何故だか周りが喧しい
ただ料理をするだけなのに
なんか注目度が増しているし、明らかに人が増えている。
たかが主婦の料理にこの注目具合はどうなの?
慣れない竈門の火加減を調整してくれるのはありがたいけれど、かなり鬱陶しい。
「さて、山菜はどうかな?」
「水がすごい茶色い」
「あ〜、やっぱり灰汁が出てるわ」
「これで違うの?」
「エグ味が取れたはず。料理は火加減と下処理が肝心よ。とはいえ、調味料が限られるのが辛いわね」
とりあえず洗って切ると干し肉の油で炒める。塩とスパイスで塩きんぴらと言ったところか。
で、味は今はこれが限界か。正直言って。醤油と出汁が欲しい。
ちょっと味見をする。
「本当だ! 食べやすい」
「悪くないけど、これだけでは食事にならないわね」
この食材で出来そうなものを考えていると、パンを焼く窯が目に入った。
「そうだ!」
焼く前のパン生地を持ってきてもらい、それを薄く広げる。
同時にお願いしたフライパンの形の平たい板に棒を繋げた物も届いた。
希望した物の届く時間が、速くなっているような気がするけどまぁいい。
「うん、これで焼ける」
竈門を開けてもらって、薪を端に寄せて真ん中を空ける。
「佳代さん! これってもしかして」
「そう、ピザもどき」
「やったー」
薄くしたパン生地の上に煮込みを薄く引き、山菜っぽいもののなんちゃってきんぴらを散らしてチーズ(らしき物)を乗せて先程の道具で竈門に入れる。
それだけで、何故か響めきが上がる。
微妙にやり難い。
チーズがふつふつとしたところで取り出す。
「よし! それっぽい」
「佳代さん、美味しそうです!」
「次々焼くわよ!」
一気に三枚も焼いてしまった。息子なら足りないという量だけど、今は十分。
「食べちゃお、食べちゃお」
切ってお皿に乗せると、メイド長が運んでくれる。
「お運びいたします」
「佳代様、私も作ってよろしいでしょうか?」
調理長がウズウズしている。
「ええ、どうぞ」
「このワビソウを使っても」
「いいわよ」
料理人だから興味があるのだろう。それは分かる。
なので片付けを含めてお任せする。
食堂には飲み物も用意されていて、後は座って食べるだけだ。
熱々を一切れ口に入れると、硬めの生地が煮込みの水分で程よく柔らかくなって思ったより食べやすくピザに近い。
「ちょっと、これ、よく出来た?」
「これヤバイです。ほんとにピザです」
「ハンナさんもどうぞ」
メイド長はハンナといい、実はあのアウルの叔母なのだそうだ。
アウルは幼少期から優秀だったそうで、その才能を認められ貴族の養子になり、魔法省に入省して今回の件を起こした。
勉強はできたけれど人に興味が薄く相手の気持ちを考えない事を気に掛けていて、アウルの父親である弟に何度も対応するように言っていたらしい。
それも養子入りした後は、甥とはいえ貴族には何も言えない立場なのだそうだ。
にも関わらず殴りつけたのだから、その憤りは計り知れない。
「いえ、私は」
「私たちは貴族じゃないし、いいじゃない」
「美味しいですよ、ハンナさん」
困ったようにドアを見ると、戸惑いながらも手に取るって口にした。
その目が見開いた。
「これは、美味しい」
「でしょ!」
「ね〜!」
三枚は多いかと思ったけれど、これは食べ切りそうだ。
「佳代様!」
調理長が駆け込んできた。
「佳代様、ワビソウがとても食べやすいのですが、どう言う事でしょうか?」
ワビソウ? あの山菜っぽいの事か。
「アク抜きしたからエグ味がないだけよ」
「アク?」
やっぱりアクと言う概念が無かったか。
「苦味やエグ味をアクっていいます。それを抜いて調理しただけ」
「師匠! その極意を私めに伝授してください」
「師匠じゃないし、極意でもないから!」
すると料理長は呆然とした。
「極意じゃない?」
だってただのアク抜きだから。
「だからアクを抜いただけ」
「アク?」
とりあえず、アク抜き方法を教える。
話を聞く料理長の目が怖い。
アク抜きは基本




