第233話
茜先輩が合流してしばらく。
ボロっとした会長とフォンセ、なんとも言えない顔のグレン、楽しそうなお父さんといつも通りのおじさまたちがやってきたことでお茶会はお開きになりました。
え、会長とフォンセどうしたの? なんでそんなボロっとしてて会長はくたびれてるの?
まるで一戦交えたあとのような……。え。
ぐりんとお父さんをみると意味深な笑みが返ってきました。
「おちび。お前の彼氏なんなの? 馬鹿強すぎじゃね? 化け物かなにかかな?」
どうやら取り繕うことをやめたらしい会長にパチリと目を瞬く。おじさまたちも何も反応していないので、どうやら男性同士のお話し合いの中で完全に擬態をといたらしい。
その間に茜先輩が近寄ってきて心配そうに会長を見る。
「海斗」
「あー大丈夫。日頃の運動不足をちょっと呪ってるだけ」
ぽんぽんと茜先輩の頭を撫でて安心させるように笑った会長はちょっとだけカッコイイ。
「瑠璃」
ムスッとしたフォンセの声に首を傾げる。
「フォンセ?」
「仲、いいのか?」
「まぁ、保護対象らしいので」
その割にはトラブル持ち込まれるけれど。でも、なんだかんだ守ってくれる先輩たちなので懐いている自覚はある。
「何言ってんだおチビ。カイチョーと茜先輩はおチビのだぁーいすきな先輩だろ?」
来た時のようにパチンとウィンクを決めてきた会長に白けた視線を送る。
「な! それを言うなら俺だって瑠璃のだぁいすきなお兄ちゃんだから!!」
なんとも言えない顔をしていたグレンが急にクワッと吠えた。
なんでグレンは会長に対抗してるの? 本当に何があったの? これはなんて返すのが正解なの?
「えー俺もおチビにとったら頼りになるお兄さんみたいなものだしぃ?」
「は? 今度はフォンセじゃなくて俺がボコボコにしてやるよ」
キラキラ笑顔を殴り捨ててグレンが据わった目で会長を睨みつける。
会長はやだぁグレンツェンさんこわぁい。おチビ助けてーと完全におちょくりモードだ。
なになに。本当に何があったの?
「いつの間にそんなに仲良くなったんですか?」
「仲良くねぇし!!!」
「えー。グレンツェンさんひどぉい」
「海斗」
ストレス発散するかのごとくグレンをおちょくり回していた会長は茜先輩が名前を呼ぶだけでストップする。
「大丈夫。ただじゃれてるだけだから」
「俺は割と本気でイライラしてるんだけどな?」
「グレン」
呆れを含んだフォンセの声にグレンは言い笑顔で言い切った。
「無理。シンプルにムカつく」
全く目が笑っていない笑みで言い切ったグレンに珍しいなとじっとグレンを見つめる。
「だって無理じゃん!!
龍が連れてきたってだけで、は? なのに瑠璃が懐いてるとかもう無理じゃん!
なんでそんなに心許してるわけ! いつもの警戒心どこ行った!?」
クワッと吠えたグレンの勢いに思わずフォンセの背中に隠れる。
待って。だいぶ怖い壊れ方をしてるよ。グレン。落ち着こう。
「龍哉さんとおチビと仲良しで、ご・め・ん☆」
「殺す!!」
グレンの殺意を綺麗に受け流して会長はどこまでも自由だった。
きゃあきゃあと騒ぐ会長とグレンを大人たちはあたたかく見守っている。
お父さんとおじさまたちは心底呆れた顔で見ているし、静奈さんとエアルさんは目を丸くして見ている。いよいよ収拾がつかなくなりそうになったとき、お母さんがそっと会長に声をかけた。
「海斗くん、おかえりなさい」
「オウカさん、ただいまです! 圧迫面接クリアしてきました!」
ものすごく軽やかな声とピカピカの笑顔にお母さんは良かったわねと柔らかく笑う。
いやいやちょっと待って。色々待って。会長、擬態を脱ぎ捨てすぎじゃないの!?
ていうか圧迫面接ってなに? 本当にそうだったとして言っちゃってもいいの、それ。
「おチビ、世の中、色々あるんだよ」
そんなにしみじみ言わないで!? 思わず茜先輩の方を見ても帰ってくるのは微苦笑だけ。
次に見たフォンセはいつも通りだけど、誤魔化すように頭を撫でられた。
「オウカ殿、帰る前に少しだけ私と瑠璃に時間をいただけませんか」
畏まったフォンセの少し緊張した声にお母さんはパチリと目を瞬きながらもコクリと頷いた。
「場所を移そうか」
静観していたお父さんが瞳を輝かせているエアルさんと静奈さんを牽制するように視線を向ける。
おじさまとアルセさんは微苦笑でエアルさんと静奈さんの腰に手を回してさりげなく捕獲していた。
それを確認してお父さんはお母さんに歩み寄る。
「海斗と茜の相手はグレンに任せるよ。
……応接室でいいね?」
グレンがあからさまに顔を歪めて、会長がにんまり笑う。
最後に付け加えるようにフォンセに確認をとると、くれぐれもついてくるなよと釘をさすようにエアルさんと静奈さんにもう一度視線をやって、お母さんを案内するように歩きはじめた。
「……あれは誰だ?」
お母さんの歩幅に合わせて気遣いながら歩くお父さんの背中を見てフォンセがぽつりと呟く。
「信じられないかもしれないけどお父さんだよ」
「……そう、か。いや、今はそれどころじゃねぇな」
ふぅと息を吐いて差し出された大きな手にそっと手を重ねる。
お父さんの気持ちが変わってしまう前にちゃんとお母さんに報告しなきゃ。
ドキドキとうるさい心臓を落ち着けるように一度大きく息をして、フォンセと並んでお父さんの背中を追いかけた。




