総帥、特許という名の「徳」を独占する~知財戦略は世界大戦の合図です~
読んでる人いないんじゃないか説
国立聖エルゼ学園の医務室。そこは今、原因不明の奇病『魔力枯渇症』に倒れた
エリート学生たちの呻き声で満たされていた。
症状は倦怠感、足のしびれ、そして心不全。宮廷魔導師たちは「古の呪い」だと騒ぎ、聖女エルゼは「浄化の光」を乱射しては、無意味に患者の網膜を焼いていた。
佐伯悠馬は、軍服の袖を捲り上げ、患者の一人の膝頭を診断用のハンマー(ショップ製)で叩いた。反応はない。
「……お母さん。異世界の『神秘の奇病』の正体は、精製された白米とパンに偏った、あまりに低レベルな栄養学の欠如でした。……いわゆる、重度の『ビタミンB1欠乏症』、江戸時代の脚気と同じです」
「兄さん! 呪いじゃなくて単なる『偏食』だったんすか!? どいつもこいつも、僕のプロテインを分けてやりたいくらい軟弱っすね!(野太い声での咆哮)」
『ピコーン☆ 悠馬くん、鋭い! 現代知識で「救国イベント」開始だよん♡』
「……了解。……ノア、ショップから『ハミルトン製・超高濃度ビタミンB1錠(アリナミンEX・異世界カスタム)』を。エルゼ、光の演出を止めなさい。視覚的なノイズが診断の邪魔です」
悠馬は、苦しむ学生たちの口内に、問答無用で黄金色の錠剤を放り込んでいった。
それは魔法ではない。ただの『栄養素の暴力』である。
数分後。
「……おお、魔力が……魔力がみなぎる!」「足のしびれが消えた! 走れる、走れるぞぉぉ!」
昨日まで遺書を書いていた騎士候補生たちが、突如としてマッスルポーズを決め、医務室の壁を突き破って校庭へ走り出していった。
学園中に響き渡る、「ありがとう、王子様!」の合唱。
【ピコーン! 徳:+20,000!】
【理由:五百年の難病を「現代知識」で根絶し、三千人のエリートの命を救ったため】
「……っ! 勝ちました。……負債の半分を返済。このキャッシュフローの改善速度なら、来月にはロンドンの地下鉄に乗れます」
悠馬は、懐から出した『Tescoのミントタブレット』を、勝利の味として噛み締めた。
だが、女神の「ざまぁ」は、常に複利で襲いかかる。
『あはは! 悠馬くん、おめでとう!☆』
女神が、今度は「軍事顧問」のような迷彩柄のドレスを着て現れた。
『君が配った「ハミルトン錠」があまりに効きすぎたせいで、各国の上層部が「これは戦場での限界を突破する『超人薬』だ!」って勘違いしちゃった☆ 今、隣国の帝国軍が、サプリのレシピを求めて国境に集結中だよん☆彡』
「……ただのビタミン剤を、軍事ドクトリンに組み込まないでください」
さらに、追い打ちをかけるようにノアが、血の付いた「宣戦布告書」を束にして持ってきた。
「兄さん! 大変です! 元気になりすぎた学園の騎士たちが、『この余った体力で、長年の宿敵だった隣国を更地にしてきます!』って、ハミルトンの社歌を歌いながら出陣しちゃいました!(野太い声)」
「……ノア。私は、ただ、彼らのQOLを改善したかっただけなのですが」
ピコン!
【警告:徳の「利子」が発生しました】
【理由:サプリメントが「世界大戦の火種」となり、推定10万人の死傷者が予想されるため】
【現在の徳:+20,000 → -80,000(予定)】
「…………なぜ、こうなった」
視界の端で、絶望の通知が赤く点滅する。
【読者満足度:10,000,000%(サプリメントから始まる世界大戦、これぞ異世界経営の醍醐味ww)】
【称号:『戦場の調剤師』『死を呼ぶサプリ王』が追加されました】
【現在の状況:帝国軍の暗殺部隊が『ビタミン剤の特許権』を奪うため、窓から侵入しようとしています】
「……女神。一つだけ、公式に抗議します。……私は、ただ、母さんの作った……あの、パサパサしたトーストが食べたいだけなんです……!」
『ダメ~☆ 今夜は「軍事境界線での、ハミルトン製サプリ利権・オークション」だよ♡ 頑張って、世界を落札(支配)してね!☆彡』
悠馬は、窓から侵入してきた暗殺者を、反射的に「極大魔法(睡眠)」で眠らせながら、静かに三錠目の胃薬を飲み込んだ。
ハミルトン総帥、異世界十六日目。
彼の「善意」という名の特許は、ついに人類を、健康なまま絶滅へと導こうとしていた。
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