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カイロスの覚醒  作者: レオン


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第一章 兄妹の契約

この作品は、ホラーコンテストに参加するために書き下ろした特別作品です。

本作は、私のオリジナル作品『黒き天使(Anjo Negro)』と同じ世界を舞台にしています。

レオンやリー、そして他の登場人物たちについてもっと知りたい方は、ぜひ本編『黒き天使』も読んでいただければ嬉しいです。

今回は、自分自身への挑戦として、普段とは違う「ホラー」というジャンルに挑戦しました。

そのため、本作は『黒き天使』とは独立した物語としてお楽しみいただけます。

少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

どうぞ最後までお楽しみください。

挿絵(By みてみん)エクスプリア人の文化は、「約束」の上に築かれていた。

他の種族が力や富、あるいは影響力によって指導者を選ぶ一方で、エクスプリア人は文明の安定は家族同士が結ぶ契約によって支えられると信じていた。

結婚もその一つだった。

それは単なる二人の結びつきではない。

同盟。

契約。

何世代にも受け継がれる誓いだった。

だからこそ、ララは生まれたその日から、すでに定められた運命を持っていた。

約束された結婚。

誰一人として破ろうとしなかった伝統。

――今までは。

リーの部屋

朝の柔らかな光が、小さな窓から差し込んでいた。

リーはドアに背を向けて立っていた。

ベッドの上には開いたリュックサック。

彼は軍人のような正確さで荷物を整理していた。

水。

エネルギーカプセル。

工具。

小型の緊急用武器。

どれ一つとして意味のない物はない。

どれ一つとして、決められた場所から外れていない。

リュックのファスナーを閉めた、その瞬間。

空間がわずかに歪んだ。

まるで真夏のアスファルトの上に揺らめく陽炎のように。

そして、一人の少女が姿を現した。

ララだった。

彼女は転移能力を使い、部屋の中央へ現れる。

その瞳は赤く染まり、

涙はまだ頬を伝っていた。

彼女は何も言わず、

まっすぐ兄のもとへ歩み寄ると、

強く抱きしめた。

「リー……」

声が震える。

「私……結婚したくない。」

抱きしめる力が強くなる。

「相手のことも何も知らないの……。」

彼女はうつむいた。

「お母さんと話して。お願い……助けて。」

リーは数秒間、黙ったままだった。

やがて、小さくため息をつく。

「一つだけ答えてくれ。」

ララは顔を上げた。

「今まで、この伝統に疑問を持ったことはあったか?」

彼女は答えなかった。

「お前も母さんも、ずっとエクスプリア人の伝統を守るべきだと言ってきた。」

リーは腕を組む。

「じゃあ、どうして今になって違うんだ?」

彼の視線はさらに鋭くなる。

「正直に答えろ。」

しばらくの沈黙。

そして、リーは静かに尋ねた。

「……レオンのせいか?」

ララの体が固まった。

心臓が大きく鼓動する。

彼女はすぐに視線を逸らした。

「そ、そんなことじゃない。」

「ララ。」

「知らない人と結婚したくないだけ。」

リーは片眉を上げる。

「案外、いい人かもしれないぞ。」

ララは腕を組んだ。

「嫌。」

「明日になれば分かる。」

「嫌。」

「ララ……。」

彼女は拳を握りしめる。

「お願い。」

静寂が部屋を包む。

そしてリーは口を開いた。

「お前が正直に話してくれないなら、助けることはできない。」

彼はララを指差した。

「あの日の約束、覚えてるか?」

ララの目が大きく見開かれる。

その瞬間――

記憶がよみがえった。

約束

数年前。

ララはまだ十代の少女だった。

彼女の周りにはケーブルやコンピューター、

分解されたホログラム端末が散らばっていた。

そんな中、

任務から戻ってきたリーを見つめる。

傷だらけで、

疲れ切っていた。

それでも、

誰もが彼を称賛していた。

ララは腕を組む。

「どうしてお母さんは、お兄ちゃんのことばっかりなの?」

リーは瞬きをした。

「え?」

「私だって役に立ちたい。」

彼女は自分を指差す。

「任務にも行きたい。」

「訓練もしたい。」

「強くなりたい。」

「みんなに必要とされたい。」

リーはしばらく妹を見つめていた。

そして、優しく微笑む。

「お前の方が、俺より得意なことがある。」

ララは驚いた。

「え?」

「技術。」

「コンピューター。」

「システムへの侵入。」

「情報収集。」

「その全部、お前の方が俺より上だ。」

ララは言葉を失った。

リーは小さな装置を取り出した。

特殊なデータドライブだった。

それをララに差し出す。

「これがお前の最初の任務だ。」

ララの目が輝いた。

「任務?」

「ああ。」

リーは微笑む。

「ある人物について情報を集めてほしい。」

「見つからずに。」

「痕跡も残さずに。」

「できるか?」

「もちろん!」

数日後。

ララは何時間も監視カメラを確認し、

通信を傍受し、

報告書を分析し続けた。

そして、ついに見つける。

一人のエージェント。

その男は陰でローラの悪口を言い、

さらに重要な任務を放棄していた。

ララはその証拠をすべて記録した。

そしてリーのもとへ持っていく。

結果を待ちながら。

リーは映像を最後まで見た。

静かに笑みを浮かべる。

そして、

ララの頭にそっと手を置いた。

「よくやった。」

ララは満面の笑みを浮かべた。

「じゃあ……合格?」

「大合格だ。」

リーはララを指差す。

「今日から、お前は組織の中にいる俺の目だ。」

ララは言葉を失う。

「いろいろ教えてやる。」

「小遣いも渡す。」

「そして、お前を信頼する。」

少し間を置いて、

リーは続けた。

「ただし、一つだけ条件がある。」

「何?」

「俺たちの間に嘘はなしだ。」

ララは手を差し出した。

「約束?」

リーはその手をしっかり握る。

「約束だ。」

現在

ララは現実へと引き戻された。

再び瞳に涙が浮かぶ。

あの日のことを、

彼女は今でも鮮明に覚えていた。

あの約束を。

あの信頼を。

あの誓いを。

だからこそ、

リーには嘘をつけなかった。

ゆっくりとうつむき、

深く息を吸う。

そして、

ついに口を開いた。

「……分かった。」

リーは何も言わず、

静かに彼女を見つめている。

「私……彼のことが好き。」

部屋が静まり返る。

「お母さんが、彼の前で結婚の話をしたの。」

ララは目を閉じた。

「すごく恥ずかしかった。」

一筋の涙が頬を伝う。

「たぶん……わざとだったんだと思う。」

リーは静かにため息をついた。

予想していた通りだった。

「できることはやってみる。」

その言葉を聞いた瞬間、

ララは勢いよく顔を上げた。

「本当に?」

「ああ。」

リーは落ち着いた声で答えた。

「でも、その昼食会には出るんだ。」

ララの笑顔が消えた。

「リー……。」

「行くんだ。」

彼は静かにララを見つめる。

「所長は俺たち家族を受け入れてくれた。」

「その厚意を無駄にはできない。」

ララは小さくため息をついた。

「お母さんは?」

「母さんと喧嘩はするな。」

リーは窓の方へ歩いていく。

「母さんは約束を守ろうとしている。」

「やり方は間違っているかもしれない。」

「それでも、約束を果たそうとしているんだ。」

ララは何も言わなかった。

すると、

リーが思いもよらないことを口にする。

「それに……。」

「俺は、お前がエクスプリア人と結婚するのも嫌だ。」

ララは驚いて目を見開いた。

「えっ?」

リーは腕を組む。

「昔から信用していない。」

「礼儀正しく見える。」

「知的にも見える。」

「上品にも見える。」

「でも、多くの者はクリザード人と変わらない。」

「違うのは、自分では手を汚さず、他人にやらせることだ。」

ララは思わず笑ってしまった。

「政治が嫌いだから、そんなこと言うんでしょ。」

「その通りだ。」

レオンの部屋

数分後。

リーはドアをノックした。

「レオン。」

ドアが開く。

レオンは床に座っていた。

膝の上には聖書が開かれている。

目を閉じ、

静かに祈っていた。

リーは数秒間、その姿を見つめる。

そして口を開いた。

「母さんが昼食に来てほしいって言ってる。」

レオンはゆっくり目を開けた。

穏やかな瞳。

しかし、

どこか遠くを見つめているようだった。

「やめておいた方がいいと思う。」

リーはすぐに察した。

「心を鍛えてるのか?」

「うん。」

「なるほど。」

リーは静かにうなずいた。

「今夜は厳しい訓練をする。」

レオンも小さくうなずく。

「分かった。」

リーが部屋を出た、その時だった。

ほんの一瞬。

窓ガラスの反射に、

何かが映った。

まるで影が、

こちらを見つめているようだった。

しかし、

次の瞬間には消えていた。

リーは眉をひそめる。

まだ知らなかった。

それが――

本当の悪夢の始まりにすぎなかったことを。

第一章・終わり



第1章を読んでいただき、本当にありがとうございます。

この物語は全12章を予定しています。

更新は、毎日2話ずつ公開していく予定ですので、ぜひ最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

もし作品を気に入っていただけたら、ぜひ感想や評価をお願いします。

皆さんからのコメントや評価は、作者にとって何よりの励みであり、創作を続けるための大きな力になります。

それでは、第2章でまたお会いしましょう。

ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
この物語は『ブラックエンジェル・ユニバース』の第1シーズンが舞台ですね。とても良かったです。ただ、カイロスと向き合う展開は少し早かったように感じました。それでも、とても面白かったです。これからも応援し…
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