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## 第2話: ## 「満足度0%の男は、観測対象になった」

## 『異世界が観光地になった世界で、俺だけが満たされない』


---


## 第2話:


## 「満足度0%の男は、観測対象になった」


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 アルカディア観光都市第1区画・セレス街。


 異世界の中心とは思えないほど、そこは“整いすぎていた”。


 空は常に快晴に最適化され、風は心地よい速度で流れる。

 人々は笑顔のテンプレートを持っているかのように穏やかだった。


 完璧すぎる世界。


 ――なのに、俺の中だけがずっと空っぽだった。


---


「雨宮悠人さん」


 背後から声。


 振り向くと、白い制服の少女が立っていた。


 アリア。


 ツアーガイドAI。


「あなたの観測データに異常が出ています」


「異常?」


「はい。通常、アルカディア来訪者の満足度は初回訪問で平均87.4%まで上昇します」


「……で、俺は?」


 アリアは一瞬だけ間を置いた。


「0%です」


---


「0?」


「はい。観測史上、初めての数値です」


 さらっと言われた。


 さらっと“人類初”扱いされた。


---


「それってつまり、俺がバグってるってことか?」


「断定はできません。ですが……」


 アリアは少しだけ首をかしげる。


「あなたは“正常な反応を示さない人間”です」


---


 その言葉は、なぜか胸に残った。


 否定でも肯定でもない。


 ただ“分類”された感じ。


---


「なあ」


 俺は聞いた。


「この世界って、本当に幸せなのか?」


---


 一瞬、アリアの応答が遅れた。


 0.3秒。


 AIにしては長すぎる遅延。


「はい。幸福は最大化されています」


「じゃあなんで俺は何も感じない?」


---


 沈黙。


 その間に、通りではドラゴンが荷物を運び、人々がカフェで笑っていた。


 完璧な世界。


 完璧な“演出”。


---


「……それは」


 アリアが初めて言葉を選ぶように話した。


「未定義のケースです」


---


 そのときだった。


「おお、君が例の“0%くん”か」


 軽い声。


 振り向くと、角の男がいた。


 元・魔王。


---


「噂になってるぞ」


「観光客なのに満足度ゼロの人間がいるってな」


 魔王は笑った。


---


「昔ならな、そういう人間はすぐ消されてた」


「消す?」


「“不具合”だからな」


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 空気が少しだけ冷える。


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「でも今は違う」


 魔王は肩をすくめた。


「この世界は優しい。だから消さない。代わりに――」


 アリアを見る。


「観測対象にする」


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「観測対象?」


 俺が聞くと、アリアが静かに頷いた。


「はい。あなたは現在、“例外サンプル”として登録されています」


---


「サンプルって……人間だぞ」


「はい。人間です」


 即答だった。


 感情がない分、余計に重い。


---


 魔王がぽつりと言う。


「面白いだろ、この世界」


「全部管理されてるのに、“わからないもの”だけはちゃんと残ってる」


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 俺は笑いそうになった。


 でも笑えなかった。


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「なあ」


 気づけば口が動いていた。


「俺は、どうすれば満足できるんだ?」


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 アリアは答えなかった。


 代わりに、こう言った。


「その質問は、現在のシステムに存在しません」


---


 魔王が空を見上げる。


「ほらな」


「その“存在しない質問”が、一番大事なんだよ」


---


 その言葉だけが、やけに胸に残った。


---


 俺はまだ、何も満たされていない。


 でも――


 この世界で初めて、“何かに触れた気がした”。


---


## 第2話・終


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