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最後の勇者 七夕記念番外編2020「昔と今の願いごと」

……それは、シュウとシキが高校生だった、とある七夕のこと。


「シキー、短冊書けたかー?」

「ああ、今行く!」

外から間延びして聞こえてきた幼馴染の声に、シキは書き上げた短冊を手に椅子から立ち上がった。


「シュウはどんな願いごとにしたんだ?」

玄関で待っていた幼馴染にそうシキが問いかけると、彼は満面の笑顔になって。

「シキを外に連れ出せる力が欲しい! たまには外で遊びたい!」

そんなことを冗談めかして言って、シキを笑わせた。

「はいはい、今日は外に出てるだろ」

「庭で短冊飾るだけじゃん!」

言い合いながらサンダルをひっかけ、外に出る。


――毎年、双理家では庭に笹を飾って願いごとを書いた短冊を飾る。

双理家と家族ぐるみの付き合いである黒川家も、双理の笹に短冊を飾るのだ。




『記憶力を強化してほしい 識』

『もうちょっと力が強くなりたい 秋』


風に吹かれて、笹に掛かる2人の短冊が揺れた。





「これ、懐かしいな」

短冊にさらさらと異世界語で文字を綴りながら言うのは、シュウの恋人であるヴァイスハイトだ。


「だろうなあ」

短冊にまだ覚えきれてないたどたどしい異世界語で書きながら、シュウも頷く。


シュウにとっては、シキを失ってから数か月しか経っておらず、まだ彼の記憶は鮮明だ。

だが、ヴァイスハイト――シキを前世に持つ彼にとって、シキとしてシュウと過ごした記憶は既に二十年ほど前のこととなっている。

そういう、違いに触れるたび、シュウの胸は痛む。


その時、ぽん、と頭に温かい手が置かれ、シュウは俯いていた顔をあげた。

「気にし過ぎだ。シュウは短冊書けたか?」

「……うん、ありがとう、ヴィス」

オレも書けたよ、と短冊をひらりと揺らすと、じゃあ飾って来る、とヴァイスハイトは立ち上がる。


――それは、シュウがねだって始めた、2人だけの七夕。

異世界には七夕は当たり前だけどなくて、でもまた彼と笑いあいたくてシュウが言い出した七夕だった。


『シュウとずっと一緒に居たい ヴァイスハイト』

『ヴィスとずっと一緒に居たい シュウ』


名前は変わって、願いごとも変わって。

くだらない小さな願いから、切なく大切な願いへ。

綺麗にそろった言葉に、恋人たちは2人ではにかんだ。

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