空と海中の魂鎮歌
「何、ハルゼー艦隊が全滅しただと!」
上空直掩機が空母ホーネット上空を激しく飛び回る。
米国の”鉄壁の輪形陣”で堂々と構えていたが突如、一隻の駆逐艦が水柱を上げた。
「何があった!報告はまだか!」
キンメルは冷静にと自分を抑え込もうとした。
何せ、米国の鉄壁と言われた輪形陣を掻い潜って攻撃するなどあり得ない筈だが
日本軍は既にハルゼー艦隊を全滅させたのだ。
「駆逐艦ギアリング被雷、中破なれど航行に問題なしとのことです」
キンメルは対潜警戒を十分にさせると速度を上げ、ジャービス島方面を目指した。
途中怪電波を拾い解析すると
今は亡きハルゼー艦隊の直掩機からの無線であった。
「我、日本機と交戦するも速度が速く味方が羽虫のように落とされている。
敵はキンメル艦隊に向けて進路をヵェ...―――」
それ以降は音が途切れてしまって解読は不可能であった。
「直掩機は全周探査!鳥の一匹も見逃すな!全艦、対空戦闘用意!
駆逐艦”ジャイアネット””ケネス”でホーネットのサイドを固めろ!」
そして、遥か上空から管制機”暁”が逐一情報を川村機動部隊へ送っていた。
更に、水面下でもキンメル艦隊を狙っていた。
[敵機発見]の報を聞き少し安心したキンメル艦隊であったが、水中では
”龍の狩り作戦”とは別の作戦行動が行われていた。
総数8隻のイ3001潜水艦がキンメル艦隊を囲むように配置されていたのだ。
また、管制機からの情報は逐一送られ徐々に空母へと的を絞っていた。
「よく狙え、酸素魚雷だが位置を知られるのは不味い。」
管制機から発射の合図が下り、一斉に魚雷が放たれた。
航跡を引かずに忍び寄る魚雷に米軍はこれから悩まされ続けるのであった。
空母ホーネット後部に三発の魚雷が命中、前部からは二発が命中した。
両隣を固めていた駆逐艦”ジャイアネット”は魚雷7発を浴びて轟沈、
ケネスは2発命中で航行不能となっていた。
ホーネットは航行不能となったものの、ダメージコントロールが成功し首の皮一枚で
水平を保っていた。
しかし、それを嘲笑うかのように150発以上の熱源探知誘導噴進弾が
空母1重巡7軽巡4駆逐13に降り注ぐように命中した。
対潜体制に切り替え、直掩機に対空を任せたのが失敗であった。
ワイルドキャットは防御力に優れていたが日本機は時速850kmと柔軟な機動、
三十ミリ機関砲四門により粉砕していたのだ。
それにより戦意を喪失したワイルドキャットが続出し、各自散開していた。
ホーネットは弾薬庫と大火災により爆沈、重巡クリーブランド以下重巡6隻
大浸水により総員離艦、駆逐艦は防御力の無さにより13隻すべて沈没、
軽巡も大火災発生により総員離艦が行われた。
米国では、続戦派の勢いが急激に弱まった。
しかし、有色人種と実質的な敗北的講和は受け入れたくなかったのである。
そして、山本は新たな手を打った。
それは、英国との会談であった。
山本はチャーチルと会談をする為”プリンスオブウェールズ”の入港している
シンガポールのセレター湾に来ていた。
「私が海軍司令長官、山本五十六だ。」
葉巻を吸い、威圧的な態度を露骨に示すチャーチルであったが、山本の一言で
態度が変わった。
『”最初に言わせてもらう。貴方方の英国海軍は我々の戦艦にとって恐れるに足らない。”』
山本の目線はチャーチルの後ろにそびえたつ”プリンス・オブ・ウェールズ”に向けられていた・・・。
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