その先に在るモノ
いつもの通学路を行く。
「―何故こんな時間に?―」
―そう―
見渡せば辺りには街灯がちらつき、
見上げれば、―月―
自分の真上、自分を見つめるかの様に、そこに在る。
あの月が夜空で美しく輝いている。
「―何故―」
「―何故、あの月は、こんなにも恐ろしさを感じさせるのだろう―」
「―何故、あの月は、こんなにも優しさを感じさせるのだろう―」
「―何故―」
「―何故、あの月は、こんなにも懐かしさを感じさせるのだろう―」
「―何故―」
「―何の為―」
「―俺をこんな気持ちにさせる―」
何故か涙が頬を伝った。
自然に滲み出て、溢れ出し、
そのまま頬を伝っていった。
不自然な事なのに、
何故か、とても自然な事に感じられた。
「―逢いたい。―」
心の底から、ふっ、と、湧き出したその想い。
「―誰に?―」
「―俺は、誰に逢いたい?―」
問いかける。
誰に?
自分に、か。
それとも、
あの月に、か。
答は出ない。
自分では見つけられず、
月は答えてはくれない。
―だが―
「―この道を行けば、―」
「―この先へと進めば―」
「―俺の捜している答が―」
「―こんなにも逢いたいと願う、その人が―」
歩き出す。
歩は次第に速くなり、速歩きとなり、
速歩きはやがて駆足となった。
「―逢いに行く―」
「―俺は―」
「―逢いに行く!―」
いつもの道を、
いつもよりも強く蹴り、
いつもよりも速く駆け抜ける。
その人に逢う為に。
その人に逢いたいが為に。
「―俺は―」
「タッタッ」
「―俺はその人に―」
「タッタッタッ」
「―その人に逢う為に―」
「タッタッタッタッ」
「―此処にいるのかもしれない!―」
「タッタッタッタッタッ」
「―その人に逢う為に―」
「タッタッタッタッタッタッ」
「―生まれてきたのかもしれない!―」
一歩。また一歩。
踏出すごとに近付く「いつもの曲り角」
「いつもの交差点」
「いつもの曲り角」を曲がり、
―そして―
あの「いつもの交差点」がその眼に映る。
その風景に、
その「いつもの風景」の中に、
「彼女」がいた。
「!!」
「ハッ」と目を覚ます。カーテンの木洩れ日が目に入る。いつもよりも少し遅い朝であった。枕に、幽かではあったが、涙の痕があった。そのまま、ベッドからは起き上がらずに、ついさっきまで見ていた夢について考える。いや、
「―…誰だ…?―」
殆ど、「彼女」の事についてだった。
「―…彼女は、一体、誰なんだ…?―」
暫く考えていたが、いつまでもこうしている訳にはいかない。身支度を整える為、ベッドから降りた。
そうしている内に「いつもの奴」が遣って来た。
「コンコン」
「ハイ、どう…」「ガチャン」
今日もまた、返事を言い終える前にドアが開く。
「よぉーすっ!早く朝飯行こうぜ!」
「…ちょっと待ってろ。」
「―この男はマナーについて考えた事が有るんだろうか…―」
「誰か(彼女)」が出てきました。誰なんでしょうね…?




