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お前らはこういうのが好きなんだよな!!!!~佐伯悠馬、異世界で全部やらされる~  作者: 雪森蓮


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1/10

銀髪令嬢(中身:弟)と、全部盛り転生の始まり

とりあえず投下。

白い。やたらと白い。天井も、床も、壁も。境界が曖昧で、奥行きの感覚すら狂っている。吸い込む空気さえ漂白されているようで、肺に入っているのに現実感がない。


「……ここは?」


佐伯悠馬は呟いた。思考を切り替える。状況把握。前提整理。数秒前までの記憶を引き出す。三十二歳。ハミルトン・コングロマリット総帥。敵対的買収を幾度も成功させてきた冷徹な経営者。――その実態は、恋愛相談を母親に電話でするしかない、友人ゼロのコミュニケーション障害者。深夜のオフィスで、未処理の書類の山を前に心臓が「あ、これ無理」と音を立てた瞬間。そこまでだ。


「兄さん、死にました?」


隣にはノアがいた。五歳下の弟分。銀髪碧眼の整った顔立ち。ハミルトン伯爵家の後継者にして、悠馬を「兄さん」と呼びながら娯楽として扱う危険人物。


「まだ断定する材料が足りません」


「でも白いよ?」


「白いですね」


「これ、死後じゃない?」


「……可能性は高いでしょう。せめて母さんに一報入れたかった」


「じゃあ僕、悪役令嬢で」


「なぜですか」


即答だった。思考を挟む余地すらなかった。


「流行ってるじゃないですか。ざまぁして王子とハッピーエンド」


「君は男です。論理が破綻しています。それに私は独身ですが、母さんに『ノアくんが女性になって王子と結婚しました』とは報告できません」


ぱあん、と軽い音が響いた。


「ごめんねぇ~☆」


現れたのは、場違いなほど軽い声の女神だった。


「間違えちゃった♡」


「……はい?」


「本当は別の人を召喚するはずだったんだけど~、手元が狂って二人とも回収しちゃった☆」


「回収とは、我々の生命活動が停止したという理解で相違ありませんか」


「死んじゃったってことだね☆」


「そうですか。……損害賠償の請求先を教えてください」


「面白いこと言うね! その代わり異世界に転生させてあげる~☆彡」


悠馬は一度目を閉じた。情報整理。逃げ道の有無。リスク評価。


「……帰還手段は?」


「無理☆」


即答だった。


「ただし~」


女神がくるりと回る。


「徳を積めば帰れるようにしとくね☆」


その一言で、悠馬の思考が止まる。


「……本当ですか」


「ほんとほんと☆」


わずかに光が差した。


「特典で若返りもつけとくね☆ 三十代とか地味だし!」


視界に映る手は若い。関節の重みが消えている。身体機能が明らかに最適化されていた。


「最悪だ……」


「兄さん、異世界ですよ!」


ノアの目が輝く。


「全部盛りいきましょう! 悪役令嬢・ハーレム・無双・ざまぁ!」


「却下です。私は一般人で構いません」


「無理☆ 面白くないし☆」


女神が軽く笑う。


「悠馬くんは主人公ね☆」


「……帰るためなら、最低限の条件は受け入れます」


「じゃあ“徳ポイント”表示しとくね☆」


ぴこん、と音が鳴る。


【徳:0】【好感度:測定不能】【読者満足度:15%(地味すぎ)】


「あとこれ大事。満足度が下がると強制イベントね☆」


「メタを持ち込まないでください」


「じゃあ行ってらっしゃーーい☆彡」


落ちた。


風。土。草の匂い。感覚が一気に現実へと引き戻される。


「……」


悠馬は目を開けた。青い空。異常なほど澄んでいる。


「……一体、どうすれば……」


隣を見る。


いた。


銀髪碧眼の美少女。完璧な造形。非の打ち所がない。


「……ノア?」


「おおおー!!兄さん!俺、悪役令嬢だぜ!!」


声だけが完全にノアだった。


ドレスを豪快にまくり上げ、ガニ股で回る。


悠馬は空を見上げた。


「……お母さん」


【読者満足度:12%】


『チュートリアル開始~☆』


【強制選択:ヒロイン救出】


「却下します」


【タイムオーバー】


身体が動いた。意思とは無関係に。森の奥。少女が襲われている。助けるべき状況だと理解している。だからこそ最悪だった。


踏み込む。視界が加速する。魔法が自動展開される。剣が走る。盗賊は一瞬で制圧された。


「……私の対象に、触れるな」


言葉が勝手に出る。完成された台詞。最も合理性のない演出。


少女が頬を染める。


【極悪聖女・エルゼ:好感度200%】


「……やめてください」


空から声。


「いいね!」


ドゴォォォン!!


衝撃波。地面が揺れる。


【読者満足度:85%】


悠馬は立ち尽くした。腕に絡みつく聖女。はしゃぐ銀髪令嬢(中身:弟)。そして数値。


すべて現実だった。


「……採算が合いません」


【徳:+1】

【読者満足度:85%】

【警告:好感度が高すぎて、ヒロインが夜中に寝所に忍び込む確率が100%に設定されました】

【警告:夜間イベントの回避は不可能です】


それが結論だった。


青い空を見上げる。逃げ場はない。


「……やめてください」


佐伯悠馬、十八歳(中身三十二歳)。全属性魔法と制御不能な好感度、銀髪令嬢(中身:弟)と極悪聖女を抱え、彼は“読者満足度”という指標に追われながら、人生最大の赤字経営を開始した。


【読者満足度:86%(続きが気になる!)】


「……なぜこうなった」

週1回くらいで連載します。評価、ブクマ、感想いただけると励みになりますよそりゃあもう!

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― 新着の感想 ―
このシリーズを見るのは初めてなんですが、面白いです!
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