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後日談 後編

 午前中の授業が終わり昼休みになった。


 ここまでの間、暇さえあればクラスのみんなが、話しかけてきたので少し疲れた。

 まあ疲れはしたけど、結果的に全員が僕の話を好意的に受け入れてくれたので良かった。


 最近はクラスのみんなとも話すことが増えていたし、その影響もあるのだろう。


 カバンから弁当を取り出していると、北くんが話しかけてくる。


「昼ごはんは羽月さんと摂るのか?」

「うん、そのつもりだよ」


 楓さんとは事前に昼ごはんの約束をしていて、これから待ち合わせ場所に向かうつもりだ。


「そうか。なら俺は久々に学食にでも行こうかな」

「あっ、ちょっと待って」


 学食に行こうとする北くんを呼び止める。


「北くんもよかったら、一緒に食べない?」


 僕がそう言うと、北くんは少しだけ困ったような顔をして、首を横に振った。


「そういうわけにもいかないだろう。せっかくの恋人同士の時間を、俺が邪魔するわけにもいかない」

「それなんだけど、今日は透や中村さんも一緒に食べることになっているんだ」


 楓さんの親友の中村さんが、僕たちと昼ごはんを一緒に食べたいと言っているらしく、今日は中村さんも交えて昼ごはんを摂ることになっている。


 そこにいつのまにか透も加わって、現在は四人にまでメンバーが増えている。

 

 最近は透が僕の教室に遊びに来るということもあって、北くんも透と話をすることが増えている。

 北くんはあまり人見知りをするような性格ではないようだし、僕たちの中に加わっても苦痛ということはないだろう。


 僕が事情を説明すると、北くんはそういうことならと頷いた。


 

 北くんの昼ごはんを購買で買って、特別教室棟にある美術室に向かう。

 美術室の扉を開いて中に入ると、そこにはすでに他のみんなが(そろ)っており、楽しそうに話しをしている。


 楓さんはこちらに気づくと、小さく微笑んで、自分が座っている席の隣をぽんぽんとたたく。

 ここに座れということなのだろう。

 僕は苦笑しながら、(うなが)されるままにそこに座る。


「ふーん、あんたたち本当に付き合い始めたんだ? 正直まだ疑っていたんだけど」


 中村さんが僕たちを興味深そうな顔で見る。


「そんな嘘をつくわけないでしょ。あ! 涼くんの友達だよね? お兄ちゃんの隣が空いているよ」


 楓さんが北くんに声をかける。

 北くんは少し遠慮気味に席に座ると、透になにか話しかけている。


「思っていた以上に仲がいいんだな、あの二人。付き合いたてのカップルには見えないが」

「まあ、同感だな。だけどあれでも、たまに初々しい時もあるんだぞ」


 僕のところからは、声が小さくて何を言っているのかわからないが、なんとなく呆れられているような気がする。

 なぜ? と思いながら弁当を広げる。


 みんなでごはんを食べ始めてから少し経ったころ、中村さんが美術室を見回して首をかしげた。


「ところでなんでここにしたの? 他にも場所はあったでしょ?」


 中村さんが不思議そうな顔でそう言った。


「ここ、私と涼くんが最近よく使っているんだけど、人があまり来なくて静かなんだ。だからここならゆっくりとご飯を食べられると思って」

「まって。あんたたちここでなにをしてるの?」

 

 中村の視線が鋭くなる。

 たぶん変な誤解をしているのだろうけど、楓さんはそれに対して気づいた様子もなく。


「なにって……。二人でイラストを描いていただけだよ?」


 楓さんの言葉に中村さんが呆気にとられた顔をする。


「えっ!? ここで絵を描いてたの? 二人で?」


 中村さんは理解できないといった顔でそう言った。


「私は服と小物のデザインだけだけどね」


 楓さんがそう言うと、僕の方を向くと「美桜に見せてあげて」と言う。

 僕はタブレットを取り出すと、楓さんと作り上げたイラストを、中村さんに見せた。


「本当に絵を描いて……。あっ、たしかにこれ楓のデザインだ」


 中村さんはぶつぶつとなにかを言いながら、画面に映し出されたイラストを見ている。


 それを見ていた透が、呆れたふうに言う。


「相変わらず面白いやつだな」

「はは、そうかもね」

「いや、そこは楓も否定しなさいよ!」

  

 中村さんがタブレットから顔を上げて、ツッコミをいれる。

 

「それで、小鳥遊くんは部活には入らないの? これだけ描けるんだから、美術部あたりに歓迎されるんじゃない」


 中村さんがタブレットを僕に渡しながらそう言う。

 部活か。今までは考えたこともなかったけれど。

 

「今のところ入る予定はないけど、少し考えてみようかな。楓さんの部活が終わるまで、暇になっちゃうし」


 最近たくさんの人と関わるようになって自信がついたからなのか、今までの自分にはなかった選択肢が、自分の中に存在している。


「あー、そうか。放課後は楓の部活があるのか。彼氏としては待っていたいよねー」


 中村さんの言葉に頷く。

 楓さんは待っていなくてもいいと言ってくれたのだけど、できれば楓さんの部活が終わるまで待っていたいと思う。

 僕がそう言うと、北くんが腕組みをして僕の方を見た。


「だったらしばらくはやることがなくて暇だろう? なにをして過ごすつもりなんだ?」

「図書室でイラストを描いて過ごすつもりだよ。あそこなら暖房も効いてるし、快適に過ごせると思うから」


 僕がそう言うと、中村さんが笑顔でこう言う。


「そういうことなら、暇のある時に遊びにでも行こうかな? 楓の彼氏ということならほっとけないし。ずっと一人っていうのも寂しいでしょ」

 

 中村さんがそう言うと、透も頷いてこう言う。


「まあ、俺も放課後は暇だから、話し相手ぐらいにはなってやるよ。今までのようにゲームをして過ごすことができないのは残念だがな」

「スマホのゲームでも協力プレイができるのがあるし、それをみんなでやるのもありかもしれないな。ちなみに俺も家に帰ると親がうるさいし、できるだけそっちに顔を出すようにするよ」

「あはは! みんな暇じゃん!」


 みんなの言葉に自然と笑みがこぼれた。本当にありがたいなと思う。


「ありがとう」


 僕が礼を口にすると、みんなは気にするなと笑顔になった。



 放課後の図書室。

 予定通り僕は楓さんの部活が終わるまでの時間を、図書室で過ごしていた。

 今日はみんな予定があるようなので、図書室には僕一人で来ている。


「ふう……」


 キリがいいところまで描き終えて、ペンをテーブルの上に置く。


 さっきからソワソワとした気持ちになって落ち着かない。

 何回も時計に視線が吸い寄せられ、そのたびに少し落胆するのを繰り返している。

 

 いずれこういうのにも慣れる日が来るのだろうか?

 なんとなくそうなったら嫌だなと思う。


 窓の方を見ると、外はすっかり暗くなっている。

 そろそろ部活が終わる頃だろうか?  


 僕はスマホに着信が入るのを楽しみに待っていた。

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