俺天使になる。
その夜、遥はマリーに呼ばれた。
「ちょっと良いですか?」
遥は快く承諾し、招かれるように遥の部屋へ来た。
「あれ、ここ俺が使ってる部屋じゃ・・・」
「"自分の部屋"でお話した方が落ち着くです」
うん、そうね、と遥は返す。マリーはベッドに腰を下ろし少し撫でた。
「ここは、昔お父さんとお母さんが使ってた部屋です」
「昔?じゃぁ親御さんは・・・」
「死んじゃったです・・・・・・」
まずい事を聞いたと察した遥は瞬時に土下座の態勢を取ろうとしたが、マリーに
止められた。
「謝る位なら最後まで話を聞くです!」
遥が頷くと、マリーは笑顔で話し始めた。
「辛気臭いのは嫌いです。だから、笑顔で話すです」
「私が幼い頃、お父さんとお母さんは兄さんが居るからと二人で出掛けました。
後で見つかった手記によると、とても楽しい旅だったと書いてありました」
マリーの笑顔が段々歪んできた。それでもマリーは語り続けた。
「その帰り、だったそうです。お父さんとお母さんが歩いていると、急に馬車が飛び出して来て
お父さんとお母さんをー」
話の途中、ついにマリーは泣き出してしまった。
ベッドにすがってお父さん、お母さんと名を呼びながらすすり泣いていた。
(甘えたかった、って感じなのかな・・・ラノベ的には)
遥はマリーの頭を優しく撫でた。
「・・・ふぅ、マリーさん、もう泣かなくて良いよ。今は、俺が居るから・・・・・・」
その言葉にマリーは頭を上げた。
「今日は、一緒に寝るです・・・・・・」
「おk・・・」
翌朝、遥は神に叩き起こされた。
「起きて下さい、遥さん!」
「あ、あぁ・・・出発か」
「はい。早く起きて下さい。マリーさんが朝食を作って下さいましたよ」
「ん、そっか。分かった」
遥は素早く身支度を整え、マリーの朝食を食した。
「うん、美味しいよ、マリー」
「そう、遥」
二人が笑いあう中、ジャンが的確な突っ込みを入れた。
「いつから呼び捨てになったんだ?」
「ヒャッ!えと・・・まぁ、これで最後ですからね!もう俺達もさんを付けるような
仲じゃないと思うんで!ね!」
「じゃぁ俺もさん、は付けるなよ。ジャンで良いからさ」
「それじゃぁ、お兄さんと呼ばせて下さい!」
「は?」
ジャンが気の抜けた問いをするが、遥は何も答えず、朝食のパンを頬張った。
「これで・・・お別れですね」
「元気でな」
「いや、また来るさ。絶対に」
二人と握手をすると遥はその家を出た。
「とは言ったが、こっちにまた来れるよな?来れなかったら何回でも死んでやる!」
「うーん、大天上神様のお許しが頂ければ・・・今からこちらに迎えに来るので
その時お願いしてみましょうか」
二人は都から出て、人気の無い森に出ると、神は天を仰ぎ、大天上神を呼んだ。
すると、後光と共に大天上神が現れた。
「あれ・・・天津先輩!?」
「今度の大天上神様は元人間だった様ですね。遥さん、お知り合いですか?」
「俺の高校時代の先輩だ。なんでここに?」
そこにあったのは天津 朱鷺人の姿だった。
「前の大天上神様の銘を受けて、僕が後を継ぐ事になった。転生係の神様、荻君が天使になっても
高校へ行けるように、且つこちらの世界へ行く事が出来るように出来ますか?」
「あ、貴方様のお言葉ならば!」
神は緊張しながら言った。
「ありがとう。ところで荻君、君は学校へ行くんだ。僕が世界を作り直した後も、
きっと君の知っている学校は残っている筈だ。それを知る事が君の役目だ。
家に帰って親御さんに事情を説明し、学校へ行って誤解を晴らせ」
何故、と遥が聞くが、朱鷺人、否、大天上神は即答した。
「君が悩まず、苦しまず彼女と暮らせる為に必要な事なんだ。いつでも双方を行き来出来るように
するから、安心して行って来るんだ。良いね?」
「はい」
遥が頷くと、大天上神は遥に手をかざし、気を送った。
「さぁ、荻遥よ!今一度現世へ!」
「うわあああああああああ!落ちるううううううううううう!」