初デート 前編
大変な一日だった。
三学期に入って、初めての登校日。
髪型を変えて、だいぶ印象が変わったからなのか、今日はいろんな人に話しかけられた。
絶え間なく質問や話題を振られて、それに必死に答えていたら、あっという間に一日が終わってしまった印象だ。
少しだけ人見知りが改善された気がする。
かなりの荒療治だったけど。
今日は全ての授業が終わり次第、寄り道をしないで、早々に家に帰った。
自分の部屋でほっと一息つく。
なにもする気が起きず、ベッドの上でぼーっととしていると、スマホに着信が入る。
スマホを確認すると、羽月さんからメッセージが入っていた。
メッセージの内容を確認すると、そこには土曜日に二人でどこかへ遊びに行きませんか? と書かれていた。
反射的にベッドから飛びおきる。
これはあれだろうか? デートの誘いというものだろうか?
こういうことに疎い僕には判断がつかないけれど、期待してもいいのかもしれない。
流石に僕のことを好きなんて楽観的に考えることはできないけれど、男として意識はされているのかもしれない。
すぐに了解の返事を返す。
返事を返した後に、デートについて色々と考える。
どこに遊びに行くのか。会話は続くのか。楽しく過ごせるのか。
初めてのことばかりで不安もあるけれど、後悔のない一日にしたい。
「とりあえず僕にできることは……」
視線をクローゼットの方に向ける。
たぶんあの中にデートに着ていけるような服は入っていない。
羽月さんの家に遊びに行く時も、ぎりぎり大丈夫な服を着ていっている。
「服、買いに行こうか」
さすがに手持ちの服では、羽月さんの隣を堂々と歩けないだろう。
さっそく透にメッセージを送った。
こういう時は万能の男に助けを求めよう。
デート当日、時刻は十二時ちょっと前。
僕は今、待ち合わせ場所のおしゃれなカフェの前にいた。
ここで昼食をとってから、街で遊ぶことになっている。
服はなんとか揃えることができて、下はスキニーパンツ、上は白のTシャツと防寒性の高いジャケットでシンプルに決めた。
透が言うには、まずは個性を出すよりも、自分のイメージに合った服選びをした方がいいとのこと。
確かにファッションのことをよくわからない僕が、いきなり個性を出そうとしても失敗するのは目に見えている。
さすがにそのような失敗を今回するわけにもいかない。
透からアドバイスをもらいながら、なんとか今日着ていくことになる服を選ぶことができたわけだ。
「おまたせー!」
もう少しで十二時というところで、羽月さんが手を振りながら走ってくる。
「ごめんね、仕度に時間がかかっちゃって」
「全然大丈夫だよ。待ち合わせの時間もまだだし」
申し訳なさそうな顔をする羽月さんに、僕はそう言う。
次に羽月さんの着ている服を見て、事前に服を買いに行ってよかったと思った。
僕には一つ一つの服の正確な名称はわからないけど。
上から、白色のニットのセーターと、厚みのあるベージュのパーカー。下はゆったりとしたパンツを履いている。
動きやすそうで、活発な羽月さんのイメージとも合っていて、よく似合っている。
羽月さんから視線を感じてそちらを見ると、羽月さんが期待のこもった目でこちらを見ている。
たぶん感想を求められているのだろう。
僕は言葉を噛まないように注意しながら、「とてもよく似合っているよ」と簡潔に言った。
どうやらこれが僕の現時点での限界らしい。
それでも羽月さんは嬉しそうにはにかむと、「ありがとう。小鳥遊くんもその服似合っているよ」と言ってくれた。
羽月さんの言葉にこそばゆい気持ちになる。
こういうことで褒められたことがあまりなかったので、どう反応を返せばいいのかわからない。
羽月さんはそんな僕の様子を見て微笑むと、「それじゃ、行こうか」と言って、カフェの入り口の方に歩き始めた。
僕は急いで羽月さんの後を追いかけた。




