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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
彼女が「勇者」と呼ばれるまで

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新たな武器とタイプ選択

「――じゃあフランシスカを連続投擲とか、どう?」


 互いの自己紹介が済んだ後は、眼鏡の彼女は随分と砕けた口調になった。

 どうも人見知りするらしく、最初の距離感を間違えてよく相手に引かれるのだと早口で話してくれた。

 落ち着くに従って良識的な面が顔を出し始めたので、俺としては正直ほっとしている。

 プレイヤーネームは『セレーネ』で、生産をメインにゲームを進めていく予定だと話してくれた。


「あー、やってみたいですね。このゲーム、インベントリの容量さえあれば重量は問わないですよね? なのでそれが許す限り、持ち運びの心配は要らないです。ただ……」


 俺はインベントリから石を取り出し、鍛冶場の壁に投げて見せた。

 その石は壁にぶつかって床に転がった後、暫くすると何処かに消失してしまう。


「こんな感じに投擲用のアイテムは、基本的に回収不可能なので」

「運用コストが厳しいか……楽しそうだと思ったのに」

「某横スクロールゲームの騎士みたいに、ポイポイ投げてみたい所ではありますが」

「良くそんな古いゲーム知ってるね! ハインド君、面白いなあ。あれは槍でも松明たいまつでも、何でも投げちゃうけどね」


 ゲーム歴は小学生までだが、俺は結構レトロゲームの類も好きだった。

 むしろ流行のVRやオンラインゲームの知識が薄く、今現在、こうして苦戦することになっている訳だが。


「まあ、専門職以外の遠距離攻撃が強くなりすぎると、バランス取るのが難しいでしょうから。魔導士とか弓術士が不要になっちゃいますんでね」

「だろうねー。それに片手が塞がるのもネックだね。盾とかも装備できなくなっちゃう」

「それと自分が装備している武器を投げる分には無くなりませんけど、一律でダメージが1になるみたいなのでやっぱり無意味ですね。結局のところ、普段使いは難しいかと」

「うーん、しっかり調べてるねぇ。感心感心」


 セレーネさんとの会話は楽しかった。

 豊富な知識と、打てば響くような頭の回転の速さ。

 鍛冶師というよりは眼鏡とだらしない格好が相まり、一見アルケミストのような雰囲気だが。

 布の服を着崩していて、気だるげな空気を周囲に発散している。

 見た目からして、大学生辺りと思っているがどうだろう?

 年上なのは間違いないと思うのだが。


「それで、ハインド君は何を作りに来たの? 私は見ての通りコツを掴んできてるから、ある程度なら教えてあげられると思うんだけど」


 コツを掴むってレベルの出来じゃないと思うけど。

 彼女の武器を一通り見せて貰ったが、どれも取引掲示板にあったものよりも性能が高かった。

 既に派生武器まで多数、作り出しているし……俺は非常に運が良い。


「是非お願いします。初めてなんで、難度の低そうなブロードソードとアイアンロッドにしようかと。店売りよりマシな程度の付加効果があれば、取り敢えずは満足なんですけど」

「うんうん、いいよいいよ。基本は大事だからね」

「……意外ですね。つまらないから、何か変わった武器に魔改造しようとか言い出すかと――」

「心外だなー。私だってね、毎度変わり種の武器を作ってるわけじゃないんだよ? 勿論、声を大にしてそれらを愛しているとは叫びたいけれど。でもそういうのは、普通の形をした武器の先にあるものだから」

「カッコイイっすねー、先輩」

「でしょう? もっと褒めてくれたまえ」


 話していて明確に何処とは言えないけれど、なんとなく波長が合う感じ。

 怪我の功名だな、本当に。

 あそこでクノペシュに対して反応していなかったら、この人と知り合うことはなかっただろうから。


「おっと、人が増えてきた。あんまり話し込んでると邪魔になっちゃうね。じゃあ、ちゃっと作っちゃおうか? ハインド君」

「そうですね。宜しくお願いします」


 結果、『上質なブロードソード+5』と『上質なアイアンロッド+4』が出来上がった。

 この二つで何処まで進めるか、楽しみだな。




「という感じで、武器とアイテムを調達してきた訳だが」

「……は?」

「いや、は? じゃなくて」

「意味が分からない」


 いや、分かるだろ……。

 俺はちゃんと包み隠さずに説明したんだから。

 ユーミルから連絡が入ったので、戦闘準備を終えた俺は村の広場へと戻って来ている。

 合流したのは約束の午後十時きっかり。


「たったの一時間だぞ?」

「ん? ああ。確かに一時間しかなかった割には、色々と調達できたよな。武器も上々だし、アイテムだって――」

「そっちではない! この短時間にフレンドが三人? ……はぁ? しかも女ばかり! 意味が分からぁぁぁん!」

「何でキレてんの……? 単なる偶然の結果だし、人類の半分は女なんだから別におかしくは――」

「カーッ! もういい! 新しい武器を寄越せハインド! 早速試し斬りに行くぞ!!」

「お、おう」


 荒々しい足取りのユーミルと共に、俺達は昨日に引き続き『ホーマ平原』へと向かった。




「ハハハハ! 見ろ、ハインド! あれだけ苦戦したゴブリンがゴミのようだ!」

「……」


 新しい武器を手にしたユーミルは絶好調――というよりも有頂天だった。

 攻撃力25だからな……木の棒が10だったので、倍以上の攻撃力だ。

 ゴブリンは既に相手にならず、弱点を狙わなくても一撃で倒すことが出来る。

 ただし、俺が持っている杖では無理だったが。

 アタッカーではないので仕方ない。

 ちなみに攻撃力の算出方法だが、『ブロードソード』の基礎攻撃力が20。

 『上質な』ものは耐久力が増えた上で更に攻撃力に20%の補正が掛かり、後ろの+は1増える毎に1%の補正が上乗せされるそうだ。

 ブロードソードの製作難度は低かったが、取引掲示板にある武器と比べても、初めてにしては良い出来だったと言えるのではないだろうか。


「調子に乗るのはいいけどな、もうすぐ北エリアだぞ? 敵の強さが上がるから注意しろよな。防具はまだ初期装備のままなんだし」

「今の私は無敵だ! 北エリアのモンスターなど敵ではない!」

「もうオチが見えてる気がするんだが……止めても――」

「無駄無駄ぁ!」

「はいはい。行くかぁ」


 どうせ身を以て体験しないと分からないだろうからな。

 北エリアに入ると、敵の種類は変わらないものの平均レベルが15近くまで上がり、攻撃力が大幅に増した上で更に群れ始める。

 俺達の現在のレベルは11だ。

 早速、ゴブリン五体の群れと接敵し――


「ウボァー」

「はええよ! 死ぬのが!」


 俺は必死に回復魔法をWT毎に唱え、時には横槍を入れて敵のヘイトを稼いだものの……ゴブリンに囲まれたユーミルはあえなく死亡。

 俺は急いで三個しかない聖水の内の一つをユーミルに瓶ごと投げつけた。

 敵の体力は削れてるんだ、ここで逃げるのは勿体無い。

 さっさと起きろ! 俺まで囲まれる!

 瓶が割れ、ユーミルがフル体力の三分の一程度の状態で起き上がる。

 続けざまにWTが終わった『ヒーリング』をユーミルに向けて発動。

 ライフが回復し、どうにか態勢を立て直すことに成功した。


「話が違う!? 話が違うぞハインド!」

「誰もこの装備で行けるなんて言っとらんわ! 敵の体力をよく見て、弱ってる奴から確実に倒していけ!」

「しょ、承知した!」


 五体居たゴブリンをユーミルが『スラッシュ』のスキルでようやく一体撃破。

 続けて、偶然入った俺の首への一撃で残りが三体。

 そのまま数が減った後はこちらの回復量が上回り、安定して撃破まで持っていくことが出来た。


 ……やっぱり死んだじゃないか。

 レベルアップの光が表示されるが、聖水も残り二個だしこのまま戦うのは苦しい。

 ここは引き返して――


「ハインド! 今のレベルアップでスキルポイントが溜まったぞ! 何か取って良いか!?」

「うん? 何で俺に聞く? 自分が好きなのを取れよ」

「むう……実は、ここからスキルツリーが枝分かれしていてな」

「ん? ちょっと見せてみ」


 レベルが12になり、ユーミルはスキルポイントが溜まった事に気が付いたようだ。

 ユーミルが表示させているステータス画面を覗き込むと……ああ、なるほど。

 基本スキルのスラッシュとガードの下は、三つに枝分かれしている。

 TBはスキルをある程度、プレイヤーが任意で選んでいくシステムになっている。

 これをざっと見た感じだと……。


「アタッカータイプ、バランスタイプ、ガードタイプの三つみたいだな。神官の場合も前衛と回復を同時にこなせるパワー型、光魔法で中距離攻撃と回復を同時に行うバランス型、回復と補助魔法に特化した支援型があるから」

「ハインドはどれにするのだ?」

「俺か? うーん……支援型だろうな」

「その心は?」

「蘇生魔法が支援型にしかない。もしもの時の保険が聖水だけだと、怖いじゃないか」

「そうか……なら私は、攻撃型にしよう!」


 ……死ぬの前提になってないか? その考え。


「……お前は死に過ぎるから、俺としてはガード型かせめてバランス型をお勧めしたい所なんだが」

「スキルを取得したぞ! 捨て身……短時間攻撃力が2倍、防御力が三分の一になるスキルか。ピーキーだな!」

「無視かい! しかも余計に死にやすくしてどうする!? 頼むから、ちゃんと発動タイミングを見極めて使ってくれよな……」

「うむ、善処しよう」


 ユーミルに続いて、俺は支援型のスキルを取得する。

 しかしタイミングが悪い事に、防御をアップさせる『ガードアップ』という補助魔法が次の取得スキルだった模様。

 普段の戦闘では便利だろうけど、恐らく『捨て身』に重ねても……焼け石に水だろうな、残念ながら。

 せめて捨て身の発動中は、ユーミルが攻撃を回避してくれることを祈ろう……。

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― 新着の感想 ―
枝分かれ先の分類名が横文字なんだから、支援型はサポート型にすれば良いのに。 ん? 作品タイトル…あぁ、そゆことね。
[気になる点] ステータスは見せてくれない感じかな?
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