第46話 ジャンヌ革命2
困った時の外政
「うう······」
翌日、ジャンヌは地下牢にいた。アレスに軽くあしらわれ、スピード投獄されたのである。右も左も見れど、暗く何も見えない。辺りはシンと静かで、聴こえるのは水滴が水の集合体に垂れる音のみ。ただ、自身に手錠がかけられ、正面に一定の間隔で鉄の棒が突っ立っているのが分かる程度だ。
すると、コツコツ、と水でない音が地下に響き渡る。何者かが地上から階段伝いに降りて来る音だ。次第に鉄の棒の向こう側にある灰色の石壁が淡い黄色寄りのオレンジの光に照らされてゆく。その石壁の側には、ここへと続く階段が見られる。階下へ続く様子は見られない。恐らくここは最下層なのだろう。
「かねがね目にかけてはいたけれど。まさか、こんな形で対面する事になってしまうだなんてね」
暗闇から光を以て現れたのはシャトルーズグリーンのと白髪のツートンヘアー、藤色と金色のオッドアイ。片手から光を放っている。この国で、否、地上で知らぬ者はいない生ける伝説、魔術科学ローマギリシア帝国皇帝、イヴ。
「ふん!皇帝なんかが死刑囚になんの用なんだよ!」
「はあ、私もほんと嫌われてるものね。」と、イヴは肩を落とす。
「私は貴女に呼ばれたから来てあげただけよ?でないとこんな所そうそう来たりしないわ。」
「今さら来たって意味無いっつの!なに?皇帝さん自ら私を殺してくれるって?ウケる」
ジャンヌが挑発を放つが、イヴは眉一つ動かさない。ただ、左横に視線を向ける。
「安心して。そんな物騒な事はしないわ。今日はただ、貴女と1つ、取引をしにきたの。」
「取り引き?何さ、うちの財産と引き換えにこの薄狭いところから解放でもしてくれるって?」
「いいえ。そもそも貴女の実家が金持ちなのは私直々の支援のお陰よ?」
「は?え?マジ?」
「そんな事は置いておいて。······貴女、皇帝にならない?」
「は?············は?え?えっ、私が皇帝?からかってんなら殺すぞ」
「もう······仮にも貴族がそんな言葉使っちゃダメじゃない。それに、監禁されてる身でそんな事できる?取り引きする気あるの?」と、イヴは両腕でやれやれポーズ。
「な、なら。取り引きってんなら何を出せばいいんだよ!お前の奴隷になれとでも言うのか!」
「着目点は悪くないけど、この国で奴隷制度が廃止されているのは知っているでしょう?私が貴女から貰うのは拒否権。貴女は私から拒否権以外の権利を全て受け取って、貴女は私に対する全ての拒否権を失い、この大国の皇帝になるの。別に、悪い話じゃあないでしょ?」
ジャンヌは頭上にハテナを浮かべながらもウンウンと首を縦に振る。イヴはジャンヌのそれを肯定と受け取り、左頬を仄かに上げる。
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「ハアー、地上の空気って美味し!」と、ジャンヌは少し湿汚れたドレスを着たまま芝生に大の字で寝転がる。
後方、広い芝生広場の真ん中に、ポッカリと空いた四角い穴が見られる。
「知ってる?人間って自然に触れれば触れるほど雑菌や寄生虫を身体に宿すのよ?」
地下牢へ続く階段からイヴが日の目を見ながらジャンヌを嗜める。
「うげっ!それを先に言ってくれ気持ち悪い!」と、ジャンヌは朝起きの軍人のように飛び上がる。
「そういえば貴女、その左耳に着けてるのは何?」
ジャンヌの、白い花のデザインの施されたイヤーカフスを見るなりイヴは軽い好奇心を覚える。
「ああ、これっす?イゼパっつってね······そうだ、記念に」と、ジャンヌはイヴの背中に右手を回し、パシャリと音が鳴る。
「ええ?今何をしたの?」
「皇帝とエンカなう、っと。」と、ジャンヌは空中を両手でポチポチする。
「イヴっちは箱庭だから知らないんだっけ?ジパングで流行ってるアラブルコンピュータってやつ」
「ちょ、ちょっと待って。どうしてジパングで流行ってる科学製品を貴女が持ってるの?私が言うのもなんだけど、違法なのよ?それ」
「違法ったって、確かに誰も使ってないけどさ。ヘンテコなやつがくれたんだよこれ。これ使って皇帝を暗殺しろって」
「え?ヘンテコ?な、何か名前は言ってた?もしかして、アドナイって言ってなかった?」
「アドナイ様あ······じゃないけどさ。ただ、
······ラプラスって、言ってたよ」と、ジャンヌは左の空へと、眼球を動かす。
誰か翼をください




