14 わたしも手伝います
「お父さん!」
「おお、シャンディーか。お風呂は気持ち良かったかい?」
「うん!」
読んでいた新聞から顔を上げてパジャマ姿の父親が応じる。やはりこの屋敷の主人……つまりはシューグ本人、一代で財を成し、経済界や政界に幅を利かせ、貴族達の間でも一目置かれている、シューグ家当主その人だった。
「あなた⁉ アリエスさんが来る前に身なりを整えておいてと言っておいたでしょう!」
キッチンにつながっているドアからドロナが姿を見せて、シューグに文句を言う。彼女は台車を押していて、種々の美味しそうな料理の皿が載せられていた。
「ははは、いいじゃないか。ここは我が家で、会社じゃないんだから」
「だとしても、最低限の身なりくらい整えてください! アリエスさんは初対面なんですから」
「やれやれ、朝っぱらからうるさい奴だなぁ。寝起きだからパジャマなのは当たり前だろう?」
「もうあと一、二時間でお昼ですけどね!」
「おや? どうやら休日だからと寝すぎてしまったようだ。どうりで目がぱっちりして、おてんとさんも高く昇っているわけだな。はっはっはっ」
「はあ……」
シューグが高らかに笑い、ドロナが額に手を当てる。本当に頭痛がしてきたのかもしれない。
その様子をアリエスはぽかんと目を丸くして見ていて、シャンディーはにこにことうれしそうに笑んでいた。シャンディーが爛漫で元気な性格が分かる気がした。父親に似たのだろう。
「そんなことよりも、早くご飯を食べさせておくれ。もう腹ペコだよ」
「もう……あなたがそんなだからシャンディーも真似してしまうんでしょう……」
「そんなことないよなあ、シャンディー?」
シューグが娘に聞き、彼女は満面の笑みでうなずく。
「うん。わたしはちゃんとパジャマは着替えるよ」
「…………」「「…………」」
シューグもドロナもアリエスも押し黙ってしまった。シャンディーはにこにことしていて、皮肉も悪意もなくうれしそうにしている。彼女はただただ素直で純粋なだけなのだった。
「……着替えてくるよ……」
「……そうしてください」
のそのそと立ち上がったシューグがダイニングを出ていく。そこはかとなく、その背中に哀愁が漂っているように感じたのは……やっぱり気のせいかもしれない。
「やれやれ……でかしましたよ、シャンディー」
「へ、なにが?」
「いえ、なんでもありません。それより料理を並べましょう。手伝ってください」
「はーい」
シャンディーが母親に近付いていき、料理を盛られた皿を受け取ってテーブルに並べていく。メイドや執事達も自分の仕事をこなしていくなか、ドロナがアリエスに声をかける。
「アリエスさん、どうぞお座りになってください。間もなく料理を並べ終わりますので」
「いえ、わたしも手伝います」
近寄っていくアリエスに、ドロナは、
「……しかし、アリエスさんは来客ですし、シャンディーを助けていただいた恩人なのに」
「手伝わせてください。自分一人だけ座って、皆さんが忙しくしているのを眺めているのは気が引けますから」
「…………。では、お願いします」
「はい」




