第109話 風になる。
それからも、
ウンコとミーニャは荒野を歩き続けた。
だが、歩いても歩いても歩いても、
荒野、荒野、荒野。
不毛の荒野が続く。
村1つ、発見できない。
空腹と疲労が限界を超え、
俺たちは、ついに荒野に倒れた。
気づくと、俺は馬車の荷台に寝かされていた。
右隣には、
スヤスヤと寝息を立てているミーニャがいた。
左隣には、
俺たちを看病してくれている少女がいた。
少女の顔には見覚えがあった。
彼女は、親友ヘンデルの妹。
グレーテルだ。
グレーテルは金髪のリーゼント頭で、
『S○X上等』
と背中に刺繍された特効服を着ていた。
どうやら、ヘンデルの手紙通り。
グレーテルは本当にグレてしまったようだ。
でもさ。
石像病に苦しんでいた時とは、
打って変わってさ。
グレーテルは元気一杯で、
幸せそうな顔をしている。
でも一応、
ヘンデルが心配してることを伝えるとさ。
グレーテルは言った。
「あたいは、『あの御方』に一生ついて行くって、
決めたんだ」
グレーテルは、
馬車の運転席に座る『あの御方』を指さした。
『あの御方』は筋肉ムキムキの巨漢だった。
そして確かにさ。
『あの御方』としか形容できない、
偉大な御方だった。
本能反射的に、ウンコは土下座を選択した。
「面接の時と、神皇帝の時は、
調子に乗って、本当にすんませんでした。
兄貴!」
そう、『あの御方』とは、
ソフトクリーム屋の兄貴。
数多の攻撃を受けたウンコが知る限り、
ラグナロッカー最強の存在だ。
兄貴の必殺技である、
『ファイナル・ハンマー夜露死苦ラッシャー!』
これはさ。
『ウンコセレクト。2度と食らいたくない攻撃』
において、堂々のナンバーワンである。
あの時のトラウマが脳を駆け巡り、
俺はビクビク震えた。
そんな超カッコ悪いウンコとは対照的に、
兄貴は超カッコ良かった。
『神殺し上等』
と刺繍された特攻服と、
黒髪リーゼントがバッチリ決まっている。
「過ぎたことだ。気にするな」
兄貴は超渋い声でそう言うと、
ウンコにパンをくれた。
俺はミーニャを起こすと、
パンを半分こにして、2人で食べた。
食べ終えると、俺はさ。
お礼を言おうと、運転席に目をやる。
兄貴は遠い目をしていた。
「兄貴、なにかあったんですか?」
ウンコがそう聞くと、兄貴は語り始めた。
その内容を要約すると、以下の通り。
兄貴は今、自分探しの旅をしている。
ソフトクリーム屋は、
本当の自分ではなかったのだそうだ。
「青臭えだろ?」
兄貴はハニカミながら、そう言った。
「いいえ、超カッコいいだけです」
ウンコは全力土下座で、そう答えた。
「いいや、今の俺はカッコ悪い。だがな」
兄貴は星空が輝く夜空を見上げると、
言葉を続けた。
「青臭え風も、なかなか悪くねえもんだ」
馬車は、超スピードで疾駆していた。
草の匂いのする夜の風が全身に浴びせかかる。
俺の身体が空間を切り裂いているがわかる。
心地良い。
わき上がる高揚感が半端ねえ。
グレーテルが叫んだ。
「S○X上等!」
ミーニャも叫んだ。
「SE○上等ニャ! ちょっと怖いんニャけど!」
ウンコも叫んだ。
「S○X上等! というか、SE○してえ!」
でもさ。
ウンコのチ○コは封印されているのでした。
ちゃんちゃん。




