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組織的異世界転生〜終末の魔女を救う為、呪われ姫は夢洲に仕掛けをしました〜  作者: たりな
第四章 受け継がれた使命

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 夜明けの光が、草原を黄金色に染めていた。


 白馬の蹄が湿った土を踏みしめる。

 王都を離れて半日。

 少女は何度も後ろを振り返った。

 もう王城は見えない。

 帰る場所は、ない。

 胸に抱えた古びた手帳だけが、自分とこの世界を繋ぐ唯一の手掛かりだった。

 その少し後ろを、2頭の栗毛馬がゆっくりと続いている。

 手綱を握る一人は女剣士だった。

 丸みのある頬と健康的な体格。

 大きな瞳が印象的で、どこか親しみやすい笑顔を浮かべている。

 美人ではないが、ふっくらとした優しい雰囲気を持つ女性だった。

 腰には一本の長剣をさしていた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

 女は柔らかく笑う。

「私はリーナ」

「王命で、あなたの護衛を務めます」

 少女は軽く頭を下げた。

「よろしくお願いします」

「こちらこそ」

 リーナは笑った。

「……でも、本当は護衛より得意な事があるんですけどね」

 照れ臭そうに頭を掻く。

「食べることの方が得意です」

 少女は思わず小さく笑った。

 その笑顔を見て、リーナも安心したように笑う。

 その様子を見ていた初老の男が鼻を鳴らした。

「まったく、お主は食べる事しか考えておらんな」

「だが、その体型のおかげで女でも奴隷になる事を免れたのだから……分からんものだな」

 リーナは苦笑する。

「ガレス殿……それを言わないでください」

 少女は男を見る。

「あなたは……?」

「かつてハルキ殿と剣を交えた仲です」

 少女は息を呑む。

「敵……だったんですか?」

 ガレスは首を振った。

「親友でした」

 その一言で心が落ち着いた。

 アマギはミライがカリメア帝国へ旅立つ際に条件を付けていた。

 二人の信頼できる護衛を連れていく事を。


 アマギ王が彼らを同行させた理由が少女にも良く分かった。

 ハルキを知る者。

 誰よりも信頼できる者。


———


 三人は昼過ぎ、海岸沿いの断崖へ辿り着いた。


 その先には港町が広がっている。

 しかし。

「……思った以上ですね」

 少女は息を潜めた。

 港には帝国旗が無数にはためいていた。

 鎧姿の兵士。

 見張り台。

 海上を巡回する軍船。

 逃亡者を防ぐため、港全体が要塞のようになっている。

 ガレスが静かに言う。

「王都より警戒が厳しい」

 海を見渡すリーナの表情も引き締まる。

「正面突破は無理ですね」

 少女は小さく呟いた。

「さて……どうしましょう」

 ガレスは港ではなく、そのさらに西を見つめた。

 海岸線の向こう。

 交易船が何隻も停泊している。

「目的地を変えましょう」

「え?」

「ここからカリメアへ直接向かう事は不可能でしょう」

「ならば」

 彼は地面へ地図を広げた。

「まずはダカーナ連邦へ渡りましょう」

 少女が地図を見る。

 パンジャ王国。

 ダカーナ連邦。

 そのさらに北西。

 巨大な国土を持つカリメア帝国。

「ダカーナはカリメアと友好国」

「交易も盛んです」

 リーナが説明を続ける。

「だから逆に、人の出入りは多い」

「商人も旅人も奴隷商も毎日行き来しています」

「そこへ紛れ込むんですね」

 ガレスが言った。

「ええ、陸路なら検問は多いですが、人も多く通ります」

 少女は静かに頷いた。

「……分かりました」

「ダカーナ連邦へ行きましょう」

 自分が何者なのか。

 なぜこの身体へ宿ったのか。

 まだ何一つ分からない。

 それでも進まなければならない。

 理由だけは、魂が知っていた。

 その時だった。

 胸元へ抱いた手帳が、小さく温かくなる。

 少女は驚いて取り出した。

 古びた革表紙。

 ミライが残した日記。

 ページが風もないのに、ひとりでに開く。

 そこに記されていたのは、たった一行だった。


………


 東へ。光を追いなさい。そこで、あなたは運命と再会する。


………


 少女は息を呑んだ。

「どうしました?」

 リーナが覗き込む。

 しかし、その文字はもう消えていた。

 少女だけが見た幻のように。

 彼女はゆっくりと東の空を見上げる。

 雲一つない青空の向こう。

 誰も知らない世界で、新たな命が静かに目覚めようとしていた。

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