【幕間】【ララ視点】サラに近づくな!
いよいよ契約だ。
ララは、サラの前の子が部屋から出ると、静かに部屋の中に忍び込んだ。
サラとこれからも一緒にいるため、何としても上手くやらなくては。ララは強く決心していた。
お、好物がたくさん置いてある机がある。ララは吸い寄せられるままに身を委ねる。
机の上にたむろした、たくさんの同族の姿に顔をしかめる。ララはあまり同族が好きではない。
忘れもしない、ララの記憶が始まった日。わけもわからず突然目覚めたララを、ひっかき、突き飛ばし、寄ってたかっていじめてきたからだ。
実はそれはたまたま森にいた悪い精霊で、他の精霊はそんな意地の悪いことはしない。しかし、出不精で目覚めてこのかたサラに引っ付いて暮らしていたララは、そんなこと知る由もない。
とにかく、ララは同族が嫌いだったので、全身全霊で威嚇した。
ララはサラが好きだ。目覚めてわけもわからずいじめられて森からほっぽり出されたララは、嵐の中を彷徨った。
そして、サラの実家のキッチンに迷い込んだ。五歳のサラはそれはそれは愛くるしい女の子だった。
兄に言いつけられた厩舎の掃除を忘れたサラは、罰として夕食を抜かれてしまったので、キッチンに忍び込んでパンとミルクを食べていたのだ。
迷い込んできたララに、サラは言った。「だいじょうぶ?なにかたべる?わたしはほとんどなにももっていなくて、あげられるものはそんなにないの。でも、このパンとミルクならあげられるから、食べたら?あなた、ぼろぼろよ。」
これがサラとララが契約した顛末である。精霊に食べ物をプレゼントし、精霊がそれを受け取る。
これが契約成立の条件なのだ。
ララの存在がサラの家族に知れたら、サラが家族からいじめられるのは確定的であったので、ララは息をひそめるように暮らしていた。ララは、どうしてサラが家族から理不尽な扱いをされなくてはならないのかといつも怒っていた。
それが今やサラは王立学院に入学し、実家から出て首都にいて、ちゃんと人として扱われている。
ララも、周囲を気にせずのびのび自由に飛び回れる。
しかも、サラと契約したように見せかけることに成功すれば、サラのそばにいる正当な理由まで与えてもらえるのだ。気合を入れないはずがない。
よって、他の精霊が「供物がおいしいな」とピクニックのような感覚でいる中、ララだけは鼻息を荒くした闘牛のようだった。
サラが部屋に入ってくる。ララはサラへ必死に自分の位置をアピールする。
サラがララの姿を見つけて安心したのがわかった。
やがて段取りが進み、サラと契約したいと望む精霊を待つところになると、机の上にいた精霊たちが、一斉にサラへ押し寄せた。
人間と契約すれば、面倒ごとは増えるが、食の保証が得られる。人間と契約したがる精霊は意外と多いのだ。
サラに押し寄せる精霊をつかんでは投げ、つかんでは投げる。
ララの防御をすり抜けて、一匹がサラのほうへ行く。ララはそいつの腕を後ろ手にむんずとつかみ、胸に膝蹴りをいれた。
精霊だもの。急所を膝蹴りされたくらいで死にやしない。
さっきとは別の精霊の首を掴み、羽を掴み、回し蹴りを決める。
最後の1匹に背負い投げを喰らわせたあと、怯えて縮こまっている精霊たちを、ぎろりと睨みつける。
サラと契約するのはララだ!(もうしてるけど!)
他の精霊があきらめて引いていくのをしかと見届け、ララはサラの所へ向かった。気分はお姫様を敵から守った騎士である。
サラから贈り物を受け取り、静霊術師が契約の成立を告げた。
サラがほっとした様子で部屋を出ていくのを追いかける。ララは喜びに満ち溢れながら、勝ち誇って部屋を後にした。
ララは気づかなかった。
二人が出ていく様子を、黒髪の少年が物憂げに見つめているのを。
祝・一万字越え
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