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デート -3-

 ボロボロの少年とそれを取り囲む不良達、そしてそれを見つめる黒木。

 この構図には見覚えがあった。

(黒木と出会ったあの日と同じだ......。だとすると......。)

 次に起こる出来事は予測できた。そしてその予測は的中率する。


「あなた達はそこで何をしているの?」


 以前と同じ、澄んだ声で黒木が不良達を問いただす。

 不良達はまさかの介入者に同様し始めた。

 ここまでは以前と同じパターンだ。

 しかし、ここからは前回と異なった。


「くっそ、見つかっちまったか。しかもカップルとは厄介な奴らに見つかっちまったなぁ。」

「だが残念。こっちには武器があるんだ。てめぇらみたいなリア充でもぶっ潰せるようになぁ!」


 そういって不良達は武器をとりだす。

 金属バットや釘バットなど、明らかに危ない得物だった。

(さて、どうしたものか......。)

 太一は考える。

 黒木が首を突っ込んでいったとはいえ、今回は自分の姿も見られている。

 どうやら知らんぷりして逃げられる状況では無いようだ。

 それに、以前と違って太一には力もある。

 そして坂東達を始め、数々の人間を倒してきた。

(まぁこいつらは武器持ってるし、会長戦に向けてのいい訓練になるだろ。)

 太一は結論を出すと、黒木の前に歩み出た。

 

「黒木は下がってろ。お前じゃ負ける。俺に任せろ。」


 黒木を後ろに隠し、荷物を置いて、太一は不良達に呼び掛けた。


「お前らの相手は俺がしてやる。お前ら雑魚には身の程を教えてやるよ。」


 不良達は太一の言葉に激昂し、武器を振りかざし襲いかかってきた。




 不良達の動きは坂東達に比べればまだ早いものの、これまでカースト上位相手に戦ってきた太一からすれば、あまりにも遅するものだった。

 まずは金属バットを持って襲い掛かってきた来た男に接近する。


「あぁ!?」


 その不良は接近されることを想定していなかったのか、間合いを測りかね、一瞬動きを止めた。

(甘いんだよ!)

 一瞬でも動きを止めることは致命的なミスである。

 これまでの戦いから太一が学んだことだ。

 太一は動きを止めた不良を思いっきり蹴り飛ばす。

 思ったよりも手ごたえ無く、不良は別の不良を巻き込んで後方へ吹き飛んだ。


「てめぇ、ざっけんなぁ!」


 別の不良が横から飛び出してきた。

 手元で何かが光っていた。

(まさかナイフかよ......。危ないもの持ってんなぁ。)

 太一は胸目がけて突き出されたナイフを避けると、不良の首の裏を手刀で叩いた。


「ぐぇぇ!」


 思ったより鈍い音と、汚い悲鳴と共に不良は倒れた。

(漫画だともっと綺麗に気絶させられるんだけど、まあいいや。)

 ここに来て、不良は太一の強さに気付き、怖気づき始めた。

 怯える不良を太一は挑発する。


「来ねぇのかよチキンが。逃げるんならとっとと逃げて、ママにでも甘えてろよ雑魚共が!」


 不良達がキレた。

 先ほどまでの怯えが嘘のように、再び太一に襲いかかってきた。

(単純で助かるな。この雑魚共は。)

 釘バットも持った不良が二人同時に太一のもとに来た。

 当たればとても痛そうな武器だ。

(そんな危ない武器、一回自分で受けてみろよ。)

 太一はその内の一人の襟を掴み、自分の元に引き寄せた。


「てめぇ、何を......うぎゃぁぁ!」

 

 太一がその不良を離すと、絶叫と共に膝から崩れ落ちた。

 崩れ落ちた不良の後ろには、釘バットを仲間に振り下ろしてしまい、呆然としている不良が立っていた。


「す、すまん。こんなはずじゃあ......。」


 棒立ちになっている不良を横目に、太一は倒れている不良から釘バットを拝借する。


「お前も喰らえば許してもらえるんじゃないかな?」


 太一は口元に笑みを浮かべながら、拾った釘バットを不良の腹目がけてフルスイングした。

 バキッという嫌な音と共に不良は吹っ飛び、そのまま倒れた。

 

「ハハッ、ハハハ。」


 圧倒的であった。

 今の太一にとって、不良は武器を持っても相手にすらならなかった。


「きゃっ......やめ......。」


 後ろから短い悲鳴が上がった気がしたが、それも気にせず太一は笑い続けた。

 かつて自分の脅威であった不良という存在は、もはや自分のはるか下の存在になったのだ。

 もはや武器を手に取ろうが、どんな数で来ようが、負けることは無い。"力"は、正義は太一にあるのだ。

 今の自分の"力"に酔いしれていた太一に誰かが呼びかける。


「動くな、武器を置け!」


 いい気分に水を差された怒りと共に後ろを向く。

(まだそんな生意気なことを言ってるのか。自分が痛い目を見ないと分からないのか。)

 振り向き、その声のする場所を見た瞬間、太一の酔いは瞬時に醒めていった。




 --そこにはナイフを黒木の首筋に突き立てる不良が立っていた。


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