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分離寄生命一蓮托生(ぶんりきせいめいいちれんたくしょう)  作者: 波麒 聖
『路地裏万華事件』
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第百三話 放課後の雑談

 次の日の放課後、今日は社会見学の前日な為、三時間授業で、昼頃に学校が終わりとなった。

「最近人気のトルコアイスの移動販売屋さんがあるんだって」

「トルコアイスッ!」

「あ、私もそれ聞いたことある、たしか格別においしいって話題の所だよね」

 俺達は暇なこの時間、何をしようかと考えていると、美幸が意見を出した。

「トルコアイスかぁ~美幸、食べたことあるのか?」

 俺が聞くと、美幸は心底残念そうに首を振った。

「それがないのよね~。移動販売だからちょうどいいタイミングで捕まえられなくて。真十花はどうなの?さっきトルコアイスに反応してたけど」

 そう言うと、真十花は頭だけ美幸の方を向き、しゅんとしたように言った。

「トルコアイス食べたいなーて思っただけ、食べたことはない」

「そ、そっか。なら紫穂は?詳しかったけど、食べたことある?」

「ううん、その移動販売のトルコアイスは食べたことないよ。でも偶然食べれたっていう友達から話を聞いて、食べたいとは思っていたんだけどね」

 紫穂がそう言うと、真十花もコクコクと頷いたが、美幸は申し訳なさそうに項垂れた。

「でも移動販売のルートが分からなくてねー。それが分かれば、少し遠くても行くんだけどなぁ~」

「あ、もうすぐ何処に泊まるかならわかるよ?」

 紫穂が言った言葉に、美幸と真十花、それに話を聞いていた内の友也と彩芽が反応した。

「何処っ?」

 軽く興奮したように美幸が聞くと、紫穂は若干引き気味に場所を言った。

「確か午後一時から午後三時までは、西区の臨林公園りんりんこうえんのリンリン池付近らしいよ」

「おーいいじゃ……」

「すぐ行こうっ!」

 紫穂の情報に、友也は返事をしようとした瞬間に美幸が食い込んだ。

「ちょっ、なんだよお前」

「私は食べたいのよ!あのお店の!トルコアイスが!」

 いつもなら軽い喧嘩けんかが始まるのだが、今回は友也が美幸の気迫に押され「お、おう、そうか」と言って終わった。

「着いたわねー臨林公園」

 俺達は二十分ほどを要し、臨林公園に到着した。

「さぁどこ?トルコアイス♪」

 美幸はルンルンでトルコアイスを捜しにリンリン池に向かう。

「トルコアイスも良いけど、この公園も良い所ですね」

「そうだなぁ~木陰に吹く風が涼しいよ。トルコアイスを買ったら木陰のベンチで食べるかー」

「ふふっ、そうね」

 俺が上を見上げると、青々とした葉やその合間から射す、緑がかった日差しや、そこを流れる涼しい風を感じる。それを感じながらぼぅっと歩いていると、「あったよー!」と、少し遠くから手を振る美幸がいた。

「おっ」

「あったみたいだな」

 俺と和義が反応していると、そんな俺達を除いた全員がそちらに走っていた。

「大人気だな、トルコアイス。ただ伸びるだけじゃないのか?」

「さぁ」

 俺と和義は、そう思いながら歩いて向かった。

「遅いわよ、誠、和義」

「悪い悪い、それで何を買うかは決めたのか?」

 俺がそう聞くと、美幸は他の皆とアイコンタクトを取った後に頷いた。

「えぇ、みんな決まったわ」

「よし……すみませーん」

「あ、いらっしゃいませー。ご注文ですか?」

「はい、えっとトルコアイスのバニラ味が二つ、イチゴが二つ、チョコが……」

「一つ」

「っと、マンゴーが二つ」

「それとモッツァレラチーズとクランベリーが二つ」

「で、お願いします」

「はい、お持ち帰りですか?」

「いえ、ここで食べます」

「はい、合計で千九百三十円です」

「ちょうどでお願いします」

「はい、丁度ですね、こちらレシートです。少々お待ちください」

 俺達は注文を済ませ、端に移動し、トルコアイスが出来るのを待った。

「誠、おごってくれるのか!?」

 友也が嬉々として言うが、俺は冷静に「割り勘だよ」と言う。

「割り勘なら二つ買った私、得。らっきぃ」

「なら各個人払いだ」

「……言わなきゃよかった」

 そんな会話をしているうちにトルコアイスが出来上がった。

「はい、おまちどうさん」

「ありがとうございます」

 最後に俺がバニラをもらうと、全員はリンリン池が見渡せる木陰のベンチに座っていた。

「良い場所があったな」

「うん、丁度空いてた。これでゆっくり食べれる」

 そう言って真十花はゆっくりとモッツァレラチーズとクランベリーのトルコアイスにかぶりつた。その光景を俺は微笑ましく思いながら、俺も長ベンチに座り、木漏れ日を感じながらリンリン池のニシキゴイやマゴイらを見つつトルコアイスを食べる。強い粘り気のあるトルコアイスをゆっくり口で溶かしながら、ゆったりとしていると、その空間だけゆったりとした時間が流れているような気がした。

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