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出会い

 少女はこそこそ隠れていた自分とは対照的に、堂々とそこに立っていた。

 その立ち姿と同様にまっすぐと伸ばされた黒髪が風になびいたが、彼女の強い力を持った瞳は、変わらずに太一を見つめ続けている。

 整った顔立ちをしているが、その強いまなざしがキツめの印象を太一に与えた。



「あなたは何をしているの?」


 彼女は再び太一に問いかけた。


「何もしていない」


 太一は答える。


「あなたは何もしないの?」

 

 彼女はまた太一に問う。

 質問されてばかりで少し腹が立った。


「俺には関係ない」


 そう、この事件は太一には関係ないことだ。よってそこで起きている出来事に関わる必要性は一切ない、そのはずだ。


「そう」


 彼女は視線の対象を太一から外し、目の前の不良達へと向け、そのまま太一の横を通り過ぎた。


「あなたたちは一体何をしているの?」


 太一に問った言葉と同じものを不良達へと向けた。

 

 やべぇ見つかった。まて相手は一人だ。だけど俺達よりも上のカーストだったらまずいよ。

 

 そんな声が挙がり始めた。

 不良達は明らかに動揺していた。

 目の前の女がリア充で、自分たちよりも繋がりを持った人間だったら確実に負ける。

 だが5対1で逃げるのもいかがなものか。

 

 不良達は迷っていたが、坂東の撤収の合図がかかると、一斉に逃げ出した。

 それを見て太一はほくそ笑む。

(ついさっきまでイキガってたのに。笑える光景だ)



 不良達が去り、リンチされていた少年の無事を確かめると、彼女は戻ってきた。


「俺が止めに入っても無駄だったよ」

 

 太一は彼女から言われるであろう非難に先回りして答えておいた。


「俺が行ってもあいつらにボコられて終わりだ。問題を解決できなかった」

「そう」

 

 彼女は興味なさげに言い放った。

 よく分かったわ、そう言うと彼女は少年の元へと戻っていった。


「なにをする気だ?」

 

 今度は太一が問う番だった。


「ケガひどいし、自分で歩けないようだから保健室まで運ぶだけよ」

 

 そう言って彼女は少年を背負った。


「そんなことやる義理あんの?あんたに」

 

 無いわね、と彼女は答えた。

 しかし依然として少年を背負っている。

 義理もない人間をわざわざ保健室まで運ぶ? こっちが何をしているのかとまた問いたくなった。


「善人ぶりたいのか?」

 

 残る理由として考えられるのはそれくらいだ。

 そうやって”良いこと”をして、周りの人間に自分を良い人間だとアピールする。

 そうすれば周りの人間に好印象を与えられる。

 そのような手段で人気者になる人間はよくいた。

 誰しもカースト下位になりたくないからアピールに必死だ。

 不良が自分より下のカーストのものを食いものにするように、彼らもまた不良を利用して良い自分をアピールしてより大きな"力"を手にしようとしていた。


「アピールしても見ている奴なんて誰もいないぞ」

「別に。どうでもいいわね。そんなこと」


 そう言って彼女は再び太一の横を通りすぎていった。

 そして少年と共に夕日に飲み込まれ、見えなくなった。



(なんだったんだ、あいつは)

 答えの出ない疑問を胸に抱き、太一も帰路に就いた。


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