17.精霊がしたこと
話し合いは膠着状態だった。
精霊術師は王立学院に入学した時点で独立したと見做される。
この決まりごとを盾に防戦するサラと院長。
あくまで情に訴える兄。
じりじりと時間だけが過ぎていく。
ふと、室内の温度が酷く低いことにサラは気づいた。明らかに不自然な寒さだった。
議論が白熱して、誰も気づいている様子はない。
「ねえ、サラ。何か、変。」
ララがぶるりと身体を振るわせた。
サラも。
髪の毛が逆立ち、こめかみのあたりがぴりぴりする感覚があった。
だんだんと部屋の温度は下がり、こめかみの痛みは強くなっていく。
カーテンが暴れ馬のように翻る。
「ねえ、何か」
おかしい。
そう言おうとしたとき。
雷が鳴り、窓ガラスが音を立てて割れた。
院長が青ざめて何かを唱える。
あたたかなものに包まれた感覚が頬を撫でた。
ガラスのヒビは徐々に大きく育ち、とうとうガラスが砕けて窓枠から外れた。
人ならざるもの。
理の埒外にあるもの。
目には見えない。
実体がない。
しかし、触れてはならぬものが入ってきたことをその場の全員が感じ取った。
それは隙間風のように忍び入った。
するりと身をくねらせ、これまでの話し合いで石のように黙りこんでいたサラの父の目前に立つ。
それが父の顔のあたりを撫ぜる。
父の顔に浮かぶ恐怖が驚愕に塗り替えられた。
それは何かを父に囁いたようであった。
父の顔に諦念が浮かぶ。
そして。
ゆっくりと地に傾いで行った。
それは満足げに微笑み、するすると外へと消えていった。
「とうさん!」
エドマンドが叫ぶ。
皆が駆け寄る。
誰かが血の気の引いた声を挙げる。
「息を、してない! 」
それからのことは、サラにとって物語を見ているように映った。
大人が騒ぐ。
大勢の知らない大人が部屋を出入りしているのを、サラはぼんやりと眺めていた。
医者が呼ばれる。
しばらくして、父を診た医者は、気の毒そうにかぶりを振った。
それが何を意味するのか。
その場の全員が悟った。
父は、助からなかったのだ。
現実が多忙でなかなか書き進められず申し訳ありません…。




