。元気な男の子よ!」
「でかしたぞ、フィオナ!」
目を覚ますと二人の若い20代くらいの見た目の男女が俺を見つめながらそう言った。男の方は背の高い黒髪で色白の優男風のイケメン。女の方は白髪の美女だ。
誰だ、こいつら?俺は確か、さっき通り魔に刺されて多分死んだ。もし生きていたとすれば今頃病院にいるはずだ。となると、目覚めたときに目の前にいるべき人間は、白衣を着た医者か看護師、あるいは俺の家族といったところが妥当だ。だが、目の前の男女はそのどれにも該当しない。というか、多分、普段滅多に見かけないタイプの人間だ。
女の方は寝間着を羽織っている。これはまだいいとして、問題は男の方だ。男は、教科書に出てくる中世ヨーロッパの国王が着てるような豪華な衣装を着ていた。こんな服、普段着にしている日本人なんてめったにいないだろう。コスプレか何かかな?
とりあえず、目の前にいるのが誰かわからないので「誰だ?」と聞いてみる。
「あー、あー」
だが、上手くしゃべれない。あー、という声が出るだけだ。くそっ、刺された後遺症か?発声機能に何か障害が生じたのか?
ふと、起き上がろうとしてみる。刺されたせいで他にも体に障害が生じてないか確かめるためだ。よっこらしょっと。だが、起き上がれない。なんていうか背中に力が入らない。
はあ、辛い。生き延びれたはいいが、どうも体に重大な障害が残ってしまったらしい。
ところで、こいつら誰だ?
* * *
あれから1週間が過ぎた。いろいろわかったことがある。まず、俺はどうやら異世界に赤ちゃんとして転生してしまったらしい。
これは目を覚ましてから約1時間後、ふと部屋にある全身鏡を見て気づいたことだ。鏡を見るとそこには一人の赤ちゃんが写っていた。部屋には、俺しかいない状況で。試しに、自分の右手をチョキの形にしてみた。そしたら、鏡の中の赤ちゃんの右手もチョキの形になった。左手をグーにしたら、鏡の中の赤ちゃんの左手もグーになった。これで、俺は確信した。この鏡の中の赤ちゃんは俺だと。
それと、今俺がいる石造りの壁の部屋の内装から察するに、この俺が転生した世界は中世ヨーロッパ風の異世界のようだ。この部屋には豪華なシャンデリアや高級ホテルに備え付けられているような天蓋付きのバカでかいベッドこそあれど、テレビやエアコンといった電化製品が一切ない。というかコンセントがない。ということは、この世界は電化製品などない中世ヨーロッパレベルの文明の世界なんだろう。
それから、目覚めてから初めて俺の目の前に現れた若い男女は俺の両親らしい。二人の会話から、男の方はベルルクス、女の方はフィオナというそうだ。そして、俺はルークと名付けられているようだ。
それと、どうやら俺が生まれた家はかなり身分の高い貴族かなんかの家らしい。これは、この家にたくさんの使用人がいることや、今住んでいる建物がどうやら大きなヨーロッパの城のような建物であることから推測したことだ。いやー、これは正直嬉しい。大貴族の家に転生できるなんて。俺の異世界での将来は明るいぞ。
そうそう、それからこの世界の話し言葉はかなり日本語に近い。というか、ほぼ日本語だ。
おかげで、目覚めてからすぐの状態でもがんばれば両親の会話を理解することができた。
いやー、幸運幸運。異世界の言語が日本語だったなんて。これが全く未知の言語だったら俺はたぶん言葉の壁で詰んでいた。俺中学の時、滅茶苦茶英語苦手だったから、たぶん異世界語なんて覚えられないよ。
* * *
異世界に来てから、半年が過ぎた。半年間の間で俺は重大なことに気が付いた。どうやら俺は人間ではない可能性がある。
これは異世界に来てから1月経ったくらいのことだ。ある日、ふと耳が痒くなり掻いているいるとあることに気が付いた。耳がちょっと尖がってないか?不審に思った俺は全身鏡で自分の耳を見てみた。するとそこに映った耳はまるでエルフの耳のように尖がっていた。あれっ、俺エルフなの?エルフの両親のもとに生れちゃったのと思った。
念のため父母の耳も注意して観察してみるとやっぱりエルフの耳のようにとがっていた。
そればかりか、この家に勤める使用人もよく観察してみると小さな角が生えていたり、中には獣耳が生えている者もいた。というか、この家にいる人間は全員、エルフや獣人のようないわゆる亜人種のような特徴を持っていた。
なんでこの家の人間は全員、亜人チックなんだ?もしかして、俺の親は亜人の貴族なのか?
そんな疑問を俺はこの半年間抱き続けていた。
* * *
異世界に来てから約1年が経った。このころになると、俺は成長し歩けるようになった。歩けるようになったことで俺に新たな趣味が生まれた。本を読むことだ。
もともと、俺の部屋の寝室には恐らく両親のものであろう本が、壁一面の棚に並べられていた。転生した当初から暇つぶしに読んでみようと思っていたが二足歩行ができず本を取れずにいた。だが、二足歩行ができるようになり、手で本を持って、ベットまで持っていくという動作が可能になった。
それからというものの、俺は有り余る時間を活用して本を読んだ。いや、最初の内は全く読めなかった。文字が日本語じゃなかったからだ。
だが、文字は1月くらいしたら読めるようになった。話し言葉のベースが日本語だし、英語とかを勉強するよりはずいぶん簡単だった。
本を読んでいろいろわかったことがある。特に、本棚の最下段に置いてあった百科事典にはこの世界についての有用な情報が書かれていた。
百科事典によれば、まず、この世界には人間以外の種族もいるそうだ。その種族を総称して魔族という。魔族は全体的に人間よりも身体能力や寿命が長いようだ。その代わり繁殖力が低く人口的には人間よりも圧倒的に少ない。具体的な数字で言えば魔族の人口は人間の100分の1に満たない。次に、魔族の見た目は基本人間をベースにしているが、尖がった耳や角や獣耳、尻尾などの一部に人間に無い特徴を持っている。ということは、俺や両親それにこの家の使用人は全員魔族なんだろう。
それと、この世界には魔術と呼ばれる超能力のようなものが存在するようだ。この世界の住人は皆、量の多い少ないはあれ魔力というものを持っているらしい。その魔力を消費して行う技が魔術だ。詳しい個々の魔術の種類や使い方は魔術書と呼ばれる本に書いてあるらしい。その魔術書とおぼわしきものは俺の部屋の本棚の上の方に置いてあった。だが、俺はまだ赤ちゃんだ。この身長じゃあ届かない。まだしゃべることはできないので世話をしに来る両親に頼んで取ってもらうことも出来ない。
うーん、魔術か。なんかカッコいいな。俺も使ってみたい。だが、魔術書が取れないことにはどうしようもない。あともう少しすれば話せるようになるはずだから、そうなったら両親に魔術書を取ってと頼んでみよう。
* * *
それはそうとして、最近気になることがある。あっちの世界に残してきた妹、白雪のことだ。死んだときに警察が来ていたし、通り魔は無事捕まったはず。なので白雪は今も元気に暮らしているんだろうが。
あっちの世界でもこちらと同じく1年の時が経過していると仮定すれば、白雪は今高校三年生で大学受験を控えているはずだ。白雪は、中学生ぐらいの時から将来は医者になりたいと言っていた。けど、両親は医学部のない地元の公立大に行ってほしいと言っていた。六年制の医学部に下宿させて通わせるお金がないからだ。うちの家はあまり裕福な家庭ではなかった。そのため、両親は俺にも将来は地元の公立大に行くか高卒で働くかしてくれと言っていた。
だが、穀潰しの俺は死んだ。おかげで少しは我が家に経済的余裕ができたはず。多分、国公立なら下宿しながら医学部に通わせる金ぐらい捻出できると思う。
なので、白雪には是非ともこの、一家のお荷物が死ぬというチャンス(?)を生かして、医学部に進学して欲しいと思う兄なのであった。
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次話は明日投稿しますのでよろしくお願いします。




