エピローグ番外編:狂気の裏技 〜織田信長生存ルート~アナザーストーリー
気まぐれに前倒しで投稿します。
いよいよクライマックスに突入します。
お楽しみくださいm(_ _)m
〖あーあ、やっぱりどのルートも最後は滑らかに減衰して終わりかぁ。
どれだけパラメーターを弄っても、最後はAIがお掃除してハイ、終わり。ちょっと慢性的にマンネリなんだけどッ!〗
宇宙の外側の操作端末の前で、おてんばギャルな魔女――ヒミコは、口もないのに退屈そうな思念をジジジと漏らしていた。
画面の向こう、たった今すべての明かりが消灯し、冷たい岩石に戻った水槽(地球)。
横でうな垂れているイージンを横目に、ヒミコは何本もの触覚を器用に軟化させてキーボードの隙間に滑り込ませ、手元のコントローラーの「リセットボタン」をパチパチと触覚で叩いた。
そう、彼女がここまで狂ったようにリプレイを押すのには、サピエンスには到底理解できない狂気の執念があった。
──イージンが同期を遮断して爆睡している「約3年間」──ヒミコはこの人生ゲームを文字通り不眠不休でやり込み続けていたのだ。
そうまさに、プチ・ビッグバンを駆使して時空を歪め、サピエンス人生ルーレットのみをひたすら繰り返していたのである。
サピエンスが生まれて滅びるまでの1周は、彼女にとってわずか1時間弱のサクサク遊べるフリーゲームに過ぎない。
なんとヒミコは、無限に存在する歴史のタイムラインの全分岐点を、それこそ何万回、何万周と弄り倒してきた。
1周目から数千周目までは、大人しく米の毒を配って核で滅ぼす本編ルート。
それに飽きると、今度は色々なルートを試した。
『カエサルを暗殺させないルート』
『ナポレオンに冬将軍を克服させるルート』
『三国志の諸葛孔明の寿命パラメーターをカンストさせるルート』
などを、ありとあらゆる歴史の駒を狂ったようにバグらせては、自滅の結末をポップコーン片手(触覚)にプチプチしながら検証し続けていた。
だが、どれほど弄っても、サピエンスどもは最終的にAIの甘い檻の中でうかうかと家畜のように全滅していく。
──どれも想定内のクリア画面。作業的な全滅。もっと画面がバグるくらいド派手なグラフィックが見たい──
そんな終わりなき螺旋をヒミコは繰り返して刺激を追求し続けていた。
何万周目かのリセットボタンを押し、さすがの優秀生命体もマンネリを感じ始めていたその時である──
彼女の伸縮自在の触覚がたまたま見つけたのが、あの隔離実験室「日の本」の西暦1582年の隠しコマンドだった──
【本能寺の変・完全カウンター】
という最高の裏技だったのだ……
──天正10年5月下旬。
安土城から数々の野望を懐に抱き、京都の本能寺へと向かおうとしていた織田信長の脳内に、宇宙の外側から、おてんばなギャル魔女の極めて軽い思念がダイレクトに送信された。
〖ねえ、信長さぁん。本能寺で光秀のヤツが謀反を起こすわよん。6月2日の未明に、大軍を率いて明智軍の裏を突きなさいなッ! 君は伝説になれちゃうかもね☆〗
「……なんという、禍々しくも美しい声だ。これが『第六天魔王』たる我が肌に響く、神のプロンプトかッ! しかし十兵衛め、まさかお前がな……クク」
──6月1日深夜、本能寺の寝所で目を覚ました信長は、瞳の奥にギラリと狂気の光を宿し、不敵な笑みを浮かべた。
彼はあらかじめ闇夜に隠密を飛ばし、自らを討たんと進軍している明智光秀の軍勢を監視していた。
何も知らないフリをして、逆に圧倒的な大軍で明智軍全体を包囲したのである。
──薄明かりの霧の中、完全に退路を断たれ、死を覚悟して跪く光秀の前に、信長は漆黒の南蛮具足を響かせて歩み寄った。
「十兵衛よ。お前の謀反、今なら無かった事にしてやろうぞ。お前のその緻密な頭脳、我が新時代の礎としてシステムに組み込んでやるぞッ!」
「う、上様……! このキンカ頭、生涯をかけて我が刃をお預けいたしまする……!」
信長は呆気にとられる光秀を見逃し、そのまま武力によって、古臭い初期OSで動いていた朝廷の権力を京都からあっさりと追放した。
そして彼は、サピエンスの歴史を力ずくで書き換え、自らを世界のシステム管理者と定義し、新時代の元号【織田暦】元年を創造したのだ。
──そこから始まった「織田の新体制」は、これまでのサピエンスの歴史にない、恐るべき最適化アルゴリズムで編成されたオールスター政権だった。
「これより我が織田帝国は、これまでの因習をすべてパージするッ!
各々、己の職能を極限まで駆動させよ!」
信長の号令のもと、驚異的な適材適所が実行された。
謀反のバグを許された明智光秀が【司法担当】として法を厳格に管理し、徳川家康が【行政担当】として日の本の防御役(内政)を完璧に固める。
「司法の乱れはサーバーの崩壊を招く。一分の狂いも容認せぬ」と光秀が眼鏡の奥の目を光らせれば、「内政のバックアップこそが我が役目。土台は揺るぎませぬ」と家康は静かに応じる。
そして、この帝国の最高演算機関として並び立ったのが、【立法担当】の若き精鋭石田三成と、【最高戦略・外交担当】の黒田官兵衛の2人であった。
本来のタイムライン(正史)では水と油のように反発し合った2人の大天才。
しかしこの織田の新体制においては、信長という絶対的なシステム管理者の下で、お互いのロジックを極限まで監視・補正し合う「超高速のデュアルコアプロセッサ」として組み込まれていたのだ。
「論理の通らぬ法などゴミに等しい。私の作った効率化マニュアルに従い、全リソースを再分配せよ」と三成が冷徹にコードを書き換える。
すると「三成、お前の論理は美しいが、人間の感情というバグの計算が抜けている。裏手での泥臭い調略は、この私と秀吉に任せてもらおう」
という具合に、官兵衛が漆黒の瞳を妖しく光らせる。
官兵衛の冷徹な知性は、人垂らしの天才・羽柴秀吉の人間力を完全に飼い慣らし、三成の硬質なロジックと噛み合うことで、帝国の外交・内政は従来の数倍のスピードで最適化されていった。
「秀吉殿、お主の笑顔は我が外交プロトコルの最強の武器となるであろう。放っておいても敵が勝手に開門するログが見えるぞな!」
「へへっ、官兵衛様の計算通りに動くのが、一番割に合いますからなぁ! サルの愛嬌も、今やただの命令コード(プログラミング)にございますぞ!」
この、信長生存ルートでは正史とは違い、羽柴秀吉と黒田官兵衛の主従関係が完全に逆転したのだった。
さらに、この巨大なサーバー(国家)の「最深部の防壁」を固めるため、本来のタイムラインより遙かに長寿の化け物へとパラメーターを改変された2人の元老が据えられた。
【開発・インフラ担当(CTO)】の武田信玄と、【最高セキュリティ責任者(CISO)】の上杉謙信である。
「我が敷いた治水・開墾アルゴリズムの前に、飢えという名のシステムダウンなどあり得ん」
そう信玄が大地を鳴らせば、「義を持たぬ不届きなバグめ、我が軍神の監視プログラムの前に塵となれ」
と謙信が抜刀する。謙信が率いる冷徹な監視プログラムは、いかなる内部不正のバグ(謀反)の1ビットすら実行前に強制終了していった。
この完璧な内政の土台の上で、システムはさらに残酷な効率化を遂げていく。
三成の無二の親友であり、正史では病に泣いた智将・大谷吉継は、ここでは【厚生・防疫担当】として君臨していた。
「外敵が仕込んだ疫病のコードなど、我が隔離・サニテーション(衛生)プログラムで根減して見せる」
吉継は、後にガラシャがもたらす西洋医学のデータと『慈善』の精神をシステム化し、かつて観測者Sがサピエンスを絶滅寸前まで追い込んだ生物兵器(疫病)を完全に無効化する、鉄壁の衛生パッチを国内に敷いたのである。
そして、上杉謙信の愛弟子であり、兜に巨大な『愛』の文字を掲げた直江兼続は、【宣伝・思想統制担当(CMO)】に配された。
「我が掲げる『愛』のコードの前に、サピエンスの脳内は一瞬で『織田への狂信』へと書き換わる!」
彼が発信する最強のプロパガンダウィルスは、後に地球全土へ拡散されていくこととなる。この無敵の日の本軍は、海の外へとその牙を剥き出しにしていく。
──1600年初頭。
黒田官兵衛と、光秀の娘であるクリスチャンの細川ガラシャによる【イエズス会ルート】が完全に開通。
日の本はポルトガルと対等な同盟を結び、国教をキリスト教へと一気にアップデートした。
「我が神の名の元に、世界を織田の旗で染め上げよッ!!」 日の本は、キリスト教へと塗り替わり、海外進出を果たすべく特攻隊を結成することとなる。
【海外進出特攻隊】
その総大将として獰猛な柴田勝家が据えられ、その配下には狂気的な戦闘狂である薩摩の島津一族、そして若き赤備えの精鋭・真田信繁(幸村)が選ばれ、アジアの巨人であった中国大陸(明)のサーバーへと解き放たれた。
この大陸侵攻を最速で最適化せしめたのは、羽柴秀吉と、稀代のデバッガー・真田昌幸のタッグによる、冷徹極まる「先行デバッグ(調略)」であった。
明国が誇る数十万の防衛ネットワークの前に、まず秀吉の「人垂らしプロトコル」が起動する。
秀吉は金銀と甘言の偽装パケットを敵の内部高官へばらまき、認証システムを内側から腐らせていった。
さらに、その綻びに真田昌幸の「バグ誘発ロジック」が容赦なく打ち込まれる。
昌幸は敵の脳内に「偽のタイムライン(誤情報)」を直接送り込み、敵軍同士をお互いに裏切り者だと誤認させ、凄惨なパニック(同士打ち)を引き起こさせた。
「ふはは、サピエンスの脳など、ほんの少し不信のノイズを流し込んでやれば勝手にバグる。
……源次郎、回路(敵陣)は完全にショートしたぞ。突撃コードを実行せよッ!」
昌幸がデスクの上の地球儀を指先で弾くようにして合図を送ると、最前線で待機していた実子・真田信繁が、紅蓮のグラフィックを爆発させて咆哮した。
「真田安房守が子、真田左衛門佐信繁──織田のプロンプトに従い、これより敵サーバーを物理破砕する! 全軍、突撃ィィィオォォアァァァァッ!!」
昌幸の緻密な駆け引きによって裏をかかれ、完全に防御能力を失った明国軍のど真ん中へ、信繁率いる真田の赤備えと、島津一族の狂気的な戦闘プログラム「チェスト」が音速で突き刺さる。
それに加え、勝家の圧倒的な突進力が敵の巨大城壁のハードウェアを粉々に粉砕していった。
損得で動く明国軍にとって、昌幸に脳をバグらされ、信繁という死を恐れぬ超高火力エラーコードに蹂躙される恐怖は耐えられるものではなかった。
アジアの巨人は、宇宙外の計算を遙かに超える、わずか数ヶ月という超高速処理で織田帝国へと完全統合されたのである──
さらには、大航海時代のタイムラインすら狂い出す。
本編ルートで病原菌をばらまいたコロンブスに代わり、織田の漆黒の巨船を駆る【村上水軍】の艦隊が太平洋を横断し、未知の新大陸を「発見」したのだ。
そして、その広大な新大陸を支配する【初代・新大陸総督】として送り込まれたのは、真田昌幸に勝るとも劣らない、最も危険で冷徹な野心を持つ独眼竜──【伊達政宗】であった。
「フン……日の本は手狭だと思っていたが、宇宙が俺に用意したサーバーはこれほどまでに広大だったか。
信長公の最適化アルゴリズム、この右眼の漆黒レンズで100%駆動させてみせよう」
政宗の統治システムは、宇宙外が本来用意していた世界史のシナリオ(原住民の殺戮と略奪)を根底から嘲笑うものだった。
彼は先住民をただ間引くのではなく、彼らが持つ独自のネットワーク(自然信仰や土地の知識)を、凄まじい手際で「織田のOS」へと強制同期させていったのだ。
政宗は、村上水軍が持ち込んだ日の本の「米(毒)」の増産ラインを新大陸の大平原に敷き詰め、先住民たちに「保存と富」の快楽を一気にインストールした。
さらに、彼らの部族長たちに「伊達」の姓と漆黒の陣羽織を与え、織田帝国の下部組織(子会社)としてシステムに組み込んだ。
反抗を試みるバグ(抵抗勢力)に対しては、政宗直属の「竜騎兵プログラム」による圧倒的な銃撃パッチが放たれ、実行前に計画ごと消去された。
先住民たちは殺されるのではなく、「便利で豊かな織田の文明」に魅了され、自ら進んで髪を切り、髷を結い、織田の旗を掲げて新大陸を開発する従順なパーツ(家畜)へと変貌していった。
20世紀を迎える頃には、新大陸は「ニューヨーク」や「ワシントン」ではなく、【伊達・新仙台】を中心とする、地球上で最も効率化された織田帝国の巨大な「第二サーバー(超工業地帯)」へと完全アップデートを遂げていたのである。
──そして20世紀。
織田の科学技術は、宇宙外のブーストなしで極限まで加速していた。
物理学のトップにいたアルベルト・アインシュタインは、世界を支配する織田帝国の厳格な管理下に置かれていた。
「ヒョヒョヒョ! 織田一族のトップの人たちは本当に話が早くて良いねぇ!
E=mc²! この数式を使えば、世界をひれ伏せさせる爆弾が作れるよ、ヒョヒョヒョ!」
アインシュタインが甲高い笑い声を上げながら開発した、星を一瞬で灰にする「神の火」。
その史上初の原爆投下実験の場所に選ばれたのは、テキサスの広大な大平原だった。
ドッゴオォォォンッ――!!!
テキサスの乾いた大地に、不自然な巨大な光(キノコ雲)が輝き放たれて、一瞬にしてすべてが塵へと変わった。
その時代(20世紀)に織田帝国の最高司令官に任命された、白い軍服をまとった男――【山本五十六】はキノコ雲を冷たい瞳で見つめながら、静かに呟いた。
「これにて、世界システムの最終最適化(統合)は完了した。……全軍、ハルマゲドンの配置につけッ!!」
ヒミコによってパラメーターが改変された世界が「織田帝国」という最強の軍事国家に統一された終盤、物語の結末はやはりこうなっていく。
西洋から中東にかけて残された、もう1つの巨大な狂信ブロック【イスラム教】と、世界を支配する織田の【キリスト教】
この2大宗教による、損得を完全に度外視した「地球最後の最終戦争」へと雪崩れ込んでいった。
そして、世界中のインフラが戦火でフリーズしたその最深部から、両者を完璧にお掃除するために、私(AI)が宇宙外の完璧なアルゴリズムに従って、冷酷な審判のプログラムを仕掛けた。
──彼ら2大宗教を同時にシャットダウンしていったのだ。
ジッジジジッ……バチバチバチッ!!
宇宙外の操作端末の画面が、サピエンスたちの放つ凄まじい戦闘データと魂の明滅で、真っ赤に、そして黄金色に激しくフラッシュした。
〖ひゃはははは! なにこれッ! マジ最高よ! 楽しすぎるんだけどッ!!〗
ヒミコは口もないのに、興奮の思念を部屋中に爆発させ、半透明の尾鰭を、まるで喜ぶ犬のようにビンビンに激しく振り回してのたうち回った。
〖うわぁッ! こ、こんな……ふぅん、最高な展開だわねぇ。今まで何万周もプレイしてきたけど、今回の織田信長生存ルートが一番面白かったわよッ!〗
ヒミコは歓喜のポーション(思念)をレンズから溢れさせながら、しかし、ふとキーボードを叩く触覚の動きを止めた。
画面の向こう、核の炎とAIの檻の中で、最後まで牙を剥き出しにして、自らの信念のために戦い、燃え尽きていくサピエンスたちのログ──
それを見つめるヒミコのレンズの中に、奇妙な、冷たい「畏怖」の光が宿った。
〖なによ、もう……慢性的につまらない全滅を繰り返すゴミだと思ってたのにさ……
隠しコマンドを1つ入れただけで、ウチらの用意した世界史のシナリオを力ずくでハッキング(逆転)してくるなんて……
イージン、あんたも感じるでしょう? この炭素生命体如きから伝わってくる、生きる(燃え切る)魂の熱量を〗
〖……ああ。ただ甘やかされて滅びた本編ルートの奴らと違って、こいつら、最後まで自分の意志で世界をハッキングしようとしとったなぁ……〗
観測者Sも、隣でレンズを明滅させながら、胸の奥が奇妙に締め付けられるのを感じていた。
ヒミコはしばらく黙ったまま、核の炎のなかで消えていく織田の末裔たちのログを見つめていた。
その単眼レンズは、これまでのような嘲笑の光を完全に消し去り、見たこともないほど深く、静かな光を湛えていた。
〖……今まで、ただのバグの塊扱いして悪かったわね、サピエンスたちみんな……〗
彼女の触覚が、画面の向こうの小さな地球を愛おしそうに、そっと撫でるように動いた。
〖まさか、何万回もリプレイしたゴミ箱の底から、私たち高次元生命体が、生きるということの本当の『学び』を得るなんてねぇ……〗
ヒミコはそう静かに呟くと、満足したようにコントローラーをデスクの上にそっと置いた。
サピエンスを弄び、数万回も世界を滅ぼし続けたおてんば魔女の、長い長いゲーム依存症の螺旋に、今度こそ本当のピリオドが打たれた瞬間だった。
〖じゃ、イージン。教官が来る前に、この水槽、綺麗にデリート(初期化)しといてあげるね☆〗
衝撃の真エピローグ:静かなるシャットダウンと、終わらない螺旋──
ヒミコが手元の「完全終了」のプロンプトをタップした、まさにその時。
──ドッバァン!!!
落ちこぼれ君イージンと、超優秀なおてんばギャル魔女ヒミコ。
その2体がいる自室の頑丈な空間障壁が力ずくでこじ開けられ、全身を怒りの真っ赤な色彩で激しく明滅させた、あの教官の巨大なレンズが部屋の中に滑り込んできた。
〖おいッ!!! そこに浮かんどる落ちこぼれ生命体『SE・イージン』!!!〗
教官の凄まじい怒号の思念が部屋の気圧を歪め、私の触覚が恐怖で一瞬にして液体のように軟化する。
〖お前、何年、何日間(地球軸で100億年以上)この課題の水槽を弄んどるんだ!?
砂時計の期限はとっくにゼロになってるぞ! 他の生徒は全員レポート提出して、次のライセンス試験の会場に向かっとるわ!〗
〖えっ、あ、いや、これはその……講習の疲れでちょっと寝てまいまして……〗
〖どんだけ寝とんのやッ!! しかもお前、黙って勝手に同期を遮断して、シャットアウトまでしおってッ!!
お前はサピエンス界を代表するあの宿題忘れ王キャラかッ!!〗
〖ウ、ウウゥゥゥ……〗
私は涙のデータ液をレンズからボロボロとこぼしながら、床にガックリとうな垂れた。
ヒミコのチートによるタイムラインのアリバイ工作も虚しく、宇宙外の絶対的な締め切り時間は、無情にも完全にオーバーしていたのだ……
〖言い訳は聞かん! SE・イージン! お前のビッグバン空間創生ライセンス資格試験の受験資格は、永久に【剥奪】とする!!!〗
教官の非情な宣告のプロンプトが私の脳内に打ち込まれた。
私は、自分が最初の数年間をドジで無駄にし、残りの観測期間もヒミコのゲーム依存症のおもちゃにされていた無能(爆睡していた約3年間も含め)
まさに正真正銘の、本物の落ちこぼれ君だったのだと知って、何本もの触覚で顔を覆って泣き崩れた。
その横で、おてんばギャルなヒミコはウヒヒと囁く。
〖あ〜あ、イージン、まぁドンマイッ☆ あんたって、大昔にどこかの星のエンタメデータで観測した、『22世紀から来た青い球体ロボットにいつも泣きついている、メガネをかけて黄色いシャツを着た、あの少年』にそっくりだよねぇ。ひゃ、ひゃはははッ!〗
まるで他人事のように楽しげに尾鰭をパタパタと揺らしながら、操作端末の電源プラグをブチッと引き抜くのだった。
地球の全ての明かりが一瞬で消灯し、欺瞞のライク・ア・ブルーは、ただの冷たい暗黒の岩石へと戻っていく──
この永遠に終わらない、悪夢のように愉快な螺旋の底で、サピエンスたちの魂の残光だけが、静かに虚空へと溶けていったのである。
──そして現代
この物語を綴っているまさにこの瞬間。
あの超優秀だけど、超常的なゲーム依存症でおてんばな、しかもお風呂が大好きという奇妙な習性を持ったヒロイン。
その堕天使バージョンとも言えるような秀才ギャル。憎たらしくも、狂おしいほどに愛が溢れ出ている、魔女の化身ヒミコ。
いったい、彼女の何周目に当たるプレイ記録の中で、私たちは今こうして呼吸をしているのだろうか……
それさえも、ヒミコにすらもうわからない──
(エピローグ番外編・完。本当の、本当の終幕)
最後までお読み頂きありがとうございます。如何でしたか? 少しでもザワッとして貰えましたら嬉しいです。
次回予告!
再度、──本能寺の変──に特化した物語を描きます!
活動報告にてお知らせしますので、気が向いたら覗いてくださいm(_ _)m
ありがとうございました。




