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金色の瞳の剣姫は今日も世界を奔走する  作者: 世良きょう
第二章 風の国「エリン・ラスガレン」
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第1話 蒼き海原・神秘の緑

第二章がスタートしました。これからもお付き合いの程宜しくお願いします!

(今回も少しだけ長文になりました、すみません。)

初めての船旅に感動しつつも、歩けど慣れない船の上の浮遊感のような感覚に苦戦しながらもランドルさんからの招集を受けて甲板を歩いている。

「それじゃ、オレは一時的に此処でお別れかな?」

フェリクスさんは船内に続く扉を指さす。

「私達は三等客室ですけど、フェリクスさんはどの辺りの部屋ですか?」

「二頭客席だけど?なになに?アメリアちゃん、会いに来てくれるの?大胆だね・・・」

フェリクスさんは私の手を柔らかく両手で包み込むと、紫の瞳を細めながら見つめてくる。

「・・・は?何が?」

私は意味が解らず小首を傾げる。

すると突然、私の手握っていた手がフェリクスさんの激痛を訴える声と共に振りほどかれた。

「なんなんだよお前、幾ら何でも手刀は無いだろ?」

「うっせー!こっちは此れから仕事なんだ、部屋に行くならさっさとしろっ馬鹿ッ!」

「お前解ってないな、オレは親睦を深めようとしてだな・・・」

なんでこの二人は会う度に喧嘩をするのだろうか。

先の事を考えると頭が痛くなるわ・・・

「お前の言う()()ってのが信用できないんだよ」

「ん?何々、それはどう言う意味で信用できないんですかねぇー?お兄さんに教えてごらん?」

「そっそれはだなっ・・・!」

ダリルは私の顔を見て気まずそうな顔をした後、再び向き直りフェリクスさんを睨みつけた。

「やだねぇ、アメリアちゃん。オレより()()()()()()()()()の方がヤバイから男には気を付けるんだよ」

そう言うとフェリクスさんはニヤニヤしながら私の手に小さな羊皮紙の欠片を握らせ、颯爽と客室の方へ消えて行った。

そして其処に書かれていたのはやはり・・・フェリクスさんの部屋番号だった。

「ちゃっかりしているなぁ・・・」

「何を見てんだか知らないが、アイツから貰ったもん何て捨てちまえっ!」

ダリルはフェリクスさんに揶揄われた事がよほど腹が立ったのか、不貞腐(ふてくさ)れながら人混みを掻き分け速足で進んでいく。

「まったく、しょうがない奴ね・・・」

呆れながらその後ろ姿を追いかけ歩く。

その先にはギルドから集められた人間を含む様々な冒険者達が列を組んでいた。



******************************



私達が集められた船の中でも特に警備が厳しいらしい。目の前の厳めしい鋼の扉は、他者の侵入を拒む様だ。

見張りは冒険者のランクによりグループ分けされており、ランクが下の方の私達は比較的に危険性の低い部分の警備を任されていた。

「良いか、此処にある物は今後の他国との関係に重要な物や危険な品々まで様々だ。それに手を出そうものなら息を吸う間もなく、一瞬で魔物の餌だ留意するように。勿論、居眠りや職場放棄は以ての外だ。判ったな?」

ランドルさんの顔つきや声は何時になく鋭く、威圧感の有る低い声が木霊する。

ガタッザッザザッ!

音がしたかと思うと、冒険者が一斉にランドルさんの目の前に整列した。

「イエッサー!」と一斉に声があがる。


私達は配置につき、其々の武器の柄に手を軽くかけ軽くかけて辺りを警戒する。

構成は下から二番目であるFランクの私達二人に加え、同ランクの二人と監督役のD級の冒険者一人と言ったところだ。配置は配慮されたのか、従業員などの人通りが多く、警備が容易な場所のようだ。

「俺はお前らの面倒を見る、ウェズリーだ。俺の評判をせいぜい下げるんじゃねぇぞ」

猪の獣人のウェズリーはブヒヒッと荒い鼻息を出しながら見下すような目線で此方見てくる。

その背には身長程の大きさのハンマーと腰には良く見ると、ベルトには革紐で酒の瓶がつる下げられている。正直、不安でしかない・・・・

「幾ら楽な配置とは言えこれじゃあねぇ。誰よこんな依頼を出したの?」

私は横目でちらりと見ていてギクリと思わず心臓が跳ねた。

「んー、アタイは貴族って聞いたよ。これだけ厳重にする訳だし、どんな宝が積まれているのか気になる~」

などと同ランクの冒険者二人はきゃっきゃっと雑談に花を咲かせている。

時間が経つにつれて監督者のウェズリーは柱にもたれ掛かり、腰に下げた小瓶から酒を飲み、豪快なゲップをしていた。何でこの人達はクエストを受けられたのやら・・・

「私達だけでも真面目にやりましょうね・・・」

「おう・・・」

それから暫く見張ったけれども大きな問題は無し。私達二人でコソ泥を一人捕まえた所で交代となった。

監督役のウェズリーは酔いつぶれて床で寝ていたが、ランドルさんの気配を感じると素早く体を起こし、ご機嫌窺いに行っていた。

「クズが・・・」

ダリルはそう呟くと、近くの空の木箱を蹴り上げる。

「まあ、大きな問題が無かっただけ良しとしましょ」

「チッ・・・そう考えるしかないか」

二人で愚痴をこぼしながら甲板に出ると、輝く太陽から降り注ぐ光が視界を奪った。

すると、ドンッと軽い衝撃が私の体に加わり、そのまま尻餅をついてしまった。

「いたた・・・・」

「申し訳ありません、急いでいたものですから・・・」

衝突した相手は高級そうな質の良い布で作られたローブを纏った亜麻色の髪の女性。

「あ、貴方は!わわっ、どうしてこのような場所に居られるのですか?!」

「へ?」

「・・・は?」

その女性は呆気にとられる私達を余所におずおずと顔色を窺うように声をかけてくる。

「え・・・あ、アレクシス殿下です・・・・よね?」

私は何故か我が国の王子の名前がでた事に驚いて目を丸くし、思わず首を捻る。

アレクシス殿下って・・・黒髪以外は共通点は皆無な気がするのだけれど。

「え・・・?私の名前はアメリアですけれど・・・」

私のこの言葉に彼女は瞬きをすると、眼鏡を取り出して私の顔をマジマジと見る。

そして、顔を赤から青へと変化させながら、大げさなぐらい思いっきり何度も頭を下げた。

「え?あ?もももも申し訳ございません。あまりに似ていらしたので・・・わたくしときたらなんて事をごめんなさいいい」

捲し立てる様に早口で謝罪を繰り返すと、混乱した勢いで彼女は嵐のように去って行った。

「なんなんだ・・・」

「・・・・・さあ?でも、失礼しちゃう。私、女性なのに男性と勘違いされるなんて・・・」

「ん?そうだったか?」

ダリルはある一点を見てニヤリと笑う。

「ったく・・・・どこ見てんのっ!」

ダリルの鳩尾(みぞおち)を私の拳が鋭く抉った。

「ぐふぉ!」

体を半分に折り曲げながら呻くダリル。

王子の顔は遠目で見ただけではっきりと判らないけれど、何故間違えられたのだろうか。

気になるけれど確かめようが無いのでとりあえず考えるのは止めておく事にした。



***********************************



「よぉ、良い部屋にとまってんじゃねぇか」

入口に立ち嫌味な笑顔をみせるダリル。

「ちょっ・・・お兄さん、お前なんか呼んだ覚えが無いよ!」

「招待された本人が着いて来て良いって言ってんだから良いだろが」

「それ決めるのオレだからねっ!」

羊皮紙に欠片に書かれた部屋番号を頼りにフェリクスさんに会いに行くと始まってしまった。

「なんと言うか・・・猫と(ねずみ)の喧嘩みたいね。()きないの?」

「なっ・・・!」

「お兄さんは平和主義ですぅー。このデコ助がいけないんですぅー」

フェリクスさんは私の後ろに下がると、如何にも被害者を装りつつもダリルを茶化す。

「てめっ・・・ふざけんな!」

「ほーら、また始まる。もう止めてよね半分は仕事だけれど、折角の船旅なんだからさ甲板にでも行こうよ」

「そうだね、そうと決まったら直ぐに行こう!」

フェリクスさんは私の手を引っ張るとドアのノブに手をかけた。

「わわっ!ほら、ダリル。行くよー!」

私がそう言うとダリルは不機嫌そうな顔をした後、頭をボリボリと片手でかいた。

「・・・・ったくお前を心ぱ・・・じゃなくて、そんなに行きたいならしょうがないから一緒に行ってやっても良いぞ」

「やれやれね・・・」

私が呆れてるとフェリクスさんは顔を隠しながらこっそりと笑いを噛み殺していた。



甲板に行くと、人々が一方に集まり騒がしくなっていた。

「やけに人が集まっているな・・・」

「そうね、誰かに聞いてみるわ」

船員さんに聞くと、海の向こうに目的地のエルフの女王が治める地、エリン・ラスガレンが見えてきたとの事だったので、慌てて人波を三人で掻き分けて進んだ。

「わぁ・・・・素敵っ」

遠くでも見える広大な緑の大地と、そこに映える白亜の建物の姿が何となく確認できた。

何より驚いたのが都市を覆い尽くしそうな程の大きさの不思議な大樹。

「あれはマナの濃度の高い地にのみ生える世界樹だよアメリアちゃん。あの木がエリン・ラスガレンの象徴であり、国章の基になったんだ」

「なるほど・・・勉強になりますっ」

「そうか良かった。何ならもっと色々と手取り足取りね・・・」

「そうか、それじゃあ俺も教えて貰おうか」

ダリルが無理やり私達の間に割り込んで来た。

「ちょっ、お前は自力で調べな。お兄さんは生憎、暇じゃないんでね」

「なんだ、本当は博識ぶっているだけじゃないのか?」

その時、再び揉め始めた二人の声を遮る様に船長さんらしき人の上陸準備をするので自室に戻る様にとの声が掛った。

「船長さんに救われたわね・・・」

二人を説得して戻る最中、風に頬を撫でられ振り返った目に入った世界樹と都市は光を受けて神秘的な雰囲気を醸し出していた。

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