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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
至高のお布団

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収穫祭・最終日、迫る

「ふふふ……これだけの金林檎があれば!」

「……」


 収穫祭イベント、終盤。

 ヒナ鳥のホームの談話室、その机の上には金林檎を始めとしたレア林檎が集まっている。

 その林檎を両手で示してから、シエスタちゃんが眠そうな目でこちらを見た。

 無反応な俺の様子に、再度、同じポーズを取る。


「……あれば!」


 もう休める! 休んでいいですか? と、言外に含ませつつのシエスタちゃん。

 レア林檎の数はおおよそ銅が三十、銀が二十、そして金が八。

 試食にいくつか使用したので、実はこれでもピーク時よりは数が減っている。

 それでも金林檎は日に一、二個採れれば上出来な代物なので、八個もあればかなりのものだ。

 ただし――


「それが全て自分で採ったものなら、ね? 俺だって、その言葉に素直に頷けるんだけど」

「……ダメ?」

「駄目でしょ……これは」


 これらは、先日のアップルパイパーティに参加したプレイヤーたちから「お礼に」と渡されたものがかなり含まれている。

 取得カウントこそ個別だが、林檎の譲渡は基本的に自由だ。

 報酬用の納品も、畑に捧げるのも譲渡物で可能である。

 シエスタちゃんの今日までの取得数は、金が三個。

 銀が五個ほどだ。


「アラウダちゃんは金が五個だから、二個分のビハインドだね」

「え? 私が八ですから、三個リードの間違いでしょう?」

「まだ言うか……この場にある八個のうちの一個はユーミル、更に一個がトビ、もらったものがスピーナさんのに、最近絶好調のタンペくん、それから――」

「あーあー、聞こえな―い」


 耳を塞いで、テーブルにシエスタちゃんが突っ伏す。

 丁度いい高さだったのか、マーネがその頭の上に飛び乗って綺麗な声で一鳴き。

 そんなマーネを回収してから、シエスタちゃんの体を起こしたのはサイネリアちゃんだ。

 シエスタちゃんの両手を掴み、耳からどかしつつ渋面を作る。


「シー、現実を見なさい。間違っても再戦は嫌でしょ?」

「そりゃもちのろんよー。絶対やだ」

「アラウダの性格を考えて、どうすれば納得するのか……シーならもう、分かっているんでしょう?」

「あー……逆転してばっちり打ち負かすか、こっちが負けたとしても怒涛の追い上げをみせるか……ってとこかなぁ。落としどころとしては」

「じゃあ、そうするために作戦を練らないと。ですよね? ハインド先輩」


 サイネリアちゃんの言葉に、俺は目を閉じて二度頷く。

 ――って、今度はマーネがこっちの左肩に……既にノクスが右にいるので、このままだとかなり身動きが取りにくい。

 二羽をテーブル上の近い位置に順番に降ろすと、やがて互いのくちばしを使って羽を繕い始めた。

 大きさも種も全く違う二羽が、こうして仲良くしている姿はいいよな……あれ、何の話だっけ?

 ……ああ、そうそう。

 シエスタちゃんのサポートに関しては、俺なんかよりも付き合いの長いサイネリアちゃんのほうがずっと優秀だ。今のやり取りでそれは、誰の目から見ても明らかだと思う。

 ――が、それに甘えてばかりもいられない。

 こちらはこちらで、シエスタちゃんのためになるべく良い作戦を練らなければなるまい。


「そのために必要な情報は、きっちり俺が集めるよ。期待して待っていて」

「え? 最終日の攻略って、事前に準備とかできるものなんですか?」


 リコリスちゃんが頭の上に疑問符を浮かべる。

 この場にいるメンバーは、これで全員だ。

 特に示し合わせて集まった訳ではなく、完全なる偶然である。

 俺が情報集めのためにログインしたところ、ヒナ鳥三人が既にゲーム内にいたという形だ。


「うん、ある程度はできるはずだよ。更新されたイベントページは、もう確認したかい?」

「見ました!」

「私も見ました」

「見てないです」


 三者三様の答えが返ってくる。

 ――と、このままでは「待ち合わせ」の時間になってしまうな。

 話が中途半端になってしまいそうだが……どうしよう?

 妙な間を空けた俺を、不思議そうな顔で見る三人に改めて向き直る。


「えーと……実は、その作戦を練るための材料を集めに、これからゲーム内を専門に活動している情報屋さんに会うんだけど。一緒に行く? 行くなら道すがら、今の話の続きをしようと思うんだけど。もちろん、無理にとは――」

「あ、行きます行きます! 話の続きも、情報屋さんも気になります!」

「はい、ご同行させてください」

「あ、二人とも先輩と一緒に行くの? では、職業診断で自宅警備員の適性がマックスだった私に、留守は任せてくださいなー。いってらっしゃーい」

「……」

「……」


 今度も三者三様――ではあったが、リコリスちゃんとサイネリアちゃんが、椅子に深く沈み込むシエスタちゃんを無言で見る。

 やがてリコリスちゃんがシエスタちゃんの手を引き、椅子から立たせた。


「シーちゃんも行くのっ! それに、職業診断なんて一度もやったことないでしょ!?」

「うあー……リコはいつも、そうやって私を外に連れ出そうとするー……はぁー……」

「満更でもないくせに」

「……。サイ、何か言った?」

「ううん、何でも」

「……」

「先輩も、何で笑ってんですか……?」

「さあ? 何でだろうね?」




 ヒナ鳥のホームを四人で出た俺たちは、王都の街中を歩いている。

 例の彼女はサーラ国内にいるということだ。

 事前にした話では、あちらから出向いてくれるということなのだが。


「で、さっきの話の続きだけど。最終日は、グラドを中心とした各国の緩衝地帯の全てで樹木精霊が増加するそうだよ。それも、今までよりも多く」


 シエスタちゃんがイベントページ未見だということで、最終日の特別仕様からまずは触れることに。

 実質ボーナスデイのような扱いで、取得数などでランクインを狙っているプレイヤーにとっては参加必須の修羅の時間。

 最終日は休日ということで、ライトなプレイヤーも数多くイベントに参加することになると思われる。


「へー。それは面倒――」

「……」

「睨まないでよ、サイ……えっと、それって乱入NPCの数とか出現頻度も増えたりします?」


 シエスタちゃんの的確な質問の言葉に、俺はやや深めに頷く。

 この子が本気で頭を使い、尚且つ労を惜しまなければ、誰も敵わないんじゃないかと思うんだけどな……。

 まぁ、それはそれとして。


「さすが、勘が良いね。各地域、場所に応じた乱入NPCの出現率が“大幅に”増えるそうだよ」

「うへえ……」


 直前まで伏せられていたのは、それまでのイベントへの参加控えを抑えるためだろう。

 もちろん、このやり方については賛否ある。

 ただ、TBの運営は報酬の取得状況が全体的に渋い場合のみに、条件を緩和するというやり方を取っているのでそこまで酷い叩かれ方はしていない。

 仮にそのイベント内で十分に報酬が行き渡っていたり、ミスでやや多めに報酬が取りやすくなっていても、よほどのことがない限りはそのままだ。

 セレーネさんやトビによると、基本的にネット系のゲームにおいてはどんな項目であっても、下方修正はプレイヤーに受けが悪いのだとか。


「あー、とりあえずそこまでは了解です。で、場所に応じた、というのは具体的にどういう意味なんです? 先輩」

「各国とグラドの国境沿いのほとんどに、グラドをぐるっと囲む感じで緩衝地帯があるじゃない? 要は、それに接した二国ないし三国の現地人が来るよ、って意味だと思う。言い方のせいで分かりにくいかもだけど、今までと大体同じだね」

「……ざっくり、その近くにいる人が来やすいってことです? 変にゲーム的に、関係のない場所に急にワープとかはせず?」

「だと思うよ。だから……」


 どのフィールドに向かうか、そして向かった先にどんな乱入NPCが出るか。

 その予測を立てて、更には攻略法まで考えておくことが、最終日に対する最大の事前対策ということになる。

 実際、ラルフと会った『ベリ連邦』の『ニテンス湖』は、首都からそれほど遠くない位置にある場所だ。


「ということで、情報屋さんに会って判断材料を得に行こうという結論になるわけ」

「一番いいフィールドを教えて! ……とか、単刀直入に訊くのは無理なんですか?」

「……それはどうだろう?」


 おそらくだが、ベールさんの性格からして無理な気がする。

 話が途切れたところで、リコリスちゃんが小さく手を挙げてこちらを向く。


「あのー、ところで……これはどこに向かっているんですか?」

「どこってことはなくて……」

「え?」

「向こうの指定なんだよ。街に出てくれてさえいれば、すぐに場所を特定して合流するって話で」

「か、変わった人ですね……」


 私の有能さをご覧に入れるよ! とのことだが、もう前回の情報提供で十分なのだが。

 ただフラフラしているのも何なので、買い物などをしながら待っていると……。

 野菜を見るために少し腰をかがめたタイミングで、ちょいちょいと肩を触れられた気がして振り返る。

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