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第4話 ウンコ、村八分を食らう。

 腹時計で約30分後。

 怪力女が戻ってきた。

「ウンコとはいえ、見捨てたとあらば、姫騎士道に反します」

 怪力女は、俺に薬草を投げるや、全力ダッシュで逃げていった。

 

 使い方ぐらい教えてくれよ。

 

 とりあえず、俺は薬草を食べてみた。

 みるみる傷が癒えた。

 3分の1くらい食べたところで、HPが全回復した。

 残りは大事にとっておこう。

 

 俺は立ち上がると、歩き出した。

 太陽が真上に高く上がっている。

 昼飯の時間だ。


 俺は民家のドアをノックして、言った。

「何か食べ物をいただけないでしょうか?」

 

 ドアの向こうから、おばさん声が返ってきた。

「ウンコに食わせる食い物はねえ!」

 俺は誠実な声音で訴えた。

「でもウンコ、世界を救うかもしれませんよ!」

 

 ドアが開いた。

 人間捨てたもんじゃない。

 俺は中に入ろうとした。

 が、中から蹴りが飛んできて、俺はぶっ飛ばされた。

 

 俺の代わりに、赤い頭巾をかぶった少女が中に入っていった。

 少女は薪を背中一杯にかついでいた。

 少女が中に入るや、ドアはバタンと閉まった。

 

 ドアの向こうから、おばさん声が届いた。

「神の使者になんか、誰も期待しちゃいないよ」


 おばさん声、いわく。

 聖帝勇者も、闇皇勇者も、神の使者は全員さ。

 魔王ケルベロスに殺されたらしい。

 

 しかも瞬殺。

この世界では、神の使者に期待している人は、誰もいない。

助けてやるだけ無駄だと思っている。

 

 俺は今まで、自分を特別なウンコだと思っていた。

 一応、神に選ばれたんだ。

 

 魔王を倒すポテンシャルを秘めていてもさ。

 全然不思議はないだろう?


 だが、現実は非情で、神の使者に魔王を倒す力はなかった。

 神の使者という肩書きには何の価値もない。

 

 この世界において、俺はただのウンコだった。

 

 俺は村全部の民家を回って、そのことを知った。

 

 

 結局、食べ物は手に入らなかった。

 あと、俺がノックした、全てのドアはさ。

 俺がいなくなるや、すんごく熱心にふき掃除されていた。


 俺は水を飲むことにした。

 水は無料だからな。

 

 村の中央にある井戸に向かった。

 途中で、赤い頭巾の少女とすれ違った。

 少女は、水で満杯の桶を運んでいた。

 重そうだな。と俺は思った。

 

 井戸の前には、ガタイのいいオッサンが立っていた。

 筋肉ムキムキで、得物はきっと『鉛の斧』だ。

 俺が井戸に近づこうとすると、オッサンが言った。

「水が汚れる。近づくな」

 

 でもさ。

 

 俺は、丸一日水を飲んでいない。

 人間は水を飲まないと死ぬ。

 生きるために、俺は戦った。

「うぉおおおおおおっ!」


 結果、負けた。

 オッサン、強すぎ。

 俺は、指先一つでノックダウンされちゃった。

 お前が魔王を倒せばいいんじゃね。


 薬草を食べて、傷を完治させると、俺は立ち上がった。

 あてもなく、俺は村を歩く。

 畑では、赤い頭巾の少女が働いていた。

 

 あてもなく、俺は村を歩き続ける。

 外に出たらモンスターに殺されるからな。

 

 だが、不運にもエンカウント。

 凶悪な子供たちが現れた。


「ウンコ」「ウンコ」「ウンコ」「ウンコ」「ウンコ」

 そう罵倒しながら、俺を棒でつついてくる。

 石を投げてくる奴もいる。

 

 イジメっ子にとっては遊びでもな。

 イジメられる本人は死ぬほど辛いんだぞ。

 

 俺はクソガキどもに、教育的指導を行うことにした。

 ゲンコツを固く握りしめ、戦いを挑んだ。

「うぉおおおおおおっ!」

 

 結果、負けた。

 子供たちのなかにさ。

 ジャ○アンみたいな、発育の良いクソガキがいたんだ。

 俺は今、そのガキ大将に顔面を踏まれている。

 

 死ぬ程悔しい。

 

 俺は、こっそり薬草を食べて、HPを回復させるとさ。

 不意打ちをかました。

 

 ウンコを顔面に投げつけてやったんだ。

 

 ジャイ○ンの奴はさ。

 クソまみれになって、泣きながら、逃げ出した。

「かあちゃあああん!」

 俺は大爆笑。

「ヒャバババババババババババババババ!」

 最後に正義は勝つのだ。


 でも、すぐにさ。

 

 ジャイア○の母ちゃんが復讐しに来たんだ。

 ジャイ母の全身からさ。

 凍て付く波動がほとばしっていて、超おっかなかった。

 

 その時、俺は思ったんだ。

 こいつが魔王ケルベロスなんじゃね。

 こいつを倒せば、世界は平和になるんじゃね。

 

 俺は死ぬ気で逃げたよ。

 メロスをぶっちぎるくらい、頑張ったよ。

 

 でもさ。

 

 ジャイ母は、光みたいに早く走るんだ。

 あっという間に、俺はさ。

 捕まって、殺されちゃった。

 てへ。




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