第九十八話 予定変更
堤ちゃんがうどんを食べ終わり、俺達は一旦天風らを置いて、一階に降りた。冷えきった雰囲気の中、彩芽は声を発した。
「……誠、どうする?」
「少し気になるところはあるが、ここまで聞いて、放って置く事は出来ないだろう」
俺がそう言うと、彩芽は嬉しそうに微笑んだ。そんな中、千姫が冷静に聞く。
「これからどうする?」
「まずは堤ちゃんに説明をした後に、織曖さんの所に行く。警察や病院に行きたがらなかったのが少し気になるんだが……まぁ、川蝉に来てくれるんなら、あまり気にすることでもないだろう。本当は学校の後に行くつもりだったけど、家に一人にするのも心配だし、今日は学校休むか」
「そうね、学校には私が薙摘を飛ばすわ」
「あぁ、頼む」
俺が頼むと、彩芽は口笛を吹き、薙摘を呼ぶ。すると、すぐに二階から薙摘がやってくる。
「薙摘、これ食べてて」
彩芽は、台所からうどんを平皿に乗せて渡す。そのうどんを薙摘が器用に食べているうちに、彩芽は学校通達用の文章を紙に認める。そして書き終わると、すでに食事を終えていた薙摘がやってくる。
「薙摘、これを先生に渡してね」
薙摘の指令に薙摘は「クェ!」と反応し、学校通達紙を咥えて、開けてあった小窓から器用に飛んで行った。
「よし、俺達も朝食にして準備するか」
「「おー」」
俺がそう言うと、二人は朝食の準備をテキパキと始めた。そんな中、俺はこれからの行動を話す為、堤ちゃんに伝えに行くことにした。
「堤ちゃんこれからについて話があるんだけど、ちょっと良いかな?」
「はい、どうぞ」
堤ちゃんの声を聞き、俺が中に入ると、少し暗い顔をした堤ちゃんがこちらを見ていた。
「どうした?」
俺はその顔を心配し言うと、堤ちゃんは少し表情を戻し「それで、何の話でしょうか?」と、俺の言葉の続きを促す。
「あぁ、これから俺が所属している場所に、事情説明と堤ちゃんの安全確保の為に行こうって話になってさ……」
「その前に」
俺が話していると、堤ちゃんが少し焦ったように、食い気味に割り込んできた。
「どうしたの?」
俺がそう聞くと、堤ちゃんは意を決したように言った。
「あの、新藤さん。私、そちらに行く前に、あの、おじいちゃんの所に、戻りたい、です」
俺はその言葉を聞いて反省をした。そうであった。堤ちゃんはおじいちゃんに育てられたと言っていた。それは会いたいであろう。向こうも心配しているだろう。それをすっかり失念していた
「そうだな、悪かった。そんな当たり前のことに気付かないなんて。分かった、じゃあ初めにそのおじいちゃんの所へ行こう」
「え、あ、ありがとう……ございます……」
堤ちゃんは目を見開き、驚きながらも少し嬉しそうに頷く。
「誠、準備出来たわよ」
俺は、下の階からの彩芽の声を聞き、堤ちゃんに「朝食終わったら来るから」と言って部屋から出た。




