プロローグ
夜霧さんとの合作にござる
みら〜い未来、ある火星にお兄さんとお姉さんが居ました。
お兄さんは
(今日は久し振りにイヴにちょっかいかけるか)
と、邪悪な笑みを浮かべながらその日の予定を直感で決め、
お姉さんは
(今日はアダムが襲来しそうな気がするし、自室に篭もりましょうか)
と、そそくさと図書室から本日読む用の本を自室へ運び始めました。
愛しのイヴが普段居る図書室へ赴いたアダムは自身が無駄足を運んだ事に気付き少し苛立ちを覚える。
次に赴いたのはイヴが「ここはワタシの部屋ですので半径138億テラメートル以内に入る事を禁じます」と勝手に宣っていた小さな、質素とも言えるルームである。
イヴはとにかく近づくなと言っていたが頭の悪いアダムはそれがイヴの照れ隠しだろうと都合よく自己解釈するのである。
アダムはその部屋を幾度か見た事があるが、いずれもイヴが自室として使うと決める以前の事だ。
イヴは自室にて微笑む。
それは、本を読んで、という事ではなく、アダムの頭の悪さの事を思い出しての事である。
アダムのその怪力と頭の悪さを一番に身に染みて理解しているイヴがただの部屋を自室とする筈が無い。
イヴが選択したのは"シェルター"である。
勿論ただのシェルターではない、"人類という種を未来永劫残す"というモットーの元に作られた数ある作品の1つなのだ。
そして今回利用している機能の1つが物理ダメージ遮断のバリアである。
万物を破壊するアダムは其れを鼻で笑っているが、それはただ頭の悪いアダムが実際にその性能を見た事がないだけだったのだが。
早速、扉の方で大きな音を鳴らしながらアダムが何事か大声でほざいている。
(そういえば音も振動だったな)
と思いながら振動影響遮断の機能を使おうと満足気な笑みを浮かべながら椅子から立ち上がるイヴだが次の瞬間それは叶わない事となる。
アダムが地団駄を踏んだのか大きな地震が起きたのだ。
知能特化型であるイヴは、当然その振動に耐えきれず、立つこともままならなくなる。
部屋その物は無傷であるが、その内部にあるタンスや研究キットなどが大きく揺れ、上に積み重ねていた物がイヴに向けて落ちてきたりと被害はそれなりと大きい。
あまりにもの自身の詰めの甘さに悔いるイヴだったが、頭上から一際大きな物が降ってきた事により意識を失う事となる。
ゴトンゴトンと黄色の無機物がイヴの頭から床へ転がり落ちる。
そして、無機物は機械的な音声の割には嬉々とした様に
――――ローマ時代へ移行します――――
と、告げるのであった。