ミミック
◆◆◆ミミック◆◆◆
「さて、お待ちかねのミミックの時間だ。」
「待ってません。ミミックの何がそんなにいいんですか?」
「味だ。他に何がある?」
「え・・・味・・・?」
食べるんですか??ミミックを???
「そうだ。ほのかに漂う酒の様に甘くとろけるような・・・いや、実際に食べた方が早い。いくぞ?」
待ちきれなくなったキリコさんが私の返事すら待たず宝箱を開けてしまいました。
開いた宝箱から、針、針、針がうにうにと触手を伸ばすかのように這い出てきます。
「うに?」
「うまそうだろう?」
「よくわかりません。」
形は知っているけれど、うになんて食べたことありません。
「こいつを倒す基本的な方法は二つある。一つはあれの本体を壊すことだが、そこは食べる部分だ。壊すわけにはいかぬ。」
キリコさんが説明しながら次々と襲い掛かる針を手折っていきます。
「もう一つはこうやって針を壊し続け、疲れ果てて針の一本も出せなくなったところを素早く仕留めて食すというものだ。かつてはこの手でよく狩ったものだ。あぁ、実にいいごちそうであった。しかし、今は丁度いい魔法が使えるのでな。デス!」
キリコさんがおもむろに死の魔法を叫びました。
「デス!デス!デス!デス!デス!デス!デス!デス!良し!!」
キリコさん、必死過ぎです。
「ふぅ、仕留めないと生命力をも消費して針を出してくるようになり、味まで落ちる。その際にどうしても傷をつけねばならぬからな。良い魔法が手に入ったものだ。ほら、分け前を渡そう。」
キリコさんがミミックをよそってくれました。
「これ、本当に食べられるんですか?」
黄色くて、ぶよぶよしてて、しわがいっぱいあります。
「うまい!あぁ、この味。久しいな・・・。」
聞いてないみたいです。
うーん、でも、おいしそうに食べているし、一口だけ。
「あ、おいしいかも?」
ふわふわとろとろです。
甘いというかなんというか、独特の味でおいしいです。
私たちは無心でミミックを食べ続けました。
「ふぅ、なかなかであった。あぁ、そういえば、そこに次へ進む転移装置が埋まっているぞ。」
「え、どこですか?」
見渡しても雪と開けた宝箱ばかりで何もありません。
「そこだ、そこ。少し盛り上がっているだろう?」
「言われてみればそんな気もしますけれど・・・?」
「まぁ、とにかくそこにある。骨どもにでも掘らせるのだな。」
私は見ただけではよくわかりませんでしたが、キリコさんがそう言うのでスケルトンさんたちに掘ってもらう事にしました。
少し掘ったら本当に転移装置の上の部分が出てきたのは良かったのですが、使えるようになるまで掘るのには、時間がかかってしまいそうです。
「おそらく、雪崩か何かで埋まったか、もしくは先ほどの丘が埋めたのかもしれぬな。」
「つまり、なだれが原因なんですね。」
「そうとも言う。」
丘は私たちが来るまで動いていませんでしたし、この辺りの雪は雪崩が通った跡がたくさんついています。
「先に掘ればよかったか。どうもミミックに目がくらんでしまってな。」
「私も気が付かなかったので仕方ありません。」
スケルトンさんたちが頑張ってくれているんです、ゆっくり待ちましょう。




