デート ー2ー
最初は当初の目的である本屋へと向かった。
革命部が発足する前に入ったときとは違い、今回は黒木がいる。
太一にはそれがとても新鮮であった。
「赤城くん。少年漫画はこちらにあるみたいよ」
太一は黒木と共に書店をうろつく。
一度来ているとはいえ店の構造は忘れてしまっていたため、黒木にリードされる形となった。
少年漫画のコーナーに着く。
太一はその中からシリーズ物を何種類か選び、大人買いすることにした。
「凄いわね。重くないの?」
黒木は驚いたような表情だが、沢山買い込んでも、太一の"力"をもってすればさほど苦にはならなかった。
「大丈夫。それより黒木は何か買わないのか?」
「いえ、私は部室の本でまだ読んでいないのがあるから良いわ」
本屋で会計を済ませる。
思ったより出費がかさんでしまったが、それは仕方がない。
(あとから小木にも請求するか......)
太一はレシートを貰い、黒木と共に本屋を後にした。
本屋を後にすると、早速太一はやることがなくなった。
しかし、まだ昼食をとるには早い時間だ。
(どうしたものか......)
今後の予定を決めかねていると、太一の視界にゲームセンターが映った。
「ゲーセン寄ってく?」
「そうね。行ってみましょう」
二人はゲームセンターに入った。
太一自身、ゲームセンターに入ったことは数える程しかない。
何年も前に暇潰しとして数回入った程度だ。
そこにあるUFOキャッチャーやアーケードゲームにカネを使うのは馬鹿馬鹿しいと考えていた。
そのため、ゲームセンターに入ってみたは良いものの、特に何をやりたいというわけでもなく、暇であった。
(黒木は何かやりたいことあるのか?)
太一は黒木に視線を移すと、UFOキャッチャーの景品の一つ、UFOのぬいぐるみをじっと見ていた。
「それ欲しいのか?」
太一が尋ねると、黒木は気づかれたことに驚いたようであったが、興味があることを認めた。
「そうね。赤城君、ちょっとこれやってみてもいいかしら?」
そこから黒木の挑戦が始まった。
それは勝機の無い、無謀な戦いであった。
どうやら黒木はこれまでUFOキャッチャーをしたことが無かったようで、クレーンの動かし方もよくは分からないようだ。
最初の数回は見当はずれのところにクレーンが降りた。
千円近くの犠牲を経て、ようやくクレーンがUFOに当たるようになった。
しかし問題はここからである。
UFO本体をクレーンのアームが上手く挟み込んだとしても、途中でポロリとアームから落ちてしまう。
「......っ! 難しい......」
アームからずり落ちるUFOを見て黒木が呟く。
しかしまだ諦める気はない様だ。
その後も何度も何度も、カネを犠牲に挑戦を続ける。
(何でこんなに頑張ってんだよ......)
太一はその姿が理解できなかった。
しかし、何時からか、太一の視線は1ゲーム1ゲームの行方に釘付けになっていた。
それから何ゲームが行われてからであろうか。
集中力が乱れたのか、クレーンはUFO本体から少しずれたところに降りる。
「くっ......」
黒木からは悔しそうな声が漏れる。
しかし、奇跡は起こった。
本体から少しずれたクレーンのアームは、見事にUFOのタグを掴み、本体ごと持ち上げた。
「行け......!」
「いっけぇぇ!」
黒木と太一の声が重なった。
そして無事、UFOは景品取り出し口の穴に吸い込まれた。
「ごめんなさい、赤城君。長々と待たせてしまったわね」
店員からUFOのぬいぐるみを持ち帰るための紙袋を貰うと、黒木は太一に謝った。
「少々熱中しすぎてしまったわ。ごめんなさい」
「良いよ謝らなくて。俺も見てて楽しかったし」
それは本心であった。
どうせやりたいことが無かった太一にとって、黒木の挑戦は、カネの掛からない良い暇つぶしになった。
店を出ると、日が傾き始めていた。
太一は最低限、本を買うという用事を済ませていたため、特に他にやりたいことはない。
「黒木、どこか行きたいとこある?」
黒木に尋ねてみるものの返事はない。
彼女の方を見ると、何かをじっと見つめていた。
――その視線の先には、ボロボロの姿の少年と、それを取り囲む不良達がいた。




