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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
資源島と海への誘い

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ポイント1000代と上位船団

「楽勝だったな! こんなものか?」


 ユーミルがドヤる。

 今の俺たちは協力者の中型船二隻と別れ、サーラの海へと帰ってきたところだ。

 損害軽微、修理も直ぐに済むであろう状態での堂々の帰還である。

 しかし、ユーミルの言う通りやや拍子抜けしたという感も否めない。


「そうだな、思ったよりは……上位陣がそれだけ先を行っているという証拠でもあるけれど」

「この辺りで苦戦しているようでは、上位争いで到底勝てないでしょうからね」


 明らかに下のポイント帯の相手よりは強いが、囲まれなければ問題なし。

 先程のように、多少の数の差は跳ね除けるだけの性能が『プリンケプス・サーラ』にはある。

 それを活かすだけの乗組員の練度もどうにかこうにか、といったところ。


「どうする? もう一戦行くか!?」

「船のダメージ上は問題ないが、ちょっと無理だ」

「何故だ!?」

「お前は乗ってくるとそのパターンになるな。でも、もう寝る時間だ」

「デジャビュ!」


 時刻はそろそろ23時を回ろうかというところ。

 中学生が起きているには遅すぎる時間ということもあり、シエスタちゃんにみならず三人とも眠そうにしている。

 俺がそれを視線で示すと、ユーミルは納得して引き下がった。


「そうだった、前に叱られたのだったな……」

「心配しなくても、このペースならイベントが終わる週末までには上位に追いつける。今の戦いで更に1000ポイントに近付いたしな」

「今後ほとんど負けなければ、でござろうが」

「それは前提条件だから。スタートで出遅れているんだしさ」

「ほんじゃー、帰っていいんですねー?」


 話を聞いていたのか、シエスタちゃんがのんびりと声をかけてくる。

 今夜はこれで終わりだ。


「ああ、港に帰ろう」


 今後二、三日は今日と同じような行動を続けることになる。

 船を港に戻し、修理を依頼してログアウト。




 しかし翌々日、ポイント1000超えを達成した俺たちの目の前を……。


「あっ」

「どうした? ハインド」

「あれ、見ろよ。特にポイント」


 ポイント1500超えの船が通過していく。

 ……船というか船団だな、あれは。

 小型、中型、大型とバランス良く揃えていて容易に手を出し難い堅固さを感じる。

 ユーミルが双眼鏡で船団を見て、それからポイントを確認して表情を明るくした。


「――おおっ!? 戦うか!?」

「いや、無理じゃないか? 戦うには頭数が足りないだろう」


 知らないギルドだが……1500を超えているのは旗艦らしい大型船のみで、周囲はギルド違いのものも数隻。

 しかしそれらも800が下限で、1000に乗っているものも数隻という状態。

 とても単艦で手出しできる相手ではない。


「それに、救援対象を途中でほっぽりだす訳にもいかないだろう?」

「うむ……本当に救援要請が増えたな、昨日から」


 俺たちは現在、ポイント600の小型船を護衛中である。

 追っていた大型船を一隻撃沈し、海域の外まで随伴しているところだ。

 予想通り1000ポイント超えと共に攻撃される回数は減り、代わりに逃げる船に頼られる回数は増えた。

 小型船が安全圏に到達したところで、お礼の信号と共にささやかにポイントが譲渡され……。


「……これはこれで悪くない気分だが、そろそろ派手に戦いたくないか?」


 ユーミルの言葉に、誰ともなく肯定する空気がその場に広がる。

 実のところ、先程から救援・護衛の繰り返しだ。


「飽きるよな、変化がないと……」

「救援はポイントの減衰も低いですし、堅実ではありますが。現に、もうすぐ1100に乗りそうですよ? プリンケプス・サーラのポイント」

「でもリィズ、さっきから口数が減ってきているじゃないか。正直、飽きてきているだろう?」

「……まあ、そうですね。ハインドさんの仰る通りです」


 反復作業の多いMMORPGで張り合いを得るには、いつだって自分たちのやり方次第である。

 そんな訳で、救援の反復は一度切り上げ。


「……追いかけてみるか、さっきの船団」


 俺がそう呟くと、船上に漂っていた倦怠感のようなものがふっと払われたようにみんなが反応する。


「おっ、マジでござるかハインド殿!」

「私としては願ったり叶ったりだが……いいのか?」

「最悪、どう戦っているのか離れたところで見学するだけでもいいしな。他のみんなはどうだろう?」


 ヒナ鳥たちとセレーネさんに問いかけると、やはりこちらも反復作業にやや飽きが来ていたようだ。

 次々に了承の返事を貰えたので、船団を追いかけてみることに。


「先輩、しばらくオートモードでいいです? っていうか、もう設定してきたんですけど」

「いいよ。お疲れ様、シエスタちゃん。サイネリアちゃんも」


 どうやら船団が見えなくなった方向に進路を固定してくれたようだ。

 ブリッジの二人もこれで休憩できる。


「はい。ところでハインド先輩、もし戦うことになったら……」

「速度の話? うーん……危なくなったら逃げる時に全開、かな。あまり見せたくないとはいえ、サイネリアちゃんもシエスタちゃんも最高速度に慣れておかないといけないしね」

「練習も必要ですもんねー。セッちゃん先輩も、早いとこ実戦で最高速度を見たいって顔してますし」

「――!?」


 近くでインベントリ整理をしつつ、こちらの話を聞いていたセレーネさんが驚いて手を滑らせる。

 落ちたのは鉱石で、幸いにも壊れたりはしていないようだ。


「え、っと……よく分かったね? シエスタちゃん……」

「機関の最高速度に補修した船体が耐えられるか、心配なんでしょ? 合ってます?」

「う、うん、正解。万全を期したつもりだけど、結局は継ぎ接ぎだからね」

「船大工ポルトの人たちが太鼓判を押したんですから、心配要らないと思いますけれど……」


 サイネリアちゃんがフォローするように言葉をかける。

 あの船大工集団はサーラのおいてトップの職人たちだ。

 ティオ殿下の紹介がなければ、まともに依頼することすらままならなかったはず。


「建造当時よりも絶対に強度は上だって、クーナちゃんも胸を張って言っていました!」

「あ、リコいたの」

「いたよ!? シーちゃん酷い!」

「っていうか、いつの間に仲良くなったんだこの子は。コミュ力高いよね、リコは」

「落として上げる……策士だね、シーちゃん! 分かっていても素直に喜んじゃう!」

「はいはい、そうでしょそうでしょ」


 雑にリコリスちゃんの頭を撫でくり回すシエスタちゃん。

 ……相変わらず実年齢が同じでも、精神年齢には大きな開きを感じる二人である。

 これだから、気が合わなくても一切喧嘩にならないのだろう。


「ってなもんで、セッちゃん先輩。太鼓判を押してくれた相手が微妙ですけど、案ずるより産むが――産むが――へっくしょい!」

「台無しだ!?」

「本当に台無しね、シー……」


 大事なところでくしゃみをかますシエスタちゃんに、セレーネさんはツボに入ったのか肩を震わせて笑い始めた。

 何にせよ、不安がくしゃみと一緒にどこかに吹っ飛んで行ったようで良かった良かった。

 そんな話をしている間に、先程の船団の姿が見えてきて……。

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