満身創痍!ハルゼー艦隊
”山本より川村へ、龍炎を吐きつつ獲物を狩れ。
龍には肉付けを頼む。
開始は貴官に任されたし”
「川村司令長官、龍の狩り作戦ですが、”肉付けを頼む”とは一体何でしょうか。」
中村は電報を何度も読み返したが答えが出ない。
「肉付け、今の零龍は裂弾しか搭載していないが、今回は特別に肉をつけろ、と言われておるのだ。
肉とは貴重な物、この赤城に少量しか積まれていない兵器は?」
「熱探知誘導噴進弾ですか!」
川村は豪快に笑うと
「そういうことだ。
そして、龍が狩りをするのは手前のハルゼー艦隊ではなくキンメル艦隊だ。
”龍炎を吐きつつ獲物を狩る”というのはハルゼー艦隊には裂弾、熱探知誘導噴進弾はキンメル艦隊だ。」
川村は説明を終えると全艦に向けて《発艦始め》と打電した。
既に先遣の零龍はハルゼー艦隊の北西50kmまで迫っていた。
「電探照準爆撃用意!」
時速700km高度5000mを高速で移動する飛行物体を米ハルゼー艦隊は捉えた。
「キンメルからは”常識で判断しろ”と言われたからな。
それよりまだ日本艦隊は見つからんのか!」
ハルゼーは怒りに満ちていた。
日本艦隊を見つけることが出来ず、また日本の偵察機の素早さに怒り心頭であった。
「ハルゼー司令長官!
未確認機約40機余りが我々に接近しております!」
「何、距離は」
「北西50km、高度5000mを推定700kmで飛行しております」
ハルゼーは驚きを隠せなかった。
「ふ、ふざけたことを言うな。
700kmで飛行する戦闘機など、あの日本の偵察機でも600km―――」
ハルゼーは一瞬のうちに顔が青ざめた。
得体のしれない日本機に恐怖を現し始めたのであった。
「上空直掩機は一機残さず敵機の迎撃に向かえ!」
焦りから生まれたこの判断ミスにより、艦隊がどうなるのかは後々分かるであろう。
そして、12月9日”龍の狩り作戦”が開始された。
「全機、管制機”暁”の指定目標に電探照準を合わせろ!」
上空管制機”暁”は高度な電子機器を乗せ精密な暗号を制作、敵の暗号を解読することができる。
また、攻撃目標の指定、空域の安全の確認、精密誘導などが可能な情報戦に特化した航空機であり
またこれは、山本が考え出した物であった。
「裂弾投下後、全速力でキンメル艦隊に向かう!」
爆弾の安全装置を解除し、レバーを引く。
投下された爆弾は時限信管が作動する時間まで降下し、大量の子爆弾を撒くことにより
敵艦の対空能力を失わせるための兵器である。
一斉に降り注ぐ子爆弾は空母1隻重巡4軽巡2駆逐10の対空火器を無効化せしめた。
空母は業火に焼かれ、駆逐艦では火達磨になった乗員が海に身投げし
重巡洋艦では必死の消火作業が行われていた。
延々と燃え続けるエンタープライズと各艦艇は散開しながら徐々に統制が取れなくなり
駆逐艦と軽巡洋艦が衝突、駆逐艦沈没、軽巡洋艦は航行不能となっていた。
この際、軽巡洋艦アトランタを除いた艦艇の電探は全て破壊され
駆逐艦3隻は主機を破壊され航行不能に陥り
軽巡一隻は弾薬庫に誘爆し爆沈、多数の死者を出した。
海面に漂う重油と多数の乗組員を艦橋から見下ろすハルゼーは彼らに向かい敬礼をすると
言い訳をするかのように
「おのれ日本軍め!今に見ていろ!」
と悔し紛れにうめき声を上げる。
しかし、それでも未知の攻撃機が過ぎ去り安堵していたハルゼーだったが
再度の攻撃がエンタープライズを襲う。
既に対空戦闘能力は喪失しており、満身創痍の状態であったハルゼー艦隊は
もはやレシプロ機すら落とすことは出来なくなっていた。
「北西30km先に敵機多数接近、数は100以上...」
そして、ハルゼー艦隊全滅の報はキンメル艦隊に届いたのであった。
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