師匠成分と任命……
突然巨大な声が響き渡る……でもどこかで聞いた声の様な。
「ゴブリンは武器を置くのじゃっ!」
ばっさばっさ~~
さらに羽ばたき音は巨大となり、影の正体つまり村を覆うくらい巨大な師匠の身体が降りて来た。って師匠こんな巨大だったっけ? こんなんで銀竜の洞窟に入らないでしょ。
「で、でかいわっ!」
「あんな事言ってますけど~?」
しかし亜人妖精である女ゴブリン達の驚愕は俺達の非じゃない。ひれ伏す事すら恐怖で縮み上がって出来ないくらいだ。
「み皆の衆ぶ、武器を置けっ!」
「ひぃいいいいっ銀竜さまだっ!」
「武器を落とせーーっ」
カシャッカシャッカラン
手に持っていたクワやカマ、錆びた槍などを次々落として行く女ゴブリン達。
「ええいっ控えおろ~~」
スザザザッ
俺が思わず叫ぶと、女ゴブリン達は脱力した様にすとっと地面に崩れ落ちた。
ばっさばっさ
見上げても全身を見る事が困難なほど巨大化している竜は、村の直上でホバリングしている。しかし鈍く光る銀色のウロコが全身を覆う事から、彼女だとハッキリ確信出来る。
「見た通り、ワシは銀竜シルバー・リリー・ドラゴンじゃ。騒ぎを嗅ぎつけ飛んでくればこのあり様は一体何じゃ? この美男子ユリナスをシルバー・リリー村一帯の新たな領主に選んだのはこのワシじゃ。皆の者、これよりはこのユリナスに全て従うのじゃ」
領主に任命したのは王様ですよー! あっさりと嘘を付いちゃう師匠。しかも真面目な場面で美男子とか冗談を挟むから、綺麗にスルーされてるし……って本気なのかな?
「美男子~?」
うげっマリには突っ込まれた!
「分かったのじゃな?」
「へへ~~~~~~~」
師匠に念押しされた女ゴブリン達が、波を打った様に一斉に土下座しつつ返事をした。師匠の威力は偉大であった。
「これよりは全てユリナスの指示に従い、人間と共に平和に暮らすのじゃ」
「はは~~」
さらに女ゴブリン達は地面に額をこすり付けた。
ばっさばっさ~
言い放つと師匠のシルエットは徐々に小さくなり、代官館の屋根に向かって降下して来る。
しかし小さくなるスピードが加速して行き、銀竜の姿は代官館の屋根に取り付く前に、館の裏に隠れて見えなくなってしまった。
スタタタッ
直後、代官館の裏から見慣れた人間形態の師匠が走って来た。
「い、今巨大な銀色のドラゴンがおったのじゃ!」
シィーーン
彼女の美しい顔は、冷や汗を流し迫真の演技をしていた。顔を上げたゴブリン達もクヌアー達もこの状況にどう対応すれば良いのか迷った。しかし俺はすぐに彼女の謎設定を受け入れる。
「しっ師匠来ていたんですか? 今さっき巨大なドラゴンが襲い掛かって来て争いの仲裁を……びっくりしましたよっ」
「付き合い良いわね」
マリが呆れる。




