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Time to say goodbay  (contepatiro)

『水平線の向こうへ』

世界が静まり返る時間が、私は好きだった。

時計の針が止まったかのように、音も風も消え去って、ただ“心の声”だけが部屋を満たしていく。


壁に寄りかかって座り、ふと目を閉じる。

まぶたの裏に浮かぶのは、あの人の笑顔。そして、かすかな潮の香り。


あなたがいない部屋は、驚くほど暗い。

陽の光さえも、あなたの不在を察してどこかに行ってしまったかのようだった。


だけど私は知ってる。

あなたが私のそばにいることを。

たとえ離れていても、心は、確かにここに。


小さな港町で生まれ育った私は、旅というものにいつも恐れを抱いていた。

外の世界を知らずに生きることは、怖くなかった。

でもあなたは違った。


「この水平線の向こうには、まだ見ぬ世界があるんだよ」

子どものような目で語るあなたを、私はうらやましく思っていた。


そしてある日、あなたは本当に旅立った。

見たことも行ったこともない場所へ。

置き手紙も、写真も残さず、ただ一通のメッセージだけを残して。


「いつか、君も来てほしい。あの水平線の向こうで、待ってる。」


その日から、私は毎晩、水平線を夢に見た。

ことばを失い、静かに涙を流しながら。

あなたがいた場所、あなたが見た光景を想像しては、そっと胸を押さえた。


数年後——

私は決意した。

旅立とう、と。

あの人の残した言葉を信じて。

もう、どこにもない海を、もう一度見つけに。


古い港の片隅、ひとりで小さな帆船に乗り込む。

潮風が頬を撫で、帆を膨らませる。

船がきしむたび、心が高鳴る。


旅立ちの時。

見たことも、行ったこともない場所。

けれど私は知ってる。


あなたと、そこで生きていくことを。


航海は簡単じゃなかった。

波は時に優しく、時に牙を剥き、星は道を示してくれたり、迷わせたりした。


でもそのたびに、あなたの声が私を導いた。


「大丈夫。君の中にある光を信じて」

そう言って、あなたは何度も私の夢に現れた。


孤独な夜もあった。

星のない夜空に、ひとり語りかけるような晩も。

でも私はいつも思い出す。


あなたは私の月。

あなたは私の太陽。

あなたは、わたしのそばにいる。


ある朝。

霧が晴れたその先に、ひとつの島が現れた。

かつて誰かが描いたような、美しく静かな島。

「もうどこにもない」と言われた、あの海の果てに、確かにそれはあった。


浜辺に小さな人影が見える。


風が吹く。

波が寄せては返す。

目を細めて、その人の姿を確かめた瞬間——


私は、すべてを思い出した。


何年経っても変わらない、あの人の姿。

月のように、太陽のように、私を照らし続けてくれた人。


私は駆け出した。

砂浜を、波間を越えて。


そして、あなたの腕のなかに飛び込んだ。


「遅くなって、ごめん」

「待ってたよ。ずっと」


その一言で、すべてが報われた。


あの日、旅立つことを恐れていた私。

水平線を夢に見るだけだった私。

でも、こうして今、もう一度“海”は息を吹き返した。



君と旅立とう。

船に乗って、海へ。


私は知ってる。

その海は、もう“どこにもない”けれど。

——君となら、何度でも蘇らせることができる。


さあ、もう一度、旅立とう。

原曲 アンドレア・ボッチェリ サラ・ブライトマン 

Time to say goodbay (Contepatiro)

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