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生徒会長から最後に頼まれたこと ②

 呼び出した伊藤を図書準備室で待っている間に、聞いた話を整理してみる。


・伊藤は中学のとき、期待された陸上選手だった

・鶴谷城高校に入学して陸上部に入り、楽だという理由で図書委員になった

・一年生の一学期の終わりに、急に陸上部を辞めてしまった

・一年生の夏休み中に書店でアルバイトを始めた

・陸上部を辞める前後?に図書室で本を借りた

・借りた本は「桐島」「告白」「秘密」の三冊

・二学期になって図書室によく来るようになり、図書委員の活動に熱心になった


 あ、伊藤が来た。

 いつもなら田村がいろいろ言って、深津さんにまとめてもらうところだけど。

 これは、私が佐久間君に個人的に頼まれた件だし、プライバシーにかかわってくるので、私一人で伊藤を出迎えた。


「伊藤君、君の本の貸出履歴を見たけど。

 何かがわかるヒントは見つけられなかったよ。

 ていうか、ヒントなんかホントはないんでしょ?

『履歴を見たらわかる』って言ったとき、君、ちょっと笑ってたもんね。

 伊藤君が部活を辞めたのが一年生の一学期の終わりで、そのころに借りた本が、『桐島』と『告白』と『秘密』の三冊だけど。

 これって全部、去年の夏休み前に図書室で展示していたおススメ本じゃん。

 私、夏休み中のおススメ本を選ぶのに参加していたから覚えていたよ。

 もしなにか意味があるとしたら、部活を辞めたか、辞めようと思ってたころに『桐島、部活辞めるってよ』ってタイトルに自分を重ねたのかな? あるいは『告白』をしたい『秘密』をなにか抱えていたとかな?

 部活でなにかがあって、居場所がなくなって図書室に来るようになって、夏休みの暇つぶしのために、適当に図書室のおススメ本から選んで借りた、ってところでしょ?

 それから、『桐島』。(ここから数行分『桐島』のネタバレがあります)桐島以外の登場人物が推理はするけど、バレー部を辞めた理由は最後まで読んでもハッキリとはわからない。

 これって自分が一学期の終わりに借りた本のことを思い出して、『僕が部活を辞めた理由はわかりませんよ』っていうメッセージを伝えたかったのかな(怒)?

 二学期から借りた本は、読みたい本を借りて読んでいるだけだよね。

 読書にハマっていってるなーって感じはしたけど、何かのメッセージが込められてる感じはしなかったよ。

 あと、本の趣味が私と似てるね(笑)。読んだことある本ばっかりだった(笑)」

と、思っていたことを一気にまくしたてる。


「先輩、大正解です(笑)」

と苦笑いする伊藤。話を続ける私。


「陸上部でなにかあったんだろうけど、それはもういいわ。

 佐久間君から相談されたのは、『伊藤は、楽しい高校生活を過ごせてるのか。部活を辞めて後悔していないか』を知りたいんだって。

 伊藤君が陸上部を急に辞めちゃったとき、佐久間君は部内の異変に気づけなかったんだって? 

 それで伊藤君を心配して話を聞きにいったけど、なにも答えてくれなかったのが、ショックだったみたいよ。

 副会長の等々力君も心配してたよ。話を聞きにいったら、なんか動揺していたし。仲良かったんでしょ? 彼ともなにかあったの?」

と、詰め寄る私に伊藤は、

「先輩、わかりました、わかりました。自分でなんとかします」

と言った。


「いや、余計なおせっかいだったんなら……」

「大丈夫です。誰も悪くないんです。いいきっかけをもらったかもしれないです」

「そう、ならいいんだけど……。

 じゃあ、私は辞めた理由はこれ以上、聞かないであげる。

 これって貸しだからね(笑)」

「貸しってなんですか(笑)」

と、ここで二人の話は終わった。


 二学期になって生徒会の一年間の活動報告会が開催され、図書委員会からは三役の三人と、伊藤、清水さんで活動報告を行った。

 図書委員会の今季の活動は、私、田村、深津さんでリレー形式で報告し、全体の活動、新たな試み、実績(なんと貸出率が10パーセントアップ!)などを報告する。

 本当にいろいろあったなー、一年前はこんなに忙しくなるとは思ってなかった。

と、伊藤と清水さんに任せた他校の図書委員会の活動例の紹介を聞きながら、まだまだやれることがあったんじゃないかと反省していると。


 伊藤が報告を終えて、最後に。

「図書室の活用のため、他校では、いままでになかったら新しく面白い活動が行われていて、図書委員会の大会があったり、学校同士の交流など、まだまだできることがたくさんあることがわかりました。

 今後の図書委員会は、さらなる発展を遂げられると思います。

 ……ただ、今期の鶴谷城校図書委員会は今までの延長線上の活動だけだったもしれませんが、一つ一つの活動に全力で取り組み、新しいアイデアを盛り込んで、精力的に活動した一年間だったんじゃないかと思います。

 僕自身、入学当初は、『図書委員は楽だ』と部活の先輩に聞いて委員になったのに、その部活もすぐ辞めてしまったんですが。

 朝日先輩が委員長になってから、延滞・紛失本の返却キャンペーンや文化祭での文芸部とのコラボ、読書会、図書だより、購入図書の選定、朝読、夕読、夏休みの棚卸しまで、充実した活動ができた一年間でした。

 図書室は、この一年でみんなにとってより身近な存在に、役に立つ存在になったんじゃないでしょうか。

 これは、図書委員長の朝日先輩、副委員長の田村先輩、書記の深津先輩、山口先生と他にも支えてくれた先生、図書委員のみんなで成し遂げた成果だと思います。

 そして、そんな図書委員会をサポートしてくれた生徒会の皆さんに感謝します。

 本当に楽しくて充実した一年間でした。

 ありがとうございました」


 あれ、私じゃなくて伊藤が、図書委員の報告を感動的に締めちゃった。

 これも貸しにしようかな(笑)。

 こうして、図書委員会の活動は、大きな拍手とともに終了した。

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